親愛なる我が娘へ
六年前────ステラは……
六年前、私は家を出てこの世界有数の高等魔術学園の主席を務めていた。
そんな私は、言ってしまえば優秀な学園生活を送っていた。
才色兼備、眉目秀麗……周りからそんな言葉を投げかけられていたけど、私はただがむしゃらに強く、頂点を目指していた。
主席を務めつつ、上級生を相手取りより高みを目標にしていた。
いつしか、知識と潜在能力が認められ、飛び級するまでに成長した。
一人前の魔道士になるためには、とある試練があったが、その試練も余力を残してクリア出来た。
試練をクリアした時、頭には────「両親に褒めて欲しい」ということだった。
両親共々魔道士で、かなりの優秀な人たたちだった。
私の家は『アストルテ』という名家だ。
代々優秀な魔道士を排出している名門。
私が在籍していた学園に先祖代々優秀者として名を連ねており、更にその中でも主席を務める者も何人もいた。
その中の一人が私。
主席、名家の出……そんな見えない重圧に耐えつつも私は頑張ったのだ。
幼少期から魔法の訓練を積み、学園に入り……修練の日々だった。
褒めて欲しいと思ったのは、両親に甘えたかったのかもしれない。
そんなニヤけ顔を隠すことなく、荷物をまとめて故郷へ────魔法都市マーギアに帰ろうとしていた時だ。
「た、大変だ!マーギアが襲われた!」
卒業前ともあり、論文も書かなくてはならなくなり、最低限のものを除けば荷物をまとめ終えていたあとも作業を続けていた時の事だった。
講義室の休憩時間にその電報が入った。
魔法都市マーギアとこの学園は数多くの繋がりを持つ、言わば相方と呼べる都市だ。
故に、マーギア出身の生徒は数多い。
私もその中の一人だった。
魔法都市からこの学園への電報の速度は随一。
高速通信魔法回路で連結されており、マーギアの事はどこよりも早くこの学園に連絡が行く。
今電報が入ったということは────現在進行形で襲われているということ。
私は思わず席を立ち上がり、愕然とした。
マーギアには────両親がいる。
襲われているとなれば、優秀な両親の事だ、戦闘に駆り出されているに決まっている。
私も行かなくては────!!
学園の一つの施設として、魔法を用いた転送装置がある。
元はと言えば、長距離の荷物の運搬のためにある大規模空間移動用の施設である。
そこに行けばすぐにでも両親の所に行ける……そう思った私はすぐに向かった。
施設には上級魔道士の教員、教授、博士に学園長までもが勢揃いしていた。
粒揃いの精鋭な上に、全員が眉間にシワを寄せて真剣な顔をしている。
それほど強力な魔物が故郷を────そう考えると背筋に冷たいものを感じた。
それでも私は────行かなければならない。
「私も行くわ」
「ステラ君……!?」
学園長に無理を言ったが、しぶしぶだったが同行を許可された。
待ってて……今行くから。
そうして……人生初の空間移動が始まり、視界は切り替わった。
そして────私は絶望する。
物の焦げた匂い。
焼け落ちた家屋。
炎の上がる音と風の音以外には音は無い。
ここは────戦争をしていたのか?
そう思わせるには充分……いや、過剰なくらいだった。
「う………そ………」
マーギアには、都市を守るための防護魔法が何重にも展開され、並の魔物……いや、A級の魔物ですら破ることが出来ないであろう魔法式だ。
それに守られるこの都市をここまで破壊する────それは襲撃してきた敵の強さを物語っている。
そこに不意に、巨大な爆発音が聞こえた。
そして────
「この魔力の感じ……パパ!」
私は学園長たちの静止を振り切り、魔力の元へと走り出した。
場所は都市の中心。
だんだん煙と、爆発音が大きくなる。
「パパっ……!!」
さらに速度を上げて走り出す。
「待ってて……今行く!!」
あの角を曲がれば……!!
