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秘めし能力

対『撃墜のマモン』。

煽りに煽ってとうとうブチ切れ。

そんな相手に斗真がすることとは?

勲章持ち二人はどうするのか?

「斗真何考えてるよっ!私を置いていくなんて!」

 置いてかれたシルフィは、先に行った斗真に向けての文句をブツブツと言いながら走っていた。

「だいたい王都からかなり遠いこの街……なんで広いのよー!!」

 無理もない……実を言うとこの始まりの街であるアルファティアは王都の四分の一ほどの大きさの特異的な街なのだから。

 王都の広さは直径二千キロメートルの円形。約三百十四万平方キロメートルだ。

 広いのも当然、斗真より格段(・・)に遅いシルフィが未だに追いついかないどころか門までまだある。

 逃げる人に逆らっているのだからさらに遅くなる。

「ほんと……なんなのよ一体」

 少し舌打ちして文句を言う。

 その時

 ────シルフィアっ!聞こえるかい!?

 頭の中に直接聞こえるのは……アルスの声。

 精神感応、つまりテレパシーだ。

「うん、聞こえてる!」

 念話で返そうとしたが、スキルを習得しなければ返せないらしい。

 それにアルスの方から雑音が聞こえる。魔法器具を用いた念話だろうか。

 ────斗真はそこにいるか!?

「ううん、先に行った!」

 アルスの舌打ちが聞こえる。

 ────急いで彼に言って欲しいことがある!

 かなりの焦りを感じた。余程のことなのだろう。

「なに!?」

 こちらもこちらで早く早くと焦っていた。

 ────彼はステータスこそ高いがスキルが何一つ無い(・・・・・・・・・)

 確かにそうだ。セインクから引用したのは……能力値のみ。スキルは引用出来なかったのだ。

 ────だから!こう伝えてくれ!

 シルフィはアルスの言葉に驚愕し、これが唯一の勝利方法となると直感した。


 さて、俺は何を口走ったのだろうか。

 西門到着→誰か殺されかけてる→助けた→注意引くため煽る→幹部さんおこだお♡

 ……もしかして……俺そーとーにやっちゃった?

 精一杯かっこつけるために、絵に書いたような不敵な笑みを浮かべたはいい。それはいい。

 ……解放状態ってなによ。セインクでもそんなのなかったよ?え?なに?覚醒してんの?それとも封印解いたの?なんなの?

 そして地面を蹴り飛ばしてお互いの距離を詰めているのが今である。

 蹴り出してからコンマ二秒。十五メートルほど離れていた距離も詰まっていく。

(どーすんだよこれえええええええ!?)

 グングン迫るマモンに対し考えを巡らせる。

 マモンが右手を構え、後ろに引く。

 ────!!

 セインクで見たことのある攻撃モーション。

 とっさに体を捻り直線上から脱する。

 突き出された拳から衝撃波が発生した。

 射程は五メートル程だろうか。

(間違いない……今の……)

 射程は気にしなくてもいい。

 ────直線型ソニックウェーブのモーション

 その攻撃の直線上にいなければ良いのだから。

 仮に、マモンが中ボスだとしよう。

 セインクでは上級モンスターになるにつれて、このソニックウェーブの連続回数が設定されている。

 セインクでの中ボスだと、このソニックウェーブの連続回数は……

「二回だろ!」

 避けて体勢が悪い中、無理やり体を動かし、二発目の発生源────左腕の肘に掌底を打ち込む。

「むう!?」

 ミシ……ゴリィッ

 と骨の軋む音が俺にまで聞こえ、肘の関節が音を立てて外れた。

(今ので腕動かなくなった……ってなればいいが)

 セインクと似ていても、やはりどこか違う。

 そんなこの世界でどこまで通用するか。

 マモンは一旦距離を取り、左肘に触れる。肘の関節が外れ、左腕はだらんと垂れ下がっていた。

 特に表情に変化は無かった……が。

「なかなかやるな。しかし、だ」

 グチ……ミチ……


「この程度屁でもないわ」


 数秒で元に戻る左腕を見て小さく舌打ちした。

(流石は幹部ってところか。関節に対する攻撃はダメ薄そうだな)

 ダメージが薄いことに苛立ちながらも打開策を探す。

 掌底をして、マモンの身体に触れた瞬間気付いた。

 ────硬質化する

 力を凝縮すると言っていたが、その影響だろうか。最初に触れた時より数倍硬い感触がした。

 よって、打撃系の効果が薄い。さらにいえば、よほどの切れ味がない限り斬撃も効果が薄いだろう。

 先程の魔法使いの攻撃もあまり効いてないとなると魔法耐性もあるだろう

 さて……どうしたものか……


 ────何者なの?

 今、僅かに回復した魔力で、守護者(アテナ)の傷を癒している。加勢したいという彼女の望みのためだ。

 激しく鳴っている打撃音。

 確実にマモンの攻撃を捌き、さらには反撃まで繰り出し、優勢に見える。

 自分は魔力が人一倍あった。魔術師の都「アーカイブ」の名家の一人娘として当然のようなことと思っていた。

 使える魔法も強大魔法が使えることにより、今までクエストは失敗したことがなかった。

 それなのに。

 それなのに何故なのだ。

 確かに自分は後衛の魔道士……しかし、だ。

 魔道士の最高勲章である「魔導師(シェヘラザード)」を授与された自分が。

 私が勝てない相手にこうも善戦出来る?

