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真価発揮

斗真が発現した、ユニークスキルの真価とは――――

一方、ステラとシルフィ、サーシャの前に誰かが現れて―――?

彼の右手が輝く。

彼の力が解放される。

それまでも強く、なおかつ唯一無二のユニークスキル……その真価の片鱗が現出する。

神器の継承者イリキヴィアス……いや、英雄と成るフェイクオーバー!!」

 その力は、斗真のいた世界の神々、英雄が持っていたとされる武器―――神器を疑似的に召喚する力。

 そう、それは本物ではない。そっくりな偽物。

 今までは―――だが。

 これからは違う。

 斗真自身が英雄になるのだ。

「太陽を司るケルトの神よ、我にその力、貸し給う」

 斗真のユニークスキルはいつも斗真の利き手である右の手のひらに魔力を集中させ、顕現させている。

 しかし、今度は腕全体に集中していた。

「今回初めて使うから……ちょいと中途半端になっているが、まぁ……練習相手にでもなってくれよ」

 にやりと笑う斗真。その笑みは変わらず勝利を確信していた。

 魔力が集中し、その輝きが収まった時……斗真の右手には明確に違うものがあった。

「なんだ……その手」

 斗真の右手には、金色の小手がはめられていた。

「太陽を司るケルトの神……『長腕のルー』か」

 ルーとは、ケルト神話に登場するダーナ神族の一人、「百芸に通じたサウィルダーナハ神」と呼ばれたケルトの太陽神である。

 牛枷で繋がれた多くの牛で動かすほどの敷石を、ケルトの霊感の神オグマに投げ返したばかりではなく、その敷石で破損した館の破片すら投げ返し、元通りにしたという逸話が存在する。それほど芸達者であった神だ。

 そして―――


「そしてこれが―――名前のない、太陽神ルーの魔槍だ」


 槍が、金色の槍が斗真の手に現れる。

「ふざ……けるな!!」

 ずっとしびれを切らしていた霧龍皇ミーシルが、動く。

 霧龍皇の身体から大量の毒霧が噴出する。

 概念は時に現実を侵食する―――それを体現していたが、これは規模ではなくその密度が段違いだった。

 いのりに向けられたあの毒霧よりもより濃いその霧の奔流は……

「私も、神話体系は違えようとも太陽神アマテラスの加護を受けている……」

 祈の袖がなびく。

「貴方に二柱分の光の加護、突破できる?」

 その霧はいとも簡単に―――霧散する。

「そんな馬鹿な……有り得ない!!」

 ミーシルはさらに毒霧を量産、霧の奔流を斗真と祈に放つが、アマテラスの加護を受けている祈の光の結界に打ち払われる。

 祈の隣にいる斗真はここで動き出す。

 腰だめに槍を構え、弾かれた様に前に突き進む。狙うはミーシルの身体の中心。

 概念である幻皇類ミーシルには実体がない。そのため、時間稼ぎにしかならないが、今はそれを実行した。

 その対抗に、ミーシルはさらに毒の霧を斗真に集中させ打ち出すが、祈の力で斗真にも結界が張られていた。

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 空間が歪んだかのように黒い霧の中から、ミーシルは何かを掴む。

 それを察してか、斗真も動き方を変える。

 中心部を貫く狙いだったが、槍を横にし、薙ぎ払う。

「―――!!」

 その槍を防いだのは……剣だった。

 毒霧の塊から出てきたそれは、黒く禍々しい形をしていた。

「僕の魔剣……ザナディだ。僕の、僕の毒を色濃く吸収している……触れるどころじゃない、触れなくともお前たちは僕の刃の範囲に入っているのさ」

 今度は自信ありげな表情になるミーシルだったが、しかし斗真と祈の表情は依然として勝利を確信していた。

 と、いうより「で?だから?」というようななんとも腹立たしい表情をしていた。

 ミーシルはその表情に憤慨し、斗真の槍を弾く。

「こいつを出させたんだ、自分の行いを悔やんで―――死ね」

 ザナディを振りかぶり、斬り下げる。

 斗真はそれを切っ先で軌道を変え、やり過ごす。

 剣と槍、二つの世界の違う魔剣がぶつかり合うなか、ステラたちにはある変化が訪れていた。

「げほっ、げほっ」

「身体が……ぐっ」

「どうなってやがる……っ」

 ステラたちが率いる前方陣営の中でまだ小さいが混乱が起きていた。

「何が起こって……っ!?」

 それは、ステラにも変調をきたした。

 身体に急な寒気、怠さ、それからか全身の震え。

 意識にも影響するそれは間違いなく―――毒。

(ミーシルの言っていた範囲……こっちにまで!?)

 斗真たちからおよそ百メートル。しかしそれをものともしないような毒の影響力。

 ステラと斗真の中間にいるサーシャにも影響は出ていた。

(私の対毒スキルも……貫通している……一般人にこれが蔓延すれば……っ)

 サーシャの戦闘時の役割は基本的に盾役タンカーである。タンカーは最前線で戦うためにどの冒険者でも毒や麻痺、催眠など異常状態に対する対抗スキルを習得している。守護者アテナの勲章を持っているサーシャももちろん習得している。それどころか、並みのタンカーを上回る耐性を持っている。

