そのステータスは
無事にお金を借りることが出来た斗真たち。
その驚愕のステータスとは……?
「「ぶっ倒して宣戦布告だ。この世界に」」
「……お前が怖がってた割には案外優しい女神なんだな」
アルス様宅から出た俺たちは、すぐ隣のギルドにとんぼ返りしていた。
飲食スペースにて再び話し合っている。
余談だが、未だに俺は制服姿だ。その物珍しい服装に対して周りの目を集めてしまっている。まぁ特に気にすることもない。実害無いわけだから。
「そう……だよ。優しいんだよ?アルは」
少し照れくさそうに笑うシルフィ。
しかしすぐさま怯えた顔になった。
「でも怒るとすごーく怖いんだよ!」
「そりゃお前が怒るようなことをするからじゃないのか?」
「ふぐ!?そ、それは……そうだけど」
しょげた。しょげやがったよこいつ。反応が小学生くらいでなんか面白い。
「失礼な、私は斗真の何千倍も生きてるんだからね!」
「あーはいはいさいですか」
むくれるシルフィをよそに、俺はアルス様から聞いたことを思い返していた。
────数十分前。
俺が再び決意を固めたあたりである。
「そろそろ良いかな?私が話しても」
あ、やべ。アルス様の話の途中だった!
「すいません、お願いします」
まだちょっとぐずってるシルフィを尻目にアルス様へと向き直る。
「助言しか出来ない……本当にだぞ?私達はここでは長寿以外は人と何ら変わらない。多少強いは強いがな」
「そうなんですか?それならシルフィも?」
同じ女神だ。きっと割と強いはずだ。
「いや、シルフィアは別格。私達とは比べ物にならないほど強いはずだ」
ん?まじで?
「そうだよ?私、強いんだから!」
さっきまでぐずってたやつが何言ってんだか。
シルフィは泣き跡こそあるが、もう泣き止んでいた。
「まぁ、それは置いといて……魔王の話だ」
「……はい」
まだ、私は強いと言っているシルフィをゲンコツで黙らせた(相手女神なのにな)。話を聞かなければ。
「……はっきり言うぞ。息子達三人は」
「『異常』だ」
アルス様のその言葉はより重みを感じた。
「『異常』、と言うと?」
「部分的に異常なのではない。全てが『異常』なんだ。強さは然り、カリスマ性、駆け引きのセンス、頭脳……全てが異常なほど高いんだ」
そこまでなると対処に困るぞおい。
やばいんじゃね?
「さ、三人が三人ともなんてことは……」
「残念ながら三人が三人とも『異常』だ」
────回想終了。
結論。超絶無理ゲー。
勝てっこねーよそんなもん。先代魔王ならともかく、それを超えるバケモノ三体だぁ?同時に来られたら無理ゲーだっつーの。
「どうしろって言うんだよ……」
「とーま!」
悩む俺を外にシルフィは呑気だなぁ。腹立つわぁ。
「今俺は今後について悩んでんの。少し黙っててく……」
「そんなことよりかさ!!」
世界を救ってと頼んだくせにそんなことですかさいですか。
「どーお?アルが整えてくれた自分の髪型は!」
色々話を聞かせて貰った後、シルフィが頼み込んで俺の髪を切ってもらった。
しぶしぶ……という感じでは無く、むしろ嬉しそうに切っていた。
「まぁ、良いんじゃねーの?よく分かんないけど」
軽くセミロングほどあった俺の髪はバッサリと切られ、非常に短くなっていた。
耳も出ていて、襟足も短く、もみ上げも整えて、前髪は眉に少しかかるかそれくらい。
学校の校則に載るような髪型だったが、まぁいいだろう。
「っとこんなことしてられねーな。冒険者登録料に加え、散髪代も払わないといけないし」
アルス様からは「世界を救ってくれるんだ。散髪代なんて安いもんよ」と言ってくれたが……そこは気分だ。
「そだね、いこ!」
笑顔であの巨乳のお姉さんがいるカウンターへと向かうシルフィ。
……最初に会った時はまだ気品ってものがあった気がしたんだが……今はもうなんか幼馴染みたいになってるな。二次元みたいな。
そんなことを考えながらカウンターへと俺も急いだ。
「ようこ……あれ?先程の……?」
「こんにちは。財布持ってきたんで、登録お願い出来ますか?」
一応『財布を忘れた』という体を崩さないための文言だ。
