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少し寂しいエピローグ(2)

 計と灯花、そして祈がこの世界に来た目的とは――

「つーか本題だ……お前らはアルス様に呼ばれ、俺達と共闘、事件収束な訳だがこれからどうするんだよ。それとお前らの能力関連把握してない」

 一連のことで若干疲れを見せながら俺はそう投げかけた。

「共闘、と言うより殆ど僕らの功績で何とかなったものだと思うのだが」

「くっ……」

 計の言葉にステラが隣で呻く。

 やはり、ストレートに弱いと言われ、その事実を突きつけられ、心に来ている。

「計、煽り入れるな。結果が良いんだからとやかく言うもんじゃない」

 苦笑いしながら斗真は計にそう注意した。

 計は再び肩を竦めることで「分かりました」と表現した。

 対してステラは、その言葉が正しいということを身をもって知っているため、暗い顔をしたまま俯いていた。

「さて、能力とこれからについてだったか」

「あぁ」

 計が真面目な顔に戻った。

「まず俺は魔道士(ウィザード)だ。そこの魔導師(シェヘラザード)が現状最高位という話を聞いたが、僕はさしずめ向こうの世界で言う『知恵の神(ソロモン)』と言ったところか」

 こちらの世界でソロモンが意味するものは一体何なのかは知らないが、少なくとも魔術関連では随一であることに間違いはないはずだ。知恵の神と称されることもあるほどたからだ。

「僕が使える魔法は、現時点で存在する全ての魔法。応用魔法まで使えるが、あまり使おうとは思わないな。今のところは初期魔法で十分だ」

 元の世界にいたメンツと女神二柱以外が驚きを表す。

 計は大元を強くして使用する、という性格だ。

 つまり『いかに強化して使い物にするか』ということを念頭に置いているはずだ。そのため、初魔法に強化魔法の重ねがけや、純粋に魔法力の底上げによる強化等して使っていくのだろう。

「これからについてだが……これは能力紹介が終わった後にしよう」

 ということは三人同じということか、と考察する。

 次は私ー!と騒がしいアホが元気よく宣言する。

「私は魔法は一切使えません(・・・・・・・)!」

 最初から薄々気付いてたけどはい来ました脳筋パターン!うちの姉貴勉強全くできない赤点ウーマンだったわー!

