表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選べるなら、人間以外で  作者: 黒烏
第4章 緑の狸
171/457

148 忘年会③

 忘年会は大いに盛り上がった。

 料理が綺麗に食べ尽くされた後は、残りの酒を片手に余興が始まった。

 先代のゴーレム演舞から始まり、それでテンション上がった狸達がゴーレム決闘を始めた。

 互いに1体ずつ『アースゴーレム』を出して殴り合う。可能なら武器を持たせてもいい。殴り合うのはゴーレムだからケガをしないので、思い切りやれる。


「いけー!」

「そこだ!」

「足を狙え!」


 やり合う2人はもちろん、観戦する側も盛り上がる。

 土魔法で作った斧を持ったゴーレムと、素手のゴーレムが間合いを測って接近と離脱を繰り返す。

 素手のゴーレムが素早く接近。待ち構える斧のゴーレムは相手の足を横薙ぎに払った。

 しかしそれを読んでいた素手のゴーレムはジャンプして躱し、斧のゴーレムの懐に入る。

 そこからは一方的。リーチと破壊力を重視して柄が長い斧にしていた斧のゴーレムは、至近距離ではうまく戦えない。対して素手のゴーレムは殴り放題。しかも武器を作らなかった分、ゴーレム自体の強度が高めてあり、殴っても拳の摩耗より斧のゴーレムが壊れる方が早い。

 そしてそのまま決着。


「くそー!負けた!」

「はっはっは!青い青い!足狙いがバレバレだったぞ!」

「次は俺だ!」


 そうして徐々に勝ち抜き戦のようになり、ベテランに若手が挑むような構図になって行った。



 素手のゴーレムを操るベテランはそのまま10人抜きした。


「どうした!俺に勝てるのはいないのか!?」


 はっはっは、と高笑いするベテラン狸に、ゆっくりと近づく小さな影。


「ほう。ではお相手願えるかな?」

「げっ!?せ、先代!?」


 調子に乗っていたベテランは、先代に勝負を仕掛けられた。

 結果、瞬殺。

 ベテランの頑強なゴーレムは、先代の鋼の双剣を持ったゴーレムに8分割されて倒れた。


 その後もメンバーを変えて再開。

 器用な若手が投石を得意とするゴーレムを作ってベテランを撃破するなど、番狂わせはあったが、基本はベテランの方が強かった。

 日が暮れ始めても興奮は冷めやらず、終わりが見えなくなったころ。


「面白いな。俺も混ぜてくれ。」


 クロが参加の意思を表明したところでピタリと止んだ。

 そして、狸達は一斉に辞退。


「なんでだよ。心配するな。俺はケガしてもすぐ治るから。」

「そうだけど!いや、あんたに勝てるわけないだろ!」


 以前、ハツ達が見たクロとマシロの鍛錬の様子は、狸達全員に知れ渡っていた。


「まあまあ。いいじゃないか。」

「いや、あ!先代!助けてくれ!」


 あるいは先代ならば勝負になるのでは。クロに詰め寄られたベテラン狸は、先代に助けを求める。

 しかし先代は既に丸くなっておやすみの態勢になっていた。


「わしゃあ、もう疲れた。自分で何とかせい。」

「そ、そんな!か、頭!」


 次に頭領であるダンゾウに助けを求めるが、


「儂は土魔法使えんからなあ。」


 結局、ベテランのゴーレム対クロの決闘が始まった。

 半ばやけくそのベテランが槍を持ったゴーレムを突撃させるが・・・


「うおおお!」

「ふん!ふっ!」


 クロの一刀で槍が叩き折られ、返す刀でゴーレムの胴は真っ二つ。上半身が数m飛んで、地面に落ちて砕けた。


「・・・参りました。」

「いや、なかなかの突進だった。帝国兵相手よりも緊張感あったぞ。ただ、速度が足りないな。」

「た、足りませんか?」


 先程のゴーレムの突進速度はかなり速かった。時速50kmは出ていたかもしれない。通常、鈍重なゴーレムにしてはかなり速い部類だ。

 しかし、マシロの速度に慣れたクロには、遅く感じられたらしい。

 自覚がないながら、もしや自分の感覚がおかしいのか、と感じたクロは、他に意見を求める。


「足りなかったよな?」

「足りませんでしたね。」


 尋ねた相手はマシロ。当然、マシロは「遅い」と答える。


 ・・・聞く相手が違う!


