表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/62

心残り

ベルフェゴールは何を思うのか────

ステラの魔法の招待、それは……?

 私が本当に怖いと思ったのは死に際だった。

 姉が逝き、悲しみが支配していた。

 付け加えて、魔王軍に捕まり、延命魔法の素材とされ数々の魔法をこの身に受けた。

 結果、傷の自動修復が瞬間レベルになり、細胞劣化の速度が遅くなっただけの、いわゆる『不死もどき』という身体になった。

 ここまで来て私は死んでいるのか。

 まだ、死んでいないと思うだろうか?

 私は……思えなかった。

 魔王軍に、いや姉が逝ってしまった時にはもう私の中の『私』は死んでしまったのだ。

 絶望に浸り、人として落ちぶれていった。


 そんな私は魔王軍幹部、堕落の『ベルフェゴール』の依代にはうってつけだった。

 魔王軍基地の深域まで連れてかれ、身体を────人間であった事さえ全て変わってしまった。

 記憶が────


 「行くわよ!」

 ステラが更に魔力を込め、術式を完成させる。

 「天地創造、この世の始まり」

 紡ぐ言葉は────『零』の言葉。

 「この世界は祝福に満たされる」

 幸せになって欲しい。

 「これはそのための創造の波動」

 そう願った女神の言葉。

 「終わりを見据えるこの光は」

 世界のために泣いた女神。

 「永遠に光り輝く!」


 この魔法は、善の想い──ここではステラの両親への想い──が形となったエネルギーの塊である。

 それを破壊(バースト)に使おうと、回復(ヒール)に使おうと用途が自由。

 そんな万能エネルギーを生成する魔法である。


 それは、シルフィの使った初めての魔法でもある。


 故に『零』。


 終わりを見据えながらも、終わりがこないことを願う女神の魔法。

 本来の力よりも当然落ちているが、それでも極大魔法────いや、神格魔法だ。

 類を見ないその魔法を見たベルフェゴールは戦慄する。

 ────私は、やれられる、と。


 「創世の光(ミゼラルーメン)!!」


 その輝きは────優しかった。

 その場を満たす閃光は、私を包み込み、抱いた。

 優しく、温かく……どこか姉を思い出す、そんな感じがした。


 「この魔法……」

 ステラの放とうとする魔法は────自分(シルフィ)が初めて創り出した……そして使った魔法。


 原初の魔法「(ミゼラ)」。


 この魔法を見たのはこれで三度目……そのうち二度は私以外の、しかも人間が行使した。

 神の魔法を使う人間……それなりの代価はある、そう思うだろう。

 しかしこの魔法だけは例外だ。


 この魔法は想いの丈の分効果が増減する。

 さらに言えば理論上「誰でも使える魔法」である。


 詠唱句をは自由、魔力の質は関係ない。

 ただ想いがあればいい、そんな魔法だ。

 人に憧れ、世界に憧れた────何も持っていなかった少女が創り出した魔法。

 根源となるエネルギーを創造する魔法である。


 故に『零』。


 零から────根源からなる魔法。

 根源にある『想い』を形にする魔法。


 あの日……あの時の『創世の光』は────


 この感じ、俺はこの感覚を知っている。

 直感的にそう思った俺は理由もなく確信していた。

 何故、そんな疑問は浮かんだがすぐに消えた。


 俺の前世。


 そう思い当たる節があったのだ。

 俺はこれを近くで見ていたのだ、だから知っている。

 僅かに残ったこの身体にある記憶がそれを想起させているらしい。

 俺はこの光が────好きらしい。


 「はぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」


『創造の光』、それは辺り一面を塗りつぶす閃光となり、その場を満たした。

 エネルギーの解放────そして収束。

 ステラは魔力を大幅に消費させたため、ふらつき……倒れそうなところに、斗真がその身体を支えた。


 「……無理してんじゃねーぞ、バカ」

