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選べるなら、人間以外で  作者: 黒烏
第1章 白い犬
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038 自宅争奪戦

 クロは「黒嘴」と盾を装備して西門の外で待つ。この装備を抱えて『変化』で飛ぶのは大変だったが、チタン装甲を操作するのを併用してなんとか門の外まで飛んできた。

 そういえばチタン装甲を手術で仕込んだあと、一晩寝たら妙に装甲が身体になじんでいた。入れた直後はちょっと動きにくい感じだったのだが、どうやら体の一部と認識されたらしい。おかげで『変化』してもそれに合わせて変形してくれるし、ある程度自動修復もできるようだ。そして『変化』時に使われている魔力を見る限り、今まで木属性の魔力だけで行っていた変化が、原子魔法の無属性魔力も使われていることが判明。術式は変わっていないのに効果が変わっているようなのだが、いったいどうなっているのか?

 そんな考察をしている間に、西門を出てくる馬車を見つけた。

 まるで一軒の家のような巨大な馬車を、こちらも巨大な馬が3頭がかりで引っ張っている。クロは某世紀末漫画の拳王が乗る馬を思い出した。そんなのが3頭も並んでいるのだから、すごい迫力だ。


「貴方が家主の方ですか?」

「ああ、よろしく。」


 御者台に座る、立派な鹿角が生えた紳士が尋ねてきた。クロが返答すると、紳士は台を降りようとするが、クロはそれを止めて、自分が台に飛び乗る。


「日が暮れないうちに作業を終える必要があるだろ?さっさと行こう。」

「お気遣い感謝します。後ろへどうぞ。」


 紳士に進められて馬車に入ると、タンスやベッドなどの家具が所狭しと置かれ、その隙間に6人ほどの作業服の男たちが座っている。


「あんたが依頼主かい?妙なところに家を建てるんだな。」

「ちょっと訳ありでね。」

「立派な装備だなあ。やっぱ魔獣の森に住もうってなるとそのくらい必要か。」

「ああ。」


 作業員たちの質問に適当に答えながら、クロは家具を検分する。

 家具は主に木製で、肌触り良く仕上げられている。装飾は少なく実用性重視。注文通りだ。

 ベッドは予備もあるのか、4つも用意されているが、使うかどうかはわからない。ムラサキは喜ぶだろうが、マシロはどこでも寝れるし、クロは欲を言えばマシロに寄り掛かって寝たい。というかモフモフに抱きついて寝たい。

 タンスは形状から衣類を入れると予想されるが、マシロはいらなそうだ。基本的に「影縫」を着ているし、「影縫」は形状を好きに変えられるから、新しく服を用意するとも思えない。

 本棚は立派なのが一つ。使うのはクロだけだろうし、問題ないだろう。

 小物入れと思しき棚が6つ。各自室に1つずつと、リビングに2つくらい、あとの1つは倉庫あたりか。

 律儀に物干し竿まである。あとは用途が広そうな金属製のたらいやバケツが様々な大きさで用意されている。調理器具は流石にないようだ。


 一通り見回って問題ないことを確認したクロは作業員への挨拶もそこそこに御者台に戻る。御者を務める鹿系獣人の紳士が不思議そうにクロを見た。


「おや、どうされました?」

「家具の確認が済んだからな。こっちで休ませてもらう。」

「車内で休んでいただいて構いませんよ?」

「狭いところは苦手でね。こっちで馬を見てる方が楽しい。」


 正確には、狭い空間に大勢の人と顔付き合わせているのがストレスになる、が正しい。クロにとっては狭い車内では6人でも十分多く感じる。

 クロは「黒嘴」を杖代わりに楽な姿勢を模索した後、馬を観察することにした。

 馬はハイランドホースという種で、高原などの寒くて広い土地に住む馬らしい。この巨体を生かして肉食獣を撃退し、生存率を高めているそうだ。野生のハイランドホースは高原の大概の肉食獣には負けず、さらに足も速いため、万が一自分より大きい肉食獣に遭遇しても逃げ切れる。子供の頃はやられることもあるが、大人になりさえすれば生存率はぐっと高まるらしい。

