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wanted.2 元医療助手クノー・フロイター(上)

遅くなってしまってごめんなさい! ちゃんとプロットを考えるのって大変ですね……

それと、本文中の『★』は文章の区切り、『~~~~~~~』は視点変更です! 分かりにくくてごめんなさい……

中と上はそれぞれ三日以内にUPします!

 山道をいくつか越えたり、川を渡ったり、新緑が広がる大地を一台のジープが走り抜けて行く。

 ハンドルを握っているのはゴーグルをつけた獣人族の少女だ。銀色の髪を風になびかせながら、無表情でジープを操っている。見目麗しいこの少女を、人々は『ミルヒ』と呼ぶ。

 一方助手席に座っているのは大柄な男だ。獣耳でなければエルフ耳でもない。しかし彼を標人族と呼べば機嫌を悪くする。極東の魔境ヨコハマから来たと豪語するこの男こそが我らが愛しき賞金稼ぎ(下働き)、不随耀鉄だ。


「お、見えて来たな」

「うん」


 やがて芝を巻き上げて爆走していたジープはその速度を緩めた。緩やかな碧緑の谷の間に集落が見えたからだ。

 集落の正面にジープを止めて、二人は丸腰で緑の大地に降り立った。


~~~~~~~


 穏やかなもんだった。まったく凶悪な賞金首によって脅かされている村だとは思えない。

 事実、俺とミルヒが村に足を踏み入れたとき、村人は笑顔で俺達を向かい入れてくれた。まあ、その笑顔は安堵によるものかもしれないが。


「どうも、奥さん。気持ちいいのピーカンだな。まあ見ての通りの賞金稼ぎだ。手配書を見てここまで来たんだが……誰に話を聞けばいい?」


 子連れの母親に俺が話しかけると、母親はにこやかに村の奥の方を指さした。


「それなら村長に話を聞くといいわ。よろしくお願いしますね、賞金稼ぎさん」

「おうよ」


 ちらりと横を見ると、ミルヒが無表情で子供の頭を撫でていた。


「獣人族のおねーちゃんだ!」

「……」


 どことなくミルヒの表情がやわらかい。ような気がする。


「行くぞ」

「……うん」


 じゃあね。と、ミルヒは子供に手を振った。



 村長は想像よりも若かった。五十代だろうか? 標人族の男性だった。


「よくぞいらっしゃいました。いやあ辺鄙な村なもんで、手配書を張り出しても誰もわざわざ来てくれないんですよ」


 村長の屋敷で、俺とミルヒはお茶を振る舞われていた。


「最近の賞金稼ぎは随分懐が温かいようでね、300万キャッシュなんて『小銭』のためには動かねえのさ」


 村長の表情が若干強張る。

 ミルヒが机の下で俺の脚を蹴って来た。


「気を悪くしたか? すまないな」

「いえ、それでもこの300万キャッシュの賞金は村人が苦心して工面したものなので……」

「冗談さ」


 俺は手配書を取り出して、机の上に広げた、


「さて、本題に入ろうぜ」



「賞金首は元医療助手のクノー・フロイター、二十三歳。元はこの村の病院で働いていた青年です」

「『脅迫』『殺人』とかいう罪状だが、これはどういう事だ?」

「説明すると長くなるのですが……」


 村長の話を要約すると、どうも最近になって村の近くで大きな洞窟が見つかったらしく、そこでは量こそ少ないものの、希少な鉱石が採れるのだそうだ。

 貧しかった村にもこれで希望ができる。細々と採掘して村の経済を豊かにしよう。

 そう思った矢先、そのクノーという青年が鉱石の独占権を求めて村人を当時の村長を殺害してしまったらしい。


「穏やかじゃないな」

「ですから、私は新任の村長なのです」

「クノーとかいう奴はどうなったんだ?」

「それが……」


 村民からの襲撃を受け、村長を殺害した青年は村から飛び出して、その洞窟に立てこもり始めたのだそうだ。村を支配できなかったのなら、鉱石の取れる洞窟を占領して、村民を近づけないようにしようという算段だ。


「妙だな。一人だけで村を占領しようとしたのか?」

「見ての通り、村民合わせて50人ほどしかいないような小さな集落ですから、本人はできると思ったのでしょう。それに、人間巨大な財富を見ると人間が変わるものです。クノーは貧しい家の出ですから」