しかし、運命は残酷だ────そう言えば良いのだろうか。
角を曲がった時すぐ横を何かが通り抜けた。
背後で壁と何かが激突した音が木霊する。
「え……?」
しかも……見覚えがある。
「ステラ……!?何でここにいる……!?」
「パパ!?」
私の父親が────何者かに吹き飛ばされてきたのだ。
「まって!すぐに治癒魔法を……!?」
「ステラ危ない!!」
父親……エルメス・アストルテは消耗した魔力の中、何者かによって打ち出された強力な火炎弾を防護魔法で防ぐ。
「落ち着け……まだ、まだ俺は……!!」
「でも……でも!」
エルメスの傷はかなり深い。
恐らく内臓器官は後遺症を残すであろうほどだ。
普通の治癒魔法では到底間に合わない。
「俺のことはいい……早く逃げろ……ベルフェ……ゴールは止まらない!」
「嫌よ!パパをここにいさせたら……っ」
死んじゃう────そう言いそうになった時、エルメスは手で私の口を塞いだ。
「パパの言うことをよく聞いてくれ……もう壊れてしまったが……家の地下、俺の作業室にあるものを見ておくんだ……」
不意にエルメスの手がステラを髪を撫でる。
「何よそれ……っ」
「これからの人生はお前次第だ。後悔しないように生きろよ?好きな人を一人くらい作っておけ……それがパパの願いだ」
一般的にいえば、『死亡フラグ』というやつだ。
名称走らずとも、ステラには直感的にエルメスが死ぬことを悟った。
「嫌!パパ!行かないでよ……!!」
「強く生きろ。幸せになれよ?ステラ」
エルメスの手に魔力が込められる。
そして私の身体をその魔力が覆っていく……この感じは────
「空間移動!?まって!まってよパパ!!」
「お前が生まれてきてくれて良かった。パパもママも幸せだった……ありがとう、ステラ。愛してるぞ」
その言葉を最後に────私の視界は最初に来たマーギアの入口に切り替わった。
そこから、魔物が立ち去るまで数分の時間だった。
マーギアの各所で消火活動、瓦礫撤去などの作業が進められる中、私は今は崩れ落ちた実家のあった場所に来た。
────家の地下、俺の作業室にあるものを見ておくんだ。
パパはあの時そう言った。
魔法で床下にある空間を探知、鍵を開け地下へと進んでいく。
程なくして鉄製の扉が目の前に現れた。
その扉を開けると────
「なに……これ」
私と、パパと、ママ、とおじいちゃんとおばあちゃんと。
家族の魔法具写真と、アルバム。
魔法関係の資料もさながら、私の家族に関する物が所狭しと並んでいた。
「パパいつの間にこんな……」
魔法具の射影機は、パパが開発したものだ。
十数年前……私が産まれる前に開発、私が五歳の頃には高解像度の『写真』、と呼ばれる物が出来上がっていた。
これはその時、開発したからという理由で撮っていた写真たちだろう。
呆然と見ていると、机の上に一つの便箋を見つけた。
まだ新しい。
まだ一週間と経ってないはずだ。
筆跡はエルメスだ。
裏面を見たが差し出し人は分からない。
けど、エルメスだと確信していた。
Dear.ステラ
この手紙を読んでいるということは、まぁそういう事なんだろう。
学園生活はどうやら上手くいって、無事に卒業出来るみたいだな。良かった。
ステラ、お前は才能がある。伸びる。
強くなれ、優しくなれ。
人を護れるくらいに。
もうそろそろ筆を置く。
上手いこと言えなくてごめんな。
最後に
生まれてきたことに感謝している。
ありがとうな
愛してる。
From.エルメス、ミラ
「────」
何も言えない。
ミラ……母親の名前もはいっていた。
涙が止まらなかった。
もっと深い意味を込められている気がして、つたえてくれようとしてくれて。
ボロボロと涙が手紙に降り注ぐ。
ふと、二枚目があることに気が付いた。
追伸
復讐心に囚われるな。
心を強く持て。
そう短く書かれていた。
その内容にもう泣かないと決めた。
私は────
ベルフェゴール。
エルメスは……パパはそう言った。
パパを殺したのがそれなら……私は殺さなくてはならないだろう。
どんな手を使っても。
しかし、これは復讐心からではない。
私は────ケジメを付ける。
ベルフェゴールを倒すことで……私はもう一度、両親にを思い出して涙をしよう。
それが私の決めたこと。
私はただベルフェゴールを殴り飛ばしたいだけなのだから。
四十九話!!!!
またまたお久です☆
今回はステラのお話ということで!最後結構グダった気がしますがぜひ読んでください!
次回「過去と現在、そして同一」