 いくら発生源の近くとはいえ、そのサーシャが毒の影響を受けているとなると、耐性を持たない一般市民では死に至る可能性が高い。

 チラッとステラたちを見るが、結界内の冒険者にも個人差はあるが影響を受けている冒険者がいる。

 サーシャは思わず歯噛みした。自分の無力さに。

 本来ならば、あの少女がいるところに自分がいるはずだったのに、と。

 そんなサーシャに

「ま、気にしないことだよっ!祈ちゃんは特別、そしてこの世界では明らかにチートスキル持ちだしね」

 幼女が声をかけてきた。

「なん……で、ここ……に……っ」

 離れてと、毒の影響か、唇の動きすら悪くなっている。

 こんな小さな子だったらなおさら―――と、考えた時、ふいに体が軽くなった。

「こ、れは……」

 体に活力がにじみ出てくる。毒の影響が消えただけではなく、さらに強化されたような感覚だった。

「んー!!かっちゃんも来たみたいだねー!!」

「か、かっちゃん?」

 動きやすそうな赤色が主体の軽装に身を包む幼女はニコッと笑った。



「身体が……?」

「ふぅ……間に合ったようだな」

 ステラが急に戻った体調に驚いていたとき、聞き覚えがある声がした。

 バッと振り返ると、そこには青と白主体のフード付きのローブを身にまとった、身長が高めの青年が立っていた。

 フードで顔は詳しく見えないが、青年はまるで誰かを懐かしむように、ふっと笑った。

「貴方は……」

「君が結界を張った魔導士シェヘラザードってやつか?」

 こちらには視線を向けず、激戦を繰り広げる斗真たちのほうをじっと見つめながら青年は聞いてきた。

「え、えぇ」

「御大層な結界だが、まだ甘かったな」

 ぽかんと口を開けるステラ。

 近くにいたシルフィは、また何か気づいたような顔をして、あちゃーと苦い顔をした。

 その表情の変化にも気づかず、ステラは食って掛かる。

「どういうことよ……!!」

 強く睨むステラを見て青年は明らかに「しまった……」と言わんばかりにため息をつくと、ようやくステラのほうを向いた。

「言葉通りだ。甘い」

「それを説明しろと―――」

「結界継続中だぞ。落ち着け」

 ステラが声を荒げかけたとき、僅かだが結界が軋んだ。

 魔法は、発動者の精神に依存する。

 精神を強く持つと、より強固なものになり、焦燥や激情や不安などはその魔法の効力が弱まってしまう。

 特に結界などの範囲系防護魔法となるとその継続性が求められるため、発動者の精神が負に染まりだすと先ほどのように結界が軋むどころか崩壊の可能性もある。

 そのため、魔法を発動した者は戦場で誰よりも冷静でいなくてはならない。

 基礎中の基礎を短く言われ、黙り込むステラ。

 一瞬だが、軋み、崩壊しかけた箇所を青年が補強し、結界を保たせていたことに気づいていた。

 この時点でステラは確信していた。

 ―――魔法に関して、自分がこの青年より実力が圧倒的に下だ、と。

 青年は黙り込んだステラを見て再びため息をついた。

「君は気負いすぎなんだ。斗真を救いたいばかりに、視野が狭まっている。もう少し肩の力を抜いたらどうだ?」

 まぎれもなくそれは正論だった。

 ステラは焦っていたのだ。斗真が連れ去られ、相手の居場所は分からない、どう攻略すれば助かるか分からない、結界が崩れそうな時にどんな対応をすればいいのか分からない。

 と、一人焦っていたのだ。

 それをあとから来た青年に指摘されたことは、天才魔道士と謳われたステラのプライドはズタズタだった。

「まぁ……なんだ」

 急に言葉を濁しながら頭を掻く青年。

「君はそういった無駄を省けば、さらに強くなれるはずだ。まだ、発展途上といったところか」

 無駄を省けば―――ん?発展途上?

 若干の別のところを見ていた青年の目線に顔を赤くして

「どこ見て言ってるのよ!!この変態!!」

 と叫びそうになったが、先ほど冷静になれと言われたばかりであるがために、口を金魚のようにパクパクさせるだけに終わり、悔しそうな顔を向けることとなった。

「しっかしまぁ……斗真は何攻めこまないのだ?」

「どういうこと?」

 顔を赤くしたままのステラに代わり、シルフィが青年に問う。

「あいつのあの顔、あれは何か機会を探っている顔だ。聞けばあの幻皇類……ミーシルといったか、斗真ならすぐに倒せるはずだが」

「実体がないんだよ?どうやって」

「知らないのか―――あぁそうか、認知されていないものだったか」

「?」

「まぁ、僕には知覚スキルがあるから……知っているのは斗真と僕くらいかもしれないな」

「だからなんなのよそれは」

 若干いら立ちが増した声でステラが青年に聞く。

 眼鏡をかけているのだろうか、眼鏡を直す仕草をすると、魔法を発動する。

「指揮系統魔法『全体知覚』」

 指揮系統魔法とは、離れたところにいる味方と意思疎通するための念話系統魔法の派生版である。

 指揮系統となると高い難易度と魔力量を必要とするが、広範囲の味方に同時に、タイムラグなく伝えることができる。

 それを軽くこなす青年の実力はその場にいた全員が思い知った。

「というかこれって―――」

「ようやく分かったようだな」

 再び眼鏡の位置を修正する青年。

「……さて、どうするのか、斗真」

「その前に……貴方、何者よ」


 同時にサーシャも幼女に問う。

「貴女……なに、もの?」


 二人の異邦者はこう答える。

 片や満面の笑みで。

「決まっているじゃない!」

片やにやりと自信ありげな笑みで。

「決まっているだろう?」


「「この世界を救うチーターだよ」」


 と―――。


年明け前に更新できましたね()

まぁいいでしょう!!投稿する分には問題ありません!!

さてさて今回も内容に触れていきましょうか!

少女 (名前は割愛)は以前より出したいと思っていたので前々回くらいから登場させることができて本当に良かったです!!

他二名も本当の話、ステラたちよりも先に考えていたりするんですよ。

まぁそんなこんなで次回、霧龍皇ミーシルとの決着です!!

ぜひ見てくださいね!!


次回「勝利と決別」

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