小さな偽りの恋愛
_だめだよこうちゃん
_こっちだよ
_そっちはあぶないよ
_いっしょにいこうよ
ReReReReReRe!!
「 っはっ…!?」
昔ながらの目覚まし時計の音が響きわたり、俺は目を覚ました。
「 うるさ… 」
妙な夢を見ていたせいか、寝起きが悪い。時計の針は昨日と同じく8:00。
今日も予定は無い。まだ傷は癒えず、今日も親父と母さんと妹は居ない。
昨日も俺が寝た後に帰ってきたそうだ。
俺はベッドから起き上がると顔も洗わずにケータイを開いた。
今や「ケータイを開く」行為は自然となってしまう。
この某チャットサイトにはメッセージ機能という便利な機能がある。そのメッセージに通知が一件入っていた。
「 …ゆかりだ…!」
俺の顔は雨雲か晴れ太陽が出たかのように明るくなり、メッセージを読む。
【ゆかり】:【K_EB_R】
「 …?」
何かの暗号だろうか、俺は訳が分からず意味を問う。
【こうや】:何かの暗号かな?というか、今起きた!おはよう!
返信はすぐにきた。
【ゆかり】:あ、ごめん!なんでもないや!
きっと誤字ったかケータイの誤差動だろう。と考えトークを続ける。
【こうや】:今日も学校は休み?
【ゆかり】:うん、体調が悪くて。
【こうや】:本当?大丈夫?
彼女の体調を心配し、気使う。
【ゆかり】:ん、ありがと!大丈夫!
しかし、文面だけでも可愛さが溢れでている。彼女と話しているとつい時間を忘れてしまう。
【こうや】:よかったよかった~!
俺は上機嫌に返信をした。
【ゆかり】:こうやくん、ちょっと話があるんだけど…素直に聞いてほしいんだ。
【こうや】:えっ、なにかな?
俺はすぐに察しがついた。男女二人で話というば、恋愛系しかないだろう。
こんなことは初めてなので、ドクン、ドクン…と心臓が高鳴る。
【ゆかり】:こうやくんのことが…好きなんだ…
なんと大当たり。俺は嬉しすぎて手が震え、心臓はバクバクと破裂寸前、顔は耳まで真っ赤になった。
【こうや】:嬉しい…!ありがとうゆかり!俺も好きだよ…!
【ゆかり】:私も嬉しい…!!私たちネット上の関係だけど、お付き合い?いいかな…?
【こうや】:うん!いいよ!俺たちカレカノだね~w
俺は嬉しさの裏に、昨日あったばかりの彼女とお付き合いすることに疑問も持っていたが、その気持ちも嬉しさにかき消されてしまった。
この後は趣味の話、自分の私生活のこと、あっち系の話もした。
_いくらの時がすぎただろう。時計の針は既に深夜二時を回っていた。
【こうや】:ありゃ!もうこんな時間!
【ゆかり】:ほんとだ!もう深夜二時かぁ~、早いなぁ、こうやくんと話してると。
【こうや】:ありがとう!じゃあ、また明日ね~!!
今思えば、俺は何も食べていなかった。だが不思議なことに腹は全く減らなかった。
「 まぁ、腹減ってないし、もう寝るとしよう …」
両親はまだ帰ってきていない。一日中ほぼ俺一人の状態だった。
俺は明日を楽しみにし、あまり寝心地の良くない布団の中で深い眠りについた_