「じゃ、じゃぁあの数の魔獣と素手でやり合ってたの!?」

「うん!」

「「「!?」」」

 声が大きいため、周りにも聞こえていた。

 多くの冒険者や役員が驚愕した────無論、灯花の鬼神っぷりを見た冒険者は冷や汗をかくだけで全く動じてないが。

「こうね、なんかうーん!ってしたら大きい剣出てきたから振り回した!」

 振り回すな危ない。

 とツッコミを入れなければと身構えていたら、流石にそこは分かっているらしく、取り出すことはなかった。

 恐らく灯花の固有能力だろう。俺の神器の継承者(イリキヴィアス)と似たようなものだと思われる。

 俺の場合、神話の武器をトレースした物を召喚しているため、種類が豊富だが、灯花の場合は大剣のみなのかもしれない。

 灯花は昔から剣道、薙刀、古剣術……近接武器の中でも長物の扱いに長けており、元にいた世界では全く勝てなかった。

 その上、体格に見合わない極端に高い運動能力を持っており、スポーツでも勝てたことはない。

 つまり、身体能力に全振りしたチーターであるということだ。

 ザ、脳筋。ソシャゲで赤コマンドで殴る的なあれだろうな。パワーこそすべて、なぎ倒してくれるわぁ!的な。

 姉貴の怖いところはそれが出来るところである。流石にもうガチの喧嘩は怖くてできません。

「つ、次は私でいいの……かな?」

 先程睨まれたせいか、少しオドオドしながら祈が質問する。

 俺はそれに頷くことで返事をした。

「私の能力は『召喚者(サモナー)』です。擬似的な精霊として、私たちがいた世界の神様を顕現させています」

 天照大御神を自分に憑依させることを戦闘中にしていたはずだ。

 精霊を動かすよりも自分が動いた方がいい時もあるため、その能力は文字通り神がかる力ということではないか。

 霧龍皇の時に天照大御神の太陽の加護を受け、毒を無効化していた。汎用性も高く、傷の再生まで出来ると思う……と言う祈。

「なんで思うなの?」

 流石に自重する気になったのか、嫉妬の表情を隠し、そう質問するステラ。

 祈は、少し表情が柔らかくなったステラにホットしながら返答する。

「使い慣れてないから、ですかね。まだ全部の力を貸してもらっていない気がするんです」

 これ以上の力を持っているのか、俺超えるんじゃね?

 そう思わざるをえないくらいの能力だと思う。

「三人の能力は把握した、なら次だよな?」

「そうだな」

 計が眼鏡のズレを直す。その時、眼鏡のレンズが光を反射して光った。

「俺たちは今後お前達と行動を共にする予定だ」

「……戦力強化、ってわけか?」

「あぁ」

 自分たちが弱いのか、と反論しかけたシルフィを手で制し、ある可能性を指摘する。


「思ったより魔王軍の動きが早かった、ってどこか?」


 息を呑む一同。喧騒は止んでいないため、聞かれてはいないはずだ。

 もっとも、認識阻害の魔法をステラが展開している。並の冒険者ではまず気付かない。

「まぁ、そんなところだ。話が早いな」

「なんとなく察しついてたよ」

 フッ、と笑う両者。

「ちょ、ちょっと!?予定ならまだ数年は……」

「それが狂ったのが今の現状だ」

 食いかかるシルフィを一蹴する計。

 それにしても早まるのはこちらとしても辛い部分がある。

 現状、英雄と成る者(フェイクオーバー)未完成(・・・)だ。

 本来であれば全身に顕現してもおかしくはないのだ。

 しかし、霧龍皇との戦いの時では右手のみ……まだ完全には使いこなせていない。

 魔王軍との戦いが熾烈を極めると考えると、使いこなせていないのは弱点になるだろう。

 その前に自軍強化とは嬉しいこと────


「あぁ、僕達が加わることが強化ではない。斗真達が強くなるための手段に手を貸す程度だ」


 ……えぇ?

「いやどういうことだよ」

「まぁ、それはこれから先をお楽しみにというやつさ」

 悪そうな笑みを浮かべる計。何を企んでやがる……。


 何がともあれ、計と灯花、そして祈が一時的に仲間になった……はず。

 俺の頭の中には少し、それとは別のことが流れていた。

 霧龍皇のことだ。

 悲哀の聲。人の悲しみと哀しみから生まれた幻皇類。

 幻皇類の中でも、人というものを理解している幻皇類。

 霧龍皇が身体の中に入った時に痛感していた。


 カナシミは、消えない。


 いつかまた霧龍皇は現れる……何百年、何千年と先のことだろうが。

 もう一度会うとすれば、それは違う霧龍皇。

 最後に声を合わせて同じことを伝えあったあいつとは違う。

 人に害なす化け物だと分かっているが、しかし俺は少し寂しくなっているのも現実だ。

 もし、霧龍皇が人だったら。

 あいつみたいなやつは、ちゃんとした人間としてもう一度会ってみたい。

 斗真はそう、思っていた。

 その時、


 ―――また、どこかで。


 そう聞こえた気がして、斗真は少し、誰にも気付かれない―――否、たった一人ここにいない彼に分かるように、微笑んだ。

 お久しぶりです☆KAMIYATERUです☆

 はい、遅くなりまして本当に申し訳ないです。

 いやぁ最近忙しくてですねー……え?それでも書け?ごもっともです。

 それはさておき次話はサブエピソード的なサムシングです!


次回『王都へ行く前に 1』

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