 今もアイビス山脈に向かう平原を走っているが、時々出会う犬型の獣はハイランドホースを見るとすぐに逃げ出していく。それはそうだろう。ハイランドホースは体高は250cmを超え、全長で4m近いのだ。並の獣では蹴られるか踏まれて終わりだ。

 そしてこの突進力!家一軒引いているかのような状態にもかかわらず、時速30kmはありそうだ。速さ自体は普通だが、この質量でこの速さだと、破壊力は尋常ではない。馬車を離れて全力で走ったらどんな速度が出るのか。その逞しいハイランドホースの姿を想像して、クロは自然と頬が緩む。

 ・・・まあ、流石に真白の速度には敵わないだろうが。

 そうして人嫌いで動物好きのクロは、隣の御者とほとんど話さず、馬ばかりを見ているうちに、馬車はアイビス麓の森に着いた。


「おー、立派な森だな。」


 まさに人の手が入らない野生の森といった様相だ。植物同士でも生存競争をしていることが見てわかるかのように、所狭しと植物が生えている。15m程の大木が立ち並ぶ隙間に、競争に敗れたのか、それとも寿命が来たのか、朽ちた倒木がある。その倒木の上にキノコや苔が生え、その苔を土台に草が生える。生い茂る木々に空が見えないかと思えば、ぽっかり空いた穴があり、そこに差す日光を奪い合うように若い木々が伸びてきている。

 クロが森を眺めている間に、作業員たちはテキパキと荷車を用意し、家具を乗せる。御者と作業員2人が馬車に残り、4人が家具を運ぶようだ。


「家主さん、こっちだ。この獣道から入る。」


 見れば確かに作業員が指さす方向に獣道がある。ギリギリ台車が通れる幅だ。


「どんな獣の通り道だ?結構デカいようだが。」

「さあ?俺達にはわかんないっすねえ。」

「でも昨日のうちに兵士さんが露払いしてくれてますから、大丈夫っすよ!」


 そう言って作業員達は気にした様子もなく荷車を押していくが、クロは色々と心配になる。

 ・・・アイビスの過酷な環境を生き抜く猛獣が平原に出て、王都にでも向かったらやばいと思うんだが。それに昨日露払いしたって、一晩もあればまた獣は動くだろ。本当に大丈夫か?

 クロは能天気な作業員の代わりに周囲を警戒して進むが、意外にも襲撃はなく、10分ほどで開けた場所に出た。

 森が途切れた平原は予想以上に広く、半径1kmは少なくともあるだろう。向こう側の森の入口が遠くに見える。クロの目だからこそそれが視認できるが、目の悪い人なら見えないかもしれないほどの距離だ。そしてこの広大な土地のど真ん中に家は建っていた。

 平屋で小ぢんまりとした生活スペースと思しき家と、作業小屋として使えそうな2階建てくらいの高さの小屋がある。その間には用途がわからない小さな小屋もあった。倉庫にでも使えばいいだろうか。いずれも王城と同じく土魔法で固めた頑丈そうな作りだ。建物の形状はいずれも真四角で、屋根は屋上としても使えそうだ。


「いい家だな。業者にはお礼を言っとかないと。」

「・・・・・・」


 クロが現在最前線で戦っているであろうホシヤマを思い浮かべてそう言うが、作業員達に反応はない。平原に荷車を出したところで4人とも動きを止めている。


「ス、スイーパーだ。」

「ん?あのカラスか?」


 作業員の一人が呟き指さしたのは、家の上にたむろしているカラスのような黒い鳥たちだ。


「あ、あんた、知らないのか!?あいつらはジャングルスイーパーと言って、死んだ獣とかを骨まで残さず喰っちまう恐ろしい魔獣なんだよ!」

「スカベンジャーか。別に恐がることでもないだろ?何が危険なんだ?」

「いや、確かに積極的に生きた獲物を狩るのは稀だが、縄張り意識が強いんだ。一度住処と決めた場所は何物も立ち入りを認めない。これ以上近づいたら一斉に襲い掛かってくるぞ!」