 「そっちこそ……その言葉、そのまま返すわよ」


 お互いに少し微笑んだ。

 お互い馬鹿だな、そう思う。


 「────ま、だぁぁぁ!!」


 唐突な雄叫びが辺りにこだまする。

 「まだ私は────私は死ねないのよおおおおおお!!」

 あの神格魔法を受けた────そう、原初の魔法を受けたはずのベルフェゴールは瀕死になりながらも生きていた。


 「滅べぇぇぇぇええええ!!」


 ベルフェゴールの手に黒い球体が出現する。

 それは段々と肥大化していき、やがて半径十センチほどにまでなると、更にその魔法は加速、その魔力量が大地を揺らす。

 「あれは……死術式!?」

 「ちっ!ステラ!」

 「私は……動けないわよ!」

 「クソッ!」

 ステラを抱きかかえ逃げようとするが、遅かった。

 ベルフェゴールから発せられた死の奔流は、まっすぐ俺たちを貫くように直進してくる。


 ────しかし、それが当たることは無かった。


 「やれやれ、最後まで面倒掛けるね……あんたって子は」


 機械的な幼女、抉れた身体。

 仄かに笑っているその人は────


 「ま、マキナ!?」

 「ったく……あんたって子は毎回そうだ。イタズラばっかりして気を引こうとして怒られる……それでいて私のところに来るから、面倒事もこっちに来る」

 マキナは俺の叫びが聞こえていないのか、誰かに────いや、ベルフェゴールに語り掛けるように言葉を紡いでいく。

 「私が街を出た後、あんたは変わったのかな。これが久しぶりの癇癪なのかな?」

 「ひっ、く、来るな!」

 ベルフェゴールに近づいていくマキナに恐れを感じたのか、再び魔法を構築する。

 しかし、流石に魔力が足りないのかすぐに崩壊してしまう。

 「もう……我慢しなくていいんだよ。その苦しみは私も知っているから」

 「お前に何が分かると言うの!!」

 「分かるさ」

 ふわっと……マキナは優しくベルフェゴールを包み込むように抱き締めた。


 「私はあんたの姉だよ(・・・・・・・)、マーデン」


 「マ……デン……うあ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 マキナの一言に急に頭を抑えるベルフェゴールは叫ぶ。

 「わ、たし……は、ベルフェ……ゴール、よ!!」

 「いいや、あんたはマーデンよ」

 きっぱりと言い切るマキナはさらに強く抱き締める。

 うっすらと涙を滲ませるマキナは、抱き締めながらベルフェゴールの背中を撫でる。

 「い、嫌……や、めて……」

 「止めない、あんたは私の妹、マーデン・ウーエクスだよ」

 少し顔を離して、顔を見つめながら言うと、ベルフェゴールは────ボロボロと涙を流し始めた。


 「もう……止めて……お姉ちゃん……っ!!」


 「やっと呼んだ。私をお姉ちゃんって」

 涙を頬に伝わせながら微笑む彼女は……紛れもなくベルフェゴール────いや、マーデンが知る優しく強い姉だった。

 「お姉……ちゃん……私……もう」

 「あぁ、分かってる。私もすぐに行くよ……それまで、ゆっくりしてな?」

 自分を認識した時には既に死ぬ直前。そのため、もう力も入らない。

 でもマーデンはそれでもいいと思った。

 最愛の姉に────もう一度会えたのだから。

 「じゃぁまた……後でね、お姉ちゃん……」


 そう言いながら涙ながらに、子供のように、大好きな姉に向ける笑顔を見せるマーデンは眠るように……静かに永久の眠りについた。


またまた遅れてごめんなさい!!

やっとこさ更新です!!

少しだけ説明します(小説の内容)。

マキナとマーデンの名前ですが、デウスエクスマキナが演劇用語ということで、マーデンはメソッドのラテン語『modum』を言い方を変えました。

かなり変わっているので「マジかよw」 と思う人もいるでしょうw

では、説明は以上です!

次話でまた会いましょう!


次話「終わりのあとにあるもの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