「……」


 俺は黙って村長の表情を伺うようにした。その顔に浮かぶのは怒り? 焦り? それとも哀れみか。


「なんで警察組織に頼まないんだ?」

「洞窟を召し上げられては元も子もないでしょう?」

「そうか」


 どうも打算ができない村長じゃないらしい。


「わかっているとは思うが、俺達は場合によってはそのクノーってのを殺すかもしれん。それでもいいのか?」

「……残念ですが、そのときはそれで構いません。彼も人を一人殺めているのですから。いずれにしろ、罰は受けなくてはなりません」

「……そうか」


 俺は首肯した。


「分かった。引き受けよう。その洞窟とやらの場所を教えてくれ」

「はい。地図を用意いたしましょう」


 村長は席を立った。


「それと、今から洞窟へ向かっては日が暮れ始めてしまいます。本日は村でお休みください」



 夜、俺とミルヒは村民の歓待を受け、ひとしきり食ったり飲んだりしたあと、民家の一室を割り当てられた。

 俺は荷物を部屋に置くと、夜風に当たるために家を出た。

 こっちの世界のタバコらしきものに火を着けて、咥える。最初こそあまり好きでなかったが、だんだんとこちらのタバコの味にも慣れてきた。

たしかに村民は俺たちを熱烈に歓迎してくれているのだが、どうにもその歓喜は内側へ向けられているように思えてならない。つまりどういうことかと言うと、俺とミルヒは蚊帳の外の扱いを受けているような心地がするということだ。

何を言っているのか分からない?

まあそうだろう。俺も自分がなぜこんな気持ちになるかが分からない。

それは、今まで俺が誰かから歓迎された経験がないからかもしれない。だから、人の好意を素直に受けられなくなっているのだ。その点、ミルヒは無表情ながらも村民との晩餐を楽しんでいるようだった。とくに、先程出会った子供に対しては愛想もいい。

翻して考えれば、ミルヒにはまだ人の優しさを受け入れる純粋な心の器を持っているということだろう。俺はなんだかそれが嬉しかった。

ただ漫然とこの仕事を始めた俺だが、「人を殺して金に変える」血生臭い行為から、ミルヒの純真さを守ることを目標にしてもいいかもしれない。と、俺は本心からそう思った。


 と、あっちの世界にいた時よりも大きな月を見上げながら俺がそんなふうに黄昏れて(夜だったが)いると、俺が今立っている小さな丘の向かい側、もう一つの丘の上に人影を認めた。あれは……女か?

 気になる、誰だろう、この村の住民か?

 目を凝らしていると、向こうもこちらに気が付いたようだ。軽く手を振って来る。



「気持ちのいい夜だな」

「そうね」


 長い黒髪の女性だった。眼鏡が似合う理知的な雰囲気だ。


「賞金稼ぎって言うのは貴方ね。村中あなた達の話で持ち切りだわ」


 二人並んで芝の上に腰かけて夜空を見上げていると、彼女はそう切り出した。


「あんまりくすぐったいんで、たまらなくなって抜け出しちまったぜ」

「ふふふ……あの娘は助手?」


 『あの娘』、とはミルヒのことだろう。


「まさか、俺の師匠だぜ」

「あら、面白い冗談ね」


 本当に冗談だと思ったらしく、女性はこちらをチラリと見てから笑っていた。無理もない。


「私、レノって言うの、この村でたった一人の医者よ」

「テツだ。十把一絡げの賞金稼ぎさ」


 握手すると、確かに仕事人の手をしていた。


「この村も大変だな。金になるもんが見つかっちまったばかりによ」

「……」


 女医が沈黙したので、これはまた地雷を踏んだかとチラリと横を見ると、彼女は厭に深刻そうな表情をしていた。


「……そうね、あんなもの、見つからなければよかったのに」


 彼女はそう言った。そして今度はまっすぐと俺の目を見て、実に真に迫った口調で、こう続けた。


「悪いことは言わないわ。明日の朝、洞窟には向かわずにまっすぐ他の町へ行きなさい」


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