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選べるなら、人間以外で  作者: 黒烏
第2章 赤い狐
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055 同盟宣言

 朝8時、フレアネス王国の王都の中心にある王城、その正門から入ってすぐの広場に、大勢の国民が集まっていた。そしてその群衆の端、城側の方に台があり、その上に第4代国王ジョナサン・レーヴァ・フレアネスが立っていた。脇には執事のヴォルフと、もう一人、これから国王が行う宣言の補助を行う従者がいる。彼が行うのは主に風魔法による拡声だ。


「皆、朝早くからの来城、感謝する。」


 国王は英語しか喋れないため、当然英語で話すが、ここに集まっている者たちは当然それを承知で来ている。

 ここに集まったのは王都の各地区の代表、王都周辺の集落の代表、そして情報集めに熱心な商人や興味本位の野次馬だ。


「今回国民の皆に発表するのは、新たな同盟についてだ。」


 同盟と聞いて民衆はざわつく。


「同盟ってカイ連邦と?」

「いや、あそことはもう同盟を結んでただろ?」

「じゃあ東の方?」

「いや、まさか・・・」


 様々な憶測が出るが、当然正解を言い当てる者はいない。自然とざわめきが落ちつくのを待ち、国王は話を続ける。


「皆の中にも聞いている者がいるだろう。昨今戦場で活躍し、この国を助けてくれている傭兵の話だ。彼は襲い来る帝国兵を蹴散らし、戦場で主を失った<疾風>の犬の新たな主となって、この数か月我らが王国のために戦い続けてくれた。」


 <疾風>の名が出て、民衆から感嘆の声が上がる。<疾風>は長い間戦場で活躍し続けた国民の英雄だ。そして数か月前の彼の戦死のニュースは王国全体に悲しみをもたらした。その忘れ形見たる犬を駆り、<疾風>の代わりに戦っている者がいる。それは国民にとって喜ばしいニュースだった。新たな英雄の誕生を期待させた。


「私は彼に<赤鉄>の二つ名を贈り、王国軍に迎え入れようとも思った。しかし彼はある事情から王国の傘下に入ることはできなかった。」


 再び民衆がざわつく。それほどの英雄を迎え入れなかったのは何故なのか?事情とは?そんな声が聞こえてくる。


「そこで、王国の土地を分譲し、そこを彼の自治区とした。そして我が国と同盟を結び、共に戦うことを約束してくれた。」

「「おお!」」


 何故そんな回りくどいことになるのか、事情は分からないが、とにかく一騎当千の英雄が共に戦ってくれる。それで十分だった。民衆は歓喜の声を上げる。

 一しきり民衆が喜んだ辺りで従者が「静粛に!」と声をかける。それで民衆はぴたりと歓声を止め、再度国王に集中する。


「しかしここで私は国王として国民のに包み隠さず真実を告げねばならない。」


 真剣な表情でそんな前置きを言う国王を見て、民衆が息をのむ。どんな悪いニュースなのか、と身構える。


「それは彼をこの国に受け入れられなかった理由だ。それは、彼は、<赤鉄>は魔族なのだ。」


 それを聞いた民衆は混乱する。ある者は理解が追い付かずに呆然とし、ある者は国王を罵る。またある者はそれが近くにいるわけでもないのに怯え始めた。

 この世界にとって魔族とはそういう存在だ。100年前の対魔族戦争以来、魔族は西の山奥から出てきていなかったため、魔族を直接知る者はほとんどいない。今の獣人たちが聞き及んでいるのは、かつて獣人を絶滅の危機に追いやった非情な悪魔だという先祖からの警告だけだ。闇魔法で心を操り、強力な攻撃魔法で何十人もの獣人や人間を易々と薙ぎ払う化物だと聞いているのだ。そんなものが近くにいるかもしれない。そう思うだけで恐怖なのだろう。


「静粛に!!」


 今度は国王自らがとびきりの大声で民衆を静まらせる。若くとも威厳ある国王の言葉に、混乱していた民衆がぴたりと止まる。


「<赤鉄>は名をクロと言い、魔族ではあるが、我々の社会に理解がある。考えてもみろ。王国に不利益をもたらすような奴に、<疾風>の犬が懐くか?」


 再び民衆がざわつくが、先程のような混乱はない。国王の話を信じるべきか、迷っているような様子だ。


「疑うなら前線帰りの兵士にでも聞いてみればいい。<赤鉄>の戦果を。中には彼と直接会った者もいよう。」


 まだ民衆はざわついているが、初めのような悪感情は感じられなくなってきた。


 ・・・やれやれ。クロが行動を起こす前に、国民にクロは敵ではないとはっきりさせておくべき、と爺さんが言うから急遽こんな発表をしたが、どうにかうまくいきそうだな。


 内心で安堵しつつ、国王が最後の宣言をする。


「すぐには信じられずともよい。彼の実際の行動や評判を聞いて判断してくれればいい。だが私は信用するぞ。この戦争に勝つため!この国のために!<赤鉄>のクロとの同盟を宣言する!」

「キャアアアアア!」


 その女性の悲鳴は国王の宣言とほぼ同時だった。何事かと民衆も国王も、声がした城門の方を見る。

 開きっぱなしの城門には、男の生首を担いだクロと、死んだ目の5人の子供を拘束して引きつれるマシロが立っていた。そしてなぜかその周囲をジャングルスイーパーが飛び回っている。


