勇戦戦争
ここは、勇者軍本部内。
体がとても暑く、この煉瓦造の建物にたくさんの光が差し込んでくる。
ここの人々を助けられれば俺の使命は終了だ。
勇者は罪のない俺を剣で攻撃した。何も知らない馬鹿勇者達は俺に剣で連続攻撃を繰り出す。
後ろにいる仲間のブルコビルは勇者に攻撃しない俺のことをかまっていた。
「魔王様! はやく攻撃を!」
この暑い建物内でブルコビルの声が響く。
いや、ここは冷静にならなくてはならない。俺は話し合いのためにここに来たのだから。
「話し合いにきたのだが、いますぐ攻撃をやめてくれ」
勇者に対して何を言ってもムダだった。
「そんなのしらねぇよ魔王様! 攻撃続行!」
勇者の後ろでは魔法使いがたくさんいる。あり得ない人数である。
ついに俺は次々に勇者の攻撃を受け体力は残り半分ほどになってしまっていた。回復アイテムや武器も全て置いてきた。
俺が戦う気がないのは実は味方の誰も知らない。
勇者に攻撃をすることは許されない。もうここで終わりだ。もはや今は魔王でもなんでもないが……。
俺が魔王である理由。それはこの異世界を救うことであった。
俺が魔法書を構えて魔法を使おうとすると、俺の方にだれか突っ込んできた。
どこかで見覚えのある赤い武装をした女性だ。そして俺の前で手を大きく広げる。
手を大きく開けた瞬間、赤い武装は煉瓦の隙間からの光りによって輝きを放ちたのである。
「もう攻撃しないでください! 勇者様!」
赤い武装をした女性はなぜか半泣きだった。
なぜ俺を守るのか理解出来なかった。胸のバッチは勇者軍のバッチなのに。
「マリー! 一緒に戦ってくれると言ったはずだ!」
勇者は大きく怒鳴るがそれには全く動揺しなかった。
「この方は本当に戦う気が無いのです」
「嘘だ! あいつは武器を持っていない証拠はあるのか?」
返す言葉がなくマリーは黙り込んだ。
何故勇者の仲間なのに俺を助ける意味がない。一人で魔王を殺して報酬をたくさんもらいたいのだろうか。するとマリーという女は訳がわからないことを俺に伝えた。
「魔王さん。私はあなたに協力します。どうぞ人質でも好きなように私を使ってください。武器は右ポケットにあるのでどうぞ。」
えっ!? 俺は一瞬戸惑ったが彼女の右ポケットからナイフを取り出し彼女の首に向けた。勇者は攻撃をやめ、剣を床に置いた。
「おい! 今すぐマリーから手を離せ! 」
するとマリーは俺の顔をちらりと見た。とても美しい。
「今こそ話をしてください。魔王さん」
やっと勇者と話し合いができるようになったのだ。俺はボロボロになった胸の青いペンダントを左手で力強く握りしめる。
「勇者よ! よく聞いてく……」
俺は気を失った。そして大きな音と砂埃をあげて突然、倒れてしまったのである。