「なるほどねえ。」


 つまりこの家はこの一晩の間に彼らの住処に認定されてしまったわけだ。おそらく昨日兵士たちがここの獣を追い払って去った後、残った獣の死体を漁りに来て見つけたのだろう。天敵がいなくなった安全なスペース。魅力的な住処だ。野生ではありがちな話だろう。

 クロはそう思って納得したが、作業員達はそうではないようだ。


「畜生、追っ払ってくれたんじゃないのかよ。」

「これじゃ仕事ができねえ。」

「うう、気味が悪りぃ。」

「一旦引き返すか?」


 作業員4人は今にも引き返しそうだ。さっきまでの楽しい仕事の雰囲気はどこへやら。このまま帰られてはたまったものではないので、クロが呼び止める。


「まあ、待て。あんたらはここで待ってな。俺が話を付けてくる。」

「話って、いくら魔獣とはいえ、話が通じる相手じゃないぞ!」

「言葉を理解できるなら十分だ。一方的にこちらの要求を述べて、あとは肉体言語だ。野生の流儀で行くさ。」


 そう、野生においては縄張りは力で守り、力で奪う。戦い方に作法こそあれ、力こそがすべてだ。クロは剣を片手に盾を背負って、一人で家に向かう。縄張りを奪うため、居場所を勝ち取るために。


 クロは迷うことなく家へと歩を進め、あと十数mというところで立ち止まる。ここまで近づいたことで、スイーパー達の様子に変化があったからだ。クロに最も近い数羽が、身をわずかに屈め、いつでも飛び立てる構えをとった。あと1歩か2歩踏み込めば、攻撃が始まるだろう。

 クロは「黒嘴」を鞘に納めたまま地面に突き立てる。それは深々と地に突き刺さり、固定される。


「俺はクロ!この家をもらいに来た!」


 普段大声を出さないクロが、珍しく腹から声を出す。するとスイーパー達は一斉にクロの方を向き、離れた位置にいた者も寄ってくる。その数100羽はいるだろうかという大群だ。わずか数秒、互いに動きを止める。先に動いたのはスイーパー。中央付近にいた一際大きなスイーパーが屋根から飛び立ったかと思うと、不自然なほど急加速してクロに接近。クロの頭を掠めて行った。それに対しクロは一切動かない。

 スイーパーはまず威嚇して来た。「今逃げれば見逃す。逃げなければ容赦はしない。」と言っているのだ。対してクロは避けもせずにスイーパーを睨む。「やれるものならやってみろ。」と態度で示す。

 その直後、クロに威嚇した一羽がそのまま上空に上がった後、カアと一声鳴く。それを聞いたスイーパー達が一斉に飛び立った。開戦だ。


 上空を覆う魔力を宿した100羽を超える魔獣の群れ。常人なら絶望を覚える光景だ。

 しかしクロが怯むことはない。背負った盾をそのまま展開。背中と後頭部を守る。

 臨戦態勢に入ったクロに対し、スイーパー達は一斉に鳴く。その声には魔力が乗り、クロに襲い掛かる。


「『フォース・フィアー』か。闇魔法を使うとはな。だが無駄だ。」


 『フォース・フィアー』は対象を恐怖に陥れる魔法だ。一羽一羽の威力は低くとも、この大群で同時に行使すれば強力になる。だがそれでもクロの抗魔力は突破できない。

 闇魔法が効かないと見るや、スイーパー達は直接攻撃を始める。

 まずは2羽が急降下。それに対してクロは1羽に背を向けて盾で受け、もう1羽を迎え撃つ。爪で顔面を狙って来たスイーパーに対し、クロは思考加速で対応。素早くその足を掴み、さらに嘴も掴んで捕らえる。暴れるスイーパーを素早く地面に投げ落とし、叩き付ける。ただし死なないように加減をして。