 周囲一同、そう感じたが、誰も口に出さなかった。こういう時のツッコミ役、ムラサキは、狸の若い女の子達と飲んで盛り上がっていて、クロ達の決闘を見ていなかった。



 決闘大会へのクロの乱入の後、宴会はお開き。

 全員で協力して後片付け。と言っても、食べ物は完食。使った食器はほとんどが土魔法で作ったもので、崩して土に還すだけ。空の酒瓶だけ『ウォーター』で洗って『ヒート』で乾かし、物置に片付けた。

 狸達は、酔った状態で森の巣穴まで帰るのは危ないので、庭先に土魔法で即席小屋を建てて泊まることになった。


 後片付けを終え、日も沈んだ後。家の客間でクロ、マシロ、ダンゾウが机を囲んでいた。

 他のメンバーは既に眠り、この3人だけが残った酒をちびちびと飲みながら静かに話をしていた。

 3人とも光適性が低いので、部屋を照らす『ライト』はぼんやりとしたもので、薄暗い。

 それでも3人とも夜目が効くので暗さを気にした様子もなく、お猪口で酒を飲んでいる。


「いや、今回は馳走になりました。」

「雇い主として当然の労いだよ。」

「しかし、これほどの酒を集めていたとは。」


 今回の宴会では結構な量の酒が消費された。そのほとんどが物置にしまってあったクロの酒だ。


「あー、あれな。」

「あれはマスターの趣味です。」


 今はメイドとしてではなく、クロの兄妹分として、クロの隣に座るマシロが答える。


「マスターが街に出たときに赴く場所は、図書館、酒屋、陶器店です。マスターはお酒が好きで、エールや日本酒をよく買いますが、もったいないと言って開栓せずに物置にしまいます。」

「へ?なんで飲まないんです?」

「いや、俺は魔族で、通常、飲食が不要だろ。買う時は美味そうだと思って買うんだけど、後から無用な飲食は主義に反すると思って、機会が来るまで取っておこうと・・・」

「正直、今回の忘年会は助かりました。物置がいっぱいになるところだったので。」

「え、まだ余裕あったろ?」

「あのペースなら、あと半年ほどで満杯でしたよ。」


 クロは酒を買うだけ買って物置に貯め込み、物置の半分を酒で埋めてしまっていた。普段から掃除をしているマシロは、そのことを気にかけていたのだ。


「ちなみに、そのお猪口は、マスターが陶器店で買ったものです。」

「いいだろ、それ。」


 ダンゾウの手にあるお猪口は、つやのある黒一色で、側面に1つだけ、ぼんやりと白い丸が描かれている。それが夜空に輝く満月のように見える。


「シンプルですが、いいですね。」

「シンプルだからいいんだよ。」


 クロが持つお猪口も、シンプルな柄だ。黄土色に緑の線が引いてあり、底の中央で収束するような渦を描いている。


「ふむ。ウチに焼き物ができる者もいますから、作らせましょうか?」

「お、いいな。」

「お待ちください。」


 ダンゾウの提案にクロが同意するが、マシロが待ったをかける。


「酒器のコレクションも場所を取り始めていますよ。あまり増やさないでください。」

「お猪口は俺の部屋に置いてるから、いいじゃないか。」

「マスターの部屋に収まりきらなくなる未来が見えます。」

「うーん、確かに。」


 クロは気に入ったものを取っておく癖があり、基本的に捨てられない。物を大事にすると言えば聞こえはいいが、整理ができないとも言える。整頓はされているのだが。

 自覚があるクロは、マシロの言い分を認めて、焼き物作りは諦めた。


 ・・・やっぱり夫婦っぽいよなあ。


 ダンゾウはそう思いながらも、言えばまた2人は訂正するだろうからと口には出さなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