「「うわあああああ!」」


 民衆が声を上げて城門から離れる。そりゃあそうだろう。目つきが悪い男が生首ぶら下げて立っているのだ。どう見ても危険人物である。

 突然のクロの登場に国王も混乱したが、クロと門番の兵士の会話しているのが見えた。状況を知るため、従者に指示してその会話の音声を拾わせる。ついでに国王は日本語がわからないので、通訳も頼む。


「クロ殿、まずいですよ、今は!」

「いや、でもこれ預けないと帰れないし。俺は早く帰りたいんだ。」

「わかりました!預かりますから、早く帰ってください!」

「いや、でもこいつら逃げ足速いから、あんた一人には預けられないなあ。もっと人集めてくれ。」

「わかりました!おーい!手伝ってくれー!」


 テンパった門番が広場を守る衛兵に声をかけている。仕方なく衛兵の一部がクロ達の方に向かい、子供たちを預かり始めた。


ーーーーーーーーーーーー


 クロ達は首と捕虜と盗品を担いで窃盗団のアジトを出た後、朝早く傭兵ギルドに出向いた。

 そこでも職員と早朝から来ていた傭兵たちに大層騒がれた。まず持ってきたものを見せてクロが職員に話す。


「少年窃盗団を討伐して来た。」

「・・・は?」

「こいつらが捕獲した奴で、他25人は殺した。で、これが頭目だ。」


 クロは袋から窃盗団の頭の首を取り出す。


「ぎゃああああ!」


 驚いた職員が後ずさり、椅子に躓いてすっころび、ばたばたと他の職員を呼んで来る。

 呼ばれてきた職員にも一通り驚かれ、ようやく手続きができたと思ったら、更なる面倒が待っていた。


「えーと、では盗品はこちらで持ち主に返しておきます。」

「ああ、頼む。」

「捕虜については、依頼主である国王の方にお願いします。」

「ギルドから届けてくれないのか?」

「すみません。我々では、その、逃げられる可能性が・・・」

「仕方ないな。」


 クロとしては人が多くなる時間帯になる前に帰宅したかったのだが、そうもいかなくなりそうだ。生気がない子供を5人も引きずって歩くと、移動にもかなり時間がかかるのだ。

 そうして王城に向かったクロ達だが、その途中でもかなり注目された。なにせクロ達の周りをスイーパー達が飛び回っているのだ。どうやらクロの家のスイーパーから森中のスイーパー達に、王都に食べ物がたくさんある、という噂が流れてしまったらしい。その目印としてクロが指定されているようで、クロが持っている男の生首を啄もうと寄って来るのだ。さらには絶望し死んだ目になっている子供たちも美味そうに見えるようで、時々つついている。

 しかしクロが止めるように言えば、食べることはなかった。どうやらクロには従うべき、ということまで言い含められているらしい。

 そうして世にも恐ろしい不吉な光景が出来上がり、それがそのまま、王城にやって来たのだった。


ーーーーーーーーーーーー


 民衆は門番とクロの会話を聞いたらしく、すでにあれがクロだと把握したようだ。

 どうしようかと冷や汗垂らして焦る国王に、ヴォルフが耳打ちする。


「どうやら先日依頼した少年窃盗団の討伐をもう達成したようです。あれが頭目の首と捕虜、と言ったところでしょう。」

「は、早いな・・・」


 ・・・早すぎだろ!ヴォルフが依頼したのって、一昨日だよな!?なんで何週間も傭兵やウチの兵士が追ってた連中を2日足らずで討伐できるんだよ!


 内心動揺する国王だが、顔には出さず、努めて平静に声を出す。


「皆、あれが<赤鉄>のクロ殿だ。早速依頼をこなしてくれたらしい。王都でかねてより問題となっていた窃盗団を討伐してくれたようだぞ。」


 既にクロとばれてしまったなら、仕方がない。その点は肯定し、彼の功績を強調することでフォローしようとした。

 しかしそれに好意的な反応を示したのは一部の商人だけだった。ほとんどの民衆は、クロとその周囲が作り出す恐ろしい光景から感じる恐怖のほうが勝っていた。

 民衆の注目が集まっていることにクロが気がつく。そして明らかに嫌そうな顔をした。ヒト嫌いなのだから当然の反応だ。だが国王は内心ツッコミを入れざるを得ない。


 ・・・せっかくフォローしたんだから愛想くらい振りまけよ!なんで見るからに嫌そうな顔してんだ、畜生!そうだ、せめてマシロ!お前は城で接客を学んだんだから、愛想笑いくらいできるよな!?


 国王が淡い期待を抱いてマシロを見るが、そこにはいつも通りの無表情で衛兵に捕虜を引き渡すマシロがいた。


 ・・・いつも通りの鉄仮面んんん!てめーもか、畜生!なんでムラサキがいねーんだ!?あいつがいれば少しはマシだったのに!


 マシロが無表情なのは当然だ。まだ任務中なのだから。それに、マシロは接客は学んでいない。メイドから習ったのは基本的な礼儀作法と家事だ。ただし料理を除く。身内の世話はできるが、他所の客をもてなすことはできない。そしてムラサキは留守番だからいない。


 結局、クロ達は捕虜と生首を預けると、さっさと帰ってしまった。

 大半の国民が彼らに抱いた印象は、能力はあるし、敵ではないが、不気味で恐ろしい存在、という何とも微妙なものとなった。


東方新作のNormalを全キャラでクリアできたので、更新速度を戻します。

Extra?私にクリアできるわけないじゃないですかー。

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