 地に叩き付けられたスイーパーはバタバタと暴れた後、すぐに復帰して飛び去る。

 ・・・ちょっと加減しすぎたか。魔獣なんだから普通の鳥より頑丈なんだな。

 1羽目が飛び去ったのを確認したとき、第2陣が襲い掛かる。盾に阻まれて一旦離れていた1羽に、新たに2羽加わって、3方向から来た。

 再び1羽に背を向け、2羽目を屈んで躱す。頭に来るのは読んでいた。そして3羽目には思考加速でタイミングを計り、綺麗にアッパーを決める。回転して背中から地に落ちたスイーパーは、ピクピクと動きつつも起き上がる様子はない。強烈に頭を揺らされ、気絶したようだ。

 ・・・よし、加減はこのくらいだな。十分対応できる。

 第2陣もやられて様子見を始めたスイーパーに、クロは手招きして挑発する。


「かかって来な。全員地面で寝かせてやる。」



 20分後、戦闘は佳境に入っていた。

 半数のスイーパーは既に気絶か疲労困憊の状態で地に伏している。順調ではあるが、クロも無傷とはいかなくなってきていた。

 同時に5羽が攻めてくる。クロは盾を背から外し、宙に浮かせている。1枚ずつ2羽の前に配置するが、2羽とも急速にカーブして盾を躱し、すり抜けてくる。スイーパー達は風魔法を駆使して、ただでさえ高い機動力をさらに向上させていた。

 盾を躱して突撃が遅れた2羽は一旦置いておき、3羽の方を向くクロ。一番近い1羽に手を伸ばすが、その1羽は急激にブレーキをかけ、『ウィンドカッター』を飛ばして離脱する。目に飛んできたそれを頭を下げて回避したところに、耳めがけて嘴が突っ込んでくる。クロはそれを寸前で掴み、無造作に地面に投げ飛ばす。そのモーション中に別の1羽の嘴が後頭部に突き刺さるが、チタン装甲のおかげで浅いところで止まる。離脱しようとする3羽目を捕まえようと手を伸ばすが、遅れて来た4羽目に腕を横から蹴られて蹴られて阻止される。ついでに5羽目が膝裏を啄んで逃げて行った。

 5羽中倒したのは1羽。それでも少しずつ減らしている。傷を治癒しつつクロが空を見上げれば、既に次が来ていた。


「やるじゃねえか。」


 そう呟いて次の波状攻撃に備えたその時だ。北側の森から巨大な何かが飛び出した。異常事態に反射的に思考加速を起動したクロの目に映ったのは、10mくらいの高さまでジャンプした、全長3mはあろうかという巨大な虎だ。緑と黒の斑模様で、背中に羽が生えている。

 その虎はジャンプの頂点に達すると、翼を広げて降下を始める。そして思考加速をしなければ認識できないほどの速度でこちらに空から突進して来た。

 魔力は薄く、魔獣ではないことがわかる。そして近づくにつれて虎の狙いがわかって来た。虎はクロに向かっているのではなく、地面に転がったスイーパー達を狙っているのだ。

 それに気づいたスイーパー達はクロへの攻撃を中断し、仲間の救出に向かう。しかし到底間に合う距離ではない。

 急降下してきた虎がその爪を倒れるスイーパーの1羽に叩き付けようとしたその時、虎が真横に飛んだ。

 正確には吹っ飛んだのだ。クロに横っ腹を殴られ、水平に飛んで行った。虎は20mほど飛んだ後に地面に落ち、さらに10mほど転がってようやく止まる。口から血を流し、呻く。

 クロは急激に膨れ上がった魔力を迸らせながら、それにゆっくりと歩み寄りつつ、殺気を込めて言い放つ。


「勝手に手え出してんじゃねえよ。」


 クロが虎を殴ったのは、野生のルールとか獲物の横取りを嫌ってとか、そういう理由ではない。単に気に食わなかっただけだ。自分が殺さずに確保した奴を、他者に殺されるのが我慢ならなかった。

