【K_EB_R】
_彼女とやり取りをし始め、一ヶ月がたった。
停学は終わったにもかかわらず相変わらず俺はチャットを続け、不登校になっていた。父はもう俺を諦めたらしく、俺の存在を記憶の端から消したそうだ。家族の仲には亀裂が入り、もう元には戻れなかった。
それでも俺はやめることができなかった。俺は「依存」してしまい、自分の勝手な私情で家族を壊してしまったのである。
こんな過ちを犯してしまったが全く反省などしていなかった。
今日もケータイを開き、チャットを始める。今思えば、いつもこの行動を繰り返していた。まるで操り人形のように。
【こうや】:やほほ、ゆかりちゃん!いる?
【ゆかり】:ん、おはよう!
毎日同じ挨拶を交わし、互いの生存確認をする。
【ゆかり】:今日こうたくんの絵をかいたんだー!!良かったら見て~!
【こうや】:お、いいよ!見せて!
【ゆかり】:ん、どうぞ!似てるかな…?
【こうや】:そっくり…!!ほんとに似てる!目元がそっくり!顔も知らないのにここまでそっくりに描けるなんて…!
【ゆかり】:あはは、嬉しいな!頑張ったんだから…!
【こうや】:うんうん、頑張った!というか、全然寝てなくてさ。ほんっと眠いよー><;
【ゆかり】:知ってるよ、君が二週間寝ていないこと。くまやばいよー?新しく買った枕で寝たら?
「 …え?」
俺は思わず声を漏らした。
_なぜ彼女はそのことを知っているんだ?
【ゆかり】:その似顔絵がそっくりなことも
【ゆかり】:あなたの住所も好きなものもお父さんもお母さんも
【ゆかり】:貴方が不登校なことも貴方が私を好きなことも貴方が私無しじゃ生きられないこと私に操られたことも全部全部全部全部全部私は知ってるわ
ログが異常なスピードで流れていく。俺は青ざめた顔でロルを打とうとしたが動かない。殴っても殴っても動かない
【ゆかり】:なんで焦ってるの?汗だらだらだよ?なにをそんなに怯えているの??
「 うっ…あ…う…!!!!!」
頭の中は真っ白で俺は言葉を失い、パニック状態になった
「 あああああああ … !」
ケータイを揺さぶり揺さぶり必死に動かそうとした。今の俺にはそれしかできなかった
【ゆかり】:そんなにケータイ使いたいの??しかたがないね
パッ、とケータイ画面が明るくなった。俺はハッとして画面を見た。
【こうや】:これでいいでしょう?満足?
「 …は…!?」
どうやら侵入されてしまったようで、現状を理解できず固まる。もうこの頭は使い物にならない
【こうや】:おどろいた??でしょ???私すごいよね????
【こうや】:私は貴方の全てを知ってる、ねぇ、そろそろこっちの世界においでよ?????
【こうや】:K_EB_R
「 なんだなんだなんだわけがわからな、い、なんだよK_EB_Rって 」
「 わからない ? 」
真後ろから少女の声がした。
「 おてもとの キーボードをごらんなさい ? 」
俺はハッ、として後ろを振り向いた
「 の ろ い こ ろ す 」
「 あ、あああああ!!!!たすけて!!!!おとうさん!!!!!!おかあさん!!!!!!!たすけ
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「 今日な、あいつに顔を合わせてやろうと思っているんだ。 」
「 なに、お父さん。珍しいじゃない 。」
「 いや、あいつにはすこしやりすぎてしまったよ。あいつにはあいつなりの理由があったんだ 。 」
「そうね、私も一緒に会ってみましょう。…もう一回、やり直しましょうよ?」
「 あぁ…」
_ガチャ
「おい…いるか……っ!?」
「 こうた!?こうた!?!?こうた!??? 」
__今日、午後五時半、自宅でベッドに血濡れで倒れていた少年を発見し、少年の手に握られていた「凶器」と見られるナイフから、「自殺」と警察は見て捜査を続けています。情報が入り次第報道します。
「こうた!??!!?こうた!??!おい、こうた??!??生きてるか!?」
「 つぎは あなたの ばんよ 」
お楽しみいただけたでしょうか?かなりのスピードで話が進みましたが…。一応元ネタとなるものが「こ~こはどこの箱庭じゃ?」です。ストーリーに一目惚れしました。後で見返すとよく分からない感じですが、これからもこういう雰囲気の小説を書いていきたいと思います。では、また会うときまで。