出会い
_平成29年 5/14 午前8:00
ふわり ふわりとやわらかい春の風がそよぐ。
「 …う…、?」
その不思議な風にゆさぶられ、俺は目覚めた。
時計を見ると
「 午前8:00… 」
普段の規則よい学生ならもうこの時間帯には学校へ向かっている時間だ。だが、俺はそうではなかった。
俺は、学校にいけない状況だった。
あまりにも赤点が続いたことと、二学年下の生徒から無理矢理身ぐるみをはがし、傷を追わせ「停学」になった。
「…チッ…」
昨日親父に殴られた所がズキズキし、動くたびに激痛が走る。なんせそうだ。あんなことをしてしまっては父は黙っていられないだろう。
_この馬鹿息子が!
_私に恥をかかせるな!
_私の目の前から消えてしまえ!
罵声と共におよそ3時間の暴力を浴びせられた。
近くで見ていた妹と母は、俺を見下すように見ていただけだった。
俺は誰にも救われなくなった。
「…なぜあのとき親父に抵抗しなかったんだ…、?」
いつもの俺ならあそこで親父を殺していたかもしれないが、自分の犯した罪に嫌悪を抱いていたせいか抵抗できなかったのだろう。
こうした気持ちをどこにもよこすことはできず、なんとなく枕元に置いてあったスマホを手に取る。
お気に入りのサイトを巡回し、某チャットサイトを閲覧する。
この時間のせいか人は誰一人いなかった。
一人も居ない部屋に入室し、しばらく待機していた。
20分くらい待っただろうか、
ある女の子が入室した。
【ゆかり】:こんにちは♪
ピロン、と更新音がなった
【こうや】:こんにちは
俺はすぐさま返事をした。
「こうや」というのは匿名で、本名は「こうき」だ。いつもは「こうや」でチャットをしている。
【ゆかり】:はじめまして、ゆかりです。
【こうや】:はじめまして、こうやです。
互いに挨拶を交わす。ごく普通の光景だろう。
【ゆかり】:学校はどうなされましたか?私は今日サボってしまいました(- -;)
学校のことを聞かれ、少し動揺した。
【こうや】:ちょっとある事情があって、今日は行ってない><
事情を隠し、返信した。
【ゆかり】:そうなんですね~!、あ、こうやさんは何歳なんですか?
【こうや】:中三です。
【ゆかり】:おお、奇遇ですね!私も同い年です!
女の子と話すのは久しぶりなので、つい口元がゆるんだ。
【こうや】:そうなんだ!かわいいね、どこの中学?
つい本心が出てしまったが、
【ゆかり】:可愛いだなんてありがとう!○△中学校です!
素直に答えてくれてホッとした。というより、○△中学校は結構近い中学校だ。
【こうや】:おおっ、近いね~!、俺の中学校は◎◎中学校!
【ゆかり】:ほんとだ!すぐ近くだね~♪
元々女に弱いと言われていた俺は、もうゆかりに心を開きはじめていた。
その後五時間近く話し、ライン交換もした。
【ゆかり】:そろそろピアノの時間だ!またここくるから話そうね~!
【こうや】:そうなんだ!寂しいなw頑張ってね!
もっとたくさん話したかったが、都合があるなら仕方ないな、と寂しくなった。
こんな気持ちになったのは久しぶりだ。
気付くともう夜になっており、俺は明日に備え寝ることにした。