 クロはどんな理由であれ、自分が守ろうと思ったものを傷つけられることを極端に嫌う。今回はクロが勝手に決めた「スイーパー達を1羽も殺さずに家を奪い取る」というルールを乱入して来た虎に邪魔されそうになった。それだけだ。

 クロの接近に気付いた虎が、痛みをこらえながら立ち上がる。それを見たクロは警告する。


「ここはこれから俺の縄張りになる。ここでの狩りは許さん。退かないなら、お前を狩る。」


 目を合わせた者に死の恐怖を与えるクロの目。それに睨まれても虎は退かなかった。目の前に確実に取れる獲物が転がっているのに、逃げるなんてできない。強者が蔓延るこの森では、獲物を得るチャンスを棒に振れば、容易に餓死する。そもそもこの魔力濃度が濃い危険地帯に足を運ぶほど、この虎は飢えていた。ここで退けば餓死する。ならばどんなに恐ろしい相手でも退けない。

 退く様子がないクロは覚悟を決める。さっきはカッとなって殴ってしまったが、できれば殺したくはないのだ。クロはこういう野生の獣が生きられるようにこの土地を得ようとしているのだから。だが、相手がやる気なら、クロも退けない。


「わかった。退く気がないなら・・・勝った方が得る。それだけだ。「黒嘴」!」


 クロの声に反応し、地面に刺さっていた「黒嘴」がクロへと『移動』する。しかし、それよりも早く虎が飛び掛かって来た。重傷を負いながらも、あの大ジャンプを生み出す脚力に衰えはない。命を懸けた全力攻撃だ。

 対するクロは思考加速でその動きを見切り、横へ一歩ずれる。そしてすれ違いざま、その突進を加速させるように虎の右前足を引っ張った。それによって虎は着地が乱れた。虎がクロに向き直ったときには。クロは既に「黒嘴」を抜いていた。

 虎にもそれが危険な武器だとわかっている。それでも退けない。そこで虎は一か八か、スイーパー達の方へ駆け出した。脚には自信がある。獲物を1羽だけでも捕まえて逃げ切ればいい。

 そう思って虎が駆けだした瞬間、再びクロの魔力が膨れ上がる。そして虎が駆けだして3歩目、虎はまた横に飛んだ。そしてまた転がり、倒れる。しかし今度は起き上がらない。虎の頭には「黒嘴」が深々と刺さっていた。

 クロはまたゆっくり歩み寄り、「黒嘴」を抜き取る。血を袖で拭いて納刀すると、また地面に突き立てる。そして虎の亡骸に向かって合掌する。


 数秒、目を閉じて祈ったクロが目を開けると、周囲にスイーパー達が集まっていた。倒れていた者たちもよろめきながらも寄ってくる。殺気立った様子はない。

 一番大きなスイーパーが前に出て、虎の亡骸をつつき、ちらりとクロの方を見た。


「ああ、やるよ。いいぞ喰って。残すなよ。」

「カア!」

「「カア!カア!」」


 口々にスイーパー達が鳴き始める。一しきり騒ぐと、余力のある者たちが虎を運び始めた。嘴で引っ張って、家から離れるように移動する。

 それを場所を譲るという意味に捕らえたクロは、遠くの作業員に合図を送る。


「おーい!許可を得たぞ!運んでくれー!」


 数分後、恐る恐る作業員達がやってきて作業を始めた。運ぶ道の脇でグロ注意の食事風景があるため、明るい雰囲気とはいかなかったが、作業は順調に進み、持ってきた家具は昼過ぎには運び終えた。

 ちなみに昼食はなかった。虎の解体現場を見た4人の作業員は食欲が失せてしまったらしい。

 作業を終えた作業員達が逃げるように去ったクロの家。クロはまだそこに残っていた。当初は作業員達と共に帰る予定だったのだが、スイーパー達のことが気になり、残ることにしたのだ。


「さて、どうなるかね・・・」


 椅子とテーブルを一組、家の前に出してそれに座りながら、クロは虎を残さず食べるスイーパー達を眺めていた。


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