討伐後のエピローグ
マモン討伐を終えた斗真は、ギルド内でシルフィと自分の力について話をする。
しかしそこにある来訪者が────?
「んで、ユニークスキルって何?」
マモンとの激戦から二日。
壁の修復も始まり、あたりの人々の活気も、ギルド内の喧騒も少しづつだが戻り始めていた。
討伐の次の日はアルス様のところにお金を返しに行き、その後アルス様の「泊まっていきな」の言葉に甘え、一日だけ泊まらせてもらった。ほとんど寝てたけど。
「ユニークスキルってのはね……いわゆる『異能力』みたいなものだよ」
ギルド内で注文したグリドル(というよりただのパンケーキ)を食べながらシルフィが答える。
ちなみにマモン戦でお金はガッポガッポだ。
「と言うと?」
「魔法みたいに魔力の消費がなくて、いくらでも使えるって利点があるよ……んーっ、美味しい!」
マモン戦で解放できた『ユニークスキル』は、それはもう凄まじい力を発揮してくれた。
「へー……すげぇんだな」
「そーだよ」
ハムハムと食っていくシルフィは逆に質問してきた。
「斗真のユニークスキルって……なに?」
「ん?あぁ……顕現系スキル『神器の継承者』って名前らしい。俺の知る神話の神具や神器を召喚するスキルだよ」
例えばエクスカリバー。
アーサー王伝説でお馴染みの剣。
数々の勝利と栄光を約束した剣であり、数々のゲームにもその名が使われていることから有名な神器である。
「そーいえばエクスカリバーとかケリュケイオン?出してたもんね」
エクスカリバーやケリュケイオンの他にも、おそらくクーフーリンの持つゲイ・ボルグや、オーディンが持つグングニールも呼び出すことが可能である。
神話が好きだった俺にとっては嬉しいことこの上ない。俺TUEEEEってしたい。
パクパクとグリドルを食べるシルフィはその美味しさに顔を綻ばせる。
……すげぇ美味そうに食うなこいつ。一切れ貰おうかな。
そんなことを考えていると、何やらギルド内がいつもの喧騒とは違うどよめきで覆われていた。
「……ねぇそこのユニークスキル使い?」
「ん?」
ユニークスキルを使うのはギルド内で一人、俺だけらしいから俺のことだろうか。
「なんだ……?あぁ!あの時の魔道士!!」
「の中でも最高位、『魔導師』よ」
魔導師。
マモン戦で結構コテンパンにやられてた奴。
「……と?えぇと……」
魔導師の隣にさらに見覚えのある少女が立っていた。
「……『守護者』」
「そう!守護者だ」
守護者。
魔導師同様コテンパンに以下割愛。
「んで、お二人さんが何の要件で?」
当然の質問をする斗真。
てか……よくよく見ると二人ともすげぇ可愛い……この世界って美少女率高くねぇか?
オホン、と咳払いを一つすると二人はこう言った。
「私たちとパーティを組んでもらえないかしら」
「組んで……下さい……!」
「はぁ?」
パーティ……だと?
こんな可愛い美少女二人とパーティに?