 再度考える────何者か、と。

 守護者に言った言葉……チーター。

 意味は知らない。

 しかし、それが指すことはなんとなく理解出来た。

 強さ、ではないのか。

 ……いや、訂正しよう。

 強過ぎる、ことではないだろうか。

 強大な才能のことなのだろうか。

 どうにせよ目の前の彼が何者か、何故そんなに強いのかは分からない。

 ただ分かること、それは

 ────私より強い

 その確信していることだけ。

「魔導師……もう……いい……っ」

 まだ傷が塞ぎ切れてないにも関わらず、守護者が立ち上がろうとする。

 とても弱々しく立ち上がる彼女は今にも倒れそうで見るに耐えない。

「守護者!まだ傷が……」

「いいっ……彼だけに……辛いことは……させない……っ」

 ふらふらとしながらも立つ彼女は、血だらけの身体で真っ直ぐと激戦を繰り広げる場所────彼こと斗真を見る。

「そんな身体で行っても邪魔になるだけよ!ここにいて!傷を塞ぎきってからでも遅くは……」

 そう言いかけたところで私の言葉は遮られた。


「いいって言ってる!彼が……闘っている……彼はレベル一でも強い……でもっ……経験・・が足りない……!」


 確かにそうだ。レベル一とする場合、冒険者に成り立て。つまり

 実戦経験が全く無い(・・・・・・・・・)のではないのか?

 今こそ避けてはいるがそれも直感のみではないのか?

 そう考えると……負ける可能性があるのではないだろうか?

 ────まずい

 そう考えた途端彼が負けることしか思わなくなった。

 しかし

「……でも、解放前のマモンでさえ何も出来なかった私達が行ったところで同じよ」

 私達は……無力なのよ。

 私は守護者にそう言った。


「っ!埒が明かねぇっ!」

 何度掌底を繰り出しただろうか。

 幾度となく繰り出す攻撃は、当たりはするものの効果が薄い。

 ダメージが入らない。

「……それはこっちのセリフだ!」

 マモンは一旦距離を取り、手を前に出し詠唱(・・)する。

「……封じし魔界剣、今全てを闇に葬り去らん」

 まずい、と思ったその時には遅かった。

 その詠唱句によりマモン掌からゆっくりと、大人の身体ほどの長さの大剣が出現した。

「俺にこれを出させるとはな……なかなかやるな」

 柄をつかみ、一度空を薙ぐ。

 ギラリと輝くそれはかなりの切れ味を持つものと思わせた。

「こっち素手だぞ?ず、ずるくねぇか!?」

「知らん」

 こちらの抗議を一蹴し、構える。

 その時には既に地面を蹴っていた。

 瞬間移動かの如く移動したマモン。

「ふぬぁぁっ!!」

 そして左下からの切り上げ。

「っ!?」

 咄嗟に右方向に地面を蹴り、回避する。

 制服に少し掠ったのか、袖に切り口が見られた。

(当たったら死ぬんじゃねーのか!?)

 切り上げから身体でを回転させ、遠心力を乗せた横薙ぎ。

 身体を落とし回避する。

 この時斗真は確信していた。剣を出した途端にさらに強くなっている、と。

 先程の移動が────見えなかった。

 高ステータスである斗真にも見えなかった。

 あの大剣を持ってあの移動。

 ありえない。そう思った。

 セインクでは防ぐ魔法など多数存在した。

 しかし、今の斗真は────レベル一の新参者。

 魔法での対処は絶望的なのだ。

 魔道士になったはずのシルフィならば、多少は防ぐ魔法を使えるだろう。

 だが斗真には出来ないのだ。

(どーすりゃいいんだよ!こんなの無理ゲーってレベルじゃないだろ!)


 ────もし、持つだけでステータスが飛躍的に上昇するならば。そんな武器があるとするならば。

 今すぐ手に入れたいものだ。

 この状況なら特に────。


「斗真っ!!」

 斗真を呼ぶ女性の声────シルフィだ。

「シルフィ!?」

 大きく後ろに飛び、声の方向、何も出来なくただ見るだけの他の冒険者の集団を見る。

 その一番前にシルフィはいた。

「カードを使って!!」

 カード?冒険者カードのことだろうか。

 そんな考えの間が命取りになる。

「っ!」

 いつの間に距離を詰めたのか、マモンが大剣を振り下ろす。

 地面を転がってそれを回避する。

(カード見る余裕なんてねーよ!!)

 舌打ちをしてマモンの攻撃を避け続ける。

 ────何か……少しでも間があれば……。

 そこで唯一間のできそうなことがあるのとに気付いた。

「おい!そこの勲章持ち二人!」

 ────守護者と魔導師だ。


「十秒でいい!頼む!」


 突然のトウマと呼ばれた彼の言葉にビクッとした。

 そして彼が今して欲しいことを悟った。

 ────時間稼ぎだ。

「……あんたの防護魔法と私の防護魔法と強化魔法……重ねがけできる?」

 私は……魔導師として少し貶された気がした。

 誇り高き魔導師(シェヘラザード)である私が時間稼ぎですって?舐めないで欲しいわ。

 先程まで守護者に『助けに行くな』と言ったはずなのに、と苦笑する。

「……でき……る」

「そう?なら……行くわよ!」

 スッと立ち上がり、走り出す。

 どうにかしてみようと心に決めて。


 意図は伝わったようだ。

 わずかな隙に、鋭くマモンの鳩尾に二度目の掌底を繰り出し、さらに回転も加え、吹き飛ばす。

 そして地面を蹴って後ろに大きく下がる。

 後ろからは勲章持ち二人が前に出る。

 お互いがすれ違うその時

「頼んだぜ?」

 と声を掛け

「任された」

「がん……ばる」

 との返事を貰った。

 時間は十秒。それで充分なはずだ。

 着地と同時にカードを取り出す。


 そこに────光る一部分があることに気付いた。

第六話目ですね。

書きたかった部分の入口……燃えてきましたよ!!

さらに強くなってしまった敵に対して斗真は何が出来るのでしょうか?


次回「斗真の力」


次回も読んでもらえると幸いです!

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