「え?あ、はい!では頂きます」
お金を渡すと、お姉さんから俺とシルフィ、それぞれのものらしい冒険者カードを差し出してきた。
「それを持つと、自動的にステータスが更新されます。私達ギルドは二次発行を防ぐため発行時のみ、閲覧させて貰いますが構いませんか?」
「大丈夫ですよ」
俺のステータスはゲームからの引用されているはずだ。ならばかなりの高ステータスになっていることになる。期待は大きい。
しかし反面として、レベル制限アリの魔法の類いは使えない。この世界に来たばかりだし、レベルも一だろう。
高威力の魔法が使えないのは辛いが、何とかするしかない。
「お?私凄いのかな?」
既に手に取っていたシルフィのカードは光を帯び、その驚異的な数値を表していた。
「ではシルフィ様、こちらへと……!?な、なななんですか!?この数値!?レベル一なのになんでこんな……!?」
どうやらシルフィのステータスはありえないほど高いようだ。
まぁ当然だろう。なんせシルフィは、『他の神とは別格の強さ』だから。他の神もそこそこ高いだろうが、シルフィには圧倒的に劣ってしまう。
「え?私強いの?えへへ……照れちゃうなぁ」
照れるなよ。女神だし強いんだからもうちょい威厳をだな。
「じょ、ジョブはどうなさいますか?このステータスならほぼ全てのジョブになれますし、働き次第で勲章も……」
「んー……後衛が好きだし、とりあえず『大魔道士』とか?」
大魔道士。ウィザードと呼ばれるそれは、セインク時代でも魔法特化のジョブだ。
後衛好きに人気だったなぁ。
「了解致しました……初期スキルポイントを好きな魔法に割り振って下さい。お次は、ええと……トウマ様ですね。お願いします」
「あ、はい」
隣でシルフィが楽しそうにスキルポイント?を割り振っている横で、俺のステータス更新を行う。
改めて差し出されたカードを見て、手に取る。
光を帯びたそのカードは……何故だか懐かしい感触だった。
自分のステータスが書かれていくそれは、セインクのステータス画面を見ているようでとても心地よかった。
光が収束すると、そこには俺のステータスが。高いのかは分からないがそこそこなんじゃないのかな。
「はい、ではこちらに……」
「あ、先に言っときますとジョブは冒険者、で」
そう言ってまだ驚きが抜けないお姉さんに渡す。
ちゃちゃっとジョブ設定を行ってくれたお姉さんは
「────え?」
俺のステータスを見て表情が凍りついた。
「あ、あの?」
「大変だぁ!!」
凍り付いたお姉さんに話しかけようとしたが、ギルドに入ってきた男の声に遮られた。
「どおしたエルファバ。また奥さんと喧嘩でもしたのか?はっはっは」
仲が良いらしい男が血相を変えた友人に冗談混じりの声を掛ける。
────今起こっていることを知らずに。
エルファバと呼ばれた男はこう言った。
「そんなことどうでもいい!それよりも……魔王第三部隊幹部の『撃墜のマモン』が城壁外にいるんだ!!人手が足りないが……逃げて生き残るのもありだ!!動け!!」
その場にいた全員……いや、エルファバの声を聞いた全ての人々が凍り付いた。そして慌てふためき、中には泣き出す者もいた。まさに阿鼻叫喚である。
俺とシルフィを除いて、だが。
「なぁシルフィ。これってチャンスかな」
「んー、そうじゃない?」
俺たちは声を揃えてこう言った。
「「ぶっ倒して宣戦布告だ。この世界に」」
お姉さんからカードをひったくり、走り出す俺とシルフィ。
「え?あ、ちょ、ちょっと!?」
「悪いお姉さん!後でまた来るから!!」
「エルファバさん、そこどいて!」
「え?うわっ!?」
目指すは戦場。打倒魔王第三部隊幹部。
『撃墜のマモン』。
レベル一冒険者二人の初陣。
片やチーター(多分)。片や女神。
異質な二人が急ぐ。
「待ってろ……ぶちのめしてやる」
そう言った斗真の顔は────好奇に満ち溢れていた。
四話目です。
ここからバトルへと繋がっていくんですけど……正直上手く描写を表現出来ているか分かりません!!ご了承ください!!
盛大に宣戦布告をするべく走り出す斗真たちのその先に待つものとは?
次回「撃墜のマモン」