パーティだけに夜のパー……
「脳内セクハラしないの!」
チョップされました。少し痛いです、まる。
少し痛む頭を抑えながら
「ててて……で?なんで俺と組みたいの?」
と問うと
「「あなたが強いから」」
と返ってきた。
「いや二人同時にかよ」
俺が強すぎる故にパーティにーって……
「しかも弟子入りみたいなこと言うんだな」
「私たちは」
俺の言葉を退けるみたいに魔導師が言う。
「あなたが倒したマモンに何も出来なかった。それも解放状態になる前にすらよ」
それが堪らなく悔しい。
魔導師の表情からはそれが読み取れた。
「強く……なりたい……の……!!」
少し会話が苦手なのか、守護者が途切れ途切れに言うが、その表情は確かなものだった。
「……シルフィ」
「イイんじゃない?」
相変わらず適当だなぁ。まぁいいか。
「分かった、パーティを組もう」
「あ、ありがと」
「たーだーし!」
お礼の言葉を述べさせる前に言葉を遮る。
「泊まりとかの部屋は基本全員同室な」
「な、なぜ!?」
「経費削減」
というのは建前。一緒の部屋で過ごしたいだけですはい。
「ううう……まぁ良いわ!何もしないでよね!」
「多分しないけどな」
「……それ男としてどうなのよ」
呆れ顔になる魔導師。なにかに期待してたのだろうか。
「ん?期待してたの?」
「そそそそそんなことは置いといて!……自己紹介がまだだったわよね?」
「そんなこと……(´・ω・`)」
そういえばしてなかったな。
まだ少し赤い顔で自己紹介始める。
「私はステラ・アストルテ。魔導師の勲章を持つ魔道士よ」
気品と自信のある声だった。
不思議なことに周りがさらに騒がしくなる。みな口々に魔導師────ステラのことを話しているようだ。
「……サーシャ・トラバント……守護者の勲章を持ってる……」
やはり途切れ途切れに話す守護者────サーシャは恥ずかしいのか、少し顔が赤い。
しかし、赤いだけで表情の変化はあまり見られなかった。
「ステラとサーシャな。りょーかい」
コクンと頷く二人。
「……あなたの……名前は……?」
「あ、俺?」
俺に話を振られて少し驚いた。
「さ、先にシルフィ言うか?なんか話してただろ?」
咄嗟にシルフィに振ってしまった。チキンである。
「私?もうステラとサーシャとは友達だよ?」
「え?そなの!?」
知らなかった。既に知り合いだったとは……
「まぁね。一日あれば友達になるよー」
コミュ力高くねぇかシルフィ様。
俺は咳払いを一つついてステラとサーシャの方を向く。
「あー、俺は西尾斗真だ。一応勲章無しの冒険者。一昨日のハス……マモンとの戦いでレベル結構上がったからなぁ……」
ニシオトウマ?と不思議そうな顔をする二人。
そんな二人をよそに、俺は冒険者カードを出してレベルを確認する。
「あ、十一になってる。レベル十一」
この世界に来た時に既に言語翻訳はシルフィの力で出来ている。にしても少し変な文字だけどな。
「なぁ……レベルアップの仕方ってどんな感じなんだ?」
「え?知らなかったの!?」
ステラが驚きの声を上げ、サーシャも少しだが表情の変化も見られた。キョトンとして可愛い。
「LAって呼ばれてることをすると一番上がりやすいわ。起源は知らないけど」
「LA……ラストアタックか」
モンスター討伐の際の最後の攻撃のことをLA、ラストアタックと呼ばれている。もちろんゲーム用語でもある。
ラストアタックではレアアイテムが落ちることが多いからそのアイテムのことをLAB、ラストアタックボーナスと呼ぶ。
「LA以外の人はその戦闘に関わる冒険者の貢献度によるわ」
「ふぅん……レイド的なあれか」
レアアイテムは落ちなかったものの、有力な情報は掴んだ。それはそれで嬉しいことだろう。
「まぁ何はともあれ!」
黙っていたシルフィが手を叩き、笑顔で俺たちのパーティに迎え入れる。
「今からこの四人がパーティね!改めてマモン討伐の祝杯でもあげようよ!」
「お、良いなそれ」
「構わないわよ?」
「……私……も」
「じゃぁ決まりね!すいませーん!エール二つとジュース二つ!それと……」
俺はシルフィが注文するのを聞きながら苦笑いした。
最初は少し高圧的だったシルフィが、ここまで打ち解けてくれている。それが嬉しい。
喧騒はいつの間にかいつもの通りに戻っていた。
「そういえばあなたのユニークスキル……どんな効果なのですか?」
「ん?あぁ、それは……」
ステラの質問に俺は返答する。
その返答をサーシャとともに聞くステラ。
料理を心待ちにするシルフィ。
四人はそれぞれの思惑と、願いと、力を持って集まった。
────これから起こる数々の困難に気づくのはまだ先のお話。
────二日前、マモン討伐完了後。
遠く離れていた一つのカラクリ人形がいた。
見た目は幼女。
しかし、カラクリと呼ぶには精密すぎる……現代技術を遥かに凌ぐ機会部を携えていた。
機械の目を向け、ただ見ていた。
斗真のことを。
「……地点『アルファティアB』。目標、『ニシオトウマ』」
抑揚のない声で呟くように発せられた声を
────誰も聞いていない。
八話目です!
七話との同時更新になりますが、こちらも大変でしたぁ……。
よくよく見ると、いつもより文字数多いんですもんくまモン。
次回は……展開が読めた人ならわかると思います!
次回『機皇』
お楽しみあれ!