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秘剣と私と

洞窟の深奥に秘剣を見つけたサーシャと斗真。

しかし、斗真には扱えなかった!?

秘剣に触れたサーシャは中にいたとある人物を知っていて────?

 剣を握り締めたままへたりこんだサーシャに俺は何もしなかった。

 心配して声を掛けるか?いいやしなくていい。

 僅かながらに剣の魔力がサーシャに流れていくを感じた。魔力の流れといっても明確なものではなく、漠然としたものだが。


 おそらく、秘剣と闘っているのだろう。


 元の世界のアニメや漫画でもある話。

 強い剣と別空間で闘い、勝ったら所有するということ。

 ならば、邪魔するべきではない。

 俺がすべきこと。それは────


「何が何でもこいつを守りきること、か」


 背後から迫るは魔獣の群れ。

 狼のような魔獣もいれば、人型のオークなどがいた。

 松明でしか照らせていないこの空間でここまで把握出来たのは僥倖と言える。

 しかし、視界不良では何かと闘いにくい。

 もとより、松明の予備として持っていた木に付与属性(エンチャント・エレメント)を掛ける。

 属性は火。

 元から持っていた松明は、サーシャから数メートル離れたところに刺し、固定する。

 残りの松明は────

「闘いながら刺してどうにかしよう」

 そう呟くと、虚空より再びエクスカリバーを召喚し、右手で柄を握る。

 ────サーシャを守りきる。

 再びそう確認するように心の中で呟く。

 手に握る黄金の聖剣は、サーシャのそばにある松明と左手に持つ松明に照らされ、その輝きを魅せていた。

「さぁて……防衛戦、開始だな」

 一斉に襲い掛かってくる魔獣達に向けて走り出す前にこう呟く。


「信じてるぞ、サーシャ」



 お互いの剣が打ち合う度に火花が散る。

 激しい剣技の応酬。

 オルレアンが斬りかかれば、サーシャは手に持つ剣でそれを弾き、そのまま回転し横薙ぎを繰り出すが、オルレアンの筋力は凄まじく、弧を描くように剣を振り、斬りあげによる迎撃をする。

 オルレアンは弾くことでできた隙に、剣先による突き技を繰り出すが、紙一重で避けられる。

 実力はあまり変わらない────その筈なのに。

『……スタミナを消耗し過ぎだ。無駄が多い』

 そう、サーシャが圧倒的に消耗している。

 サーシャの剣技はもちろん凄腕と言われるべきもの。守護の勲章『守護者(アテナ)』を持っているとしても、勲章が授与されるあたり、そこには剣撃も含まれている。

 しかし、いかに凄腕と呼ばれようともサーシャの剣技には『無駄』が存在した。

 例えば、遠心力を加えた横薙ぎは良い技なのだが、サーシャの場合は振り切ってしまいがちだ。これでは隙が生じてしまう。

 オルレアンは隙があるのにも関わらず、攻撃してないタイミングが幾つかあった。それも、致命傷になりかねないものだ。

「……っ」

 サーシャ自身無駄があることに気付いていたが、それを改善しようにも、早寝早起きが週間になっている者が何も無くても起きれるように、身体に染み付いたものが簡単に取れることは無い。

『それでお前は俺に勝てるのか?隙を見逃してやっていることにも気付いているんだろ?』

「……知ってる」

『ふん……今までそれで通じただけのことだろう。これからはそうとは限らないことを知れ』

 正論だった。

 今まで通じていた剣技はたまたまで、これから先も通じるとは限らない。

「私……は……」

 ────強くなりたい。でも方法が分からない。

 ただがむしゃらに頑張って剣技を身につけたとしよう。それだけでは強さとは言えない。

 頑張るだけじゃ強くはなれない。

 昔、ある人にそう言われたはずなのに────まだ理解出来ていないのか。

 そんな絶望にも似た感覚に襲われる。

 お互いに剣を打ち合い、鍔迫り合いになる。

 拮抗する中、オルレアンは言う。


『理想を目指すあまりに……自分を見失っていないか?』


 ────。

 何も言えなかった。図星……だったのだろうか。

 自分でも分からない。でも言い返すこともできない。

 私の理想────あの悲劇を起こさないためにも強くなること。

 だがそれはただの『願望』。


 私は……ただあの光景を見たくないだけ。

 私は……逃げているだけ。


 きゅっと唇を噛む。

 私の『理想』ではなく『願望』は、ただトラウマから逃げるために強くなることだった。

 今更自分で気付き、なおかつ他人に言われて気付くことに悔しさを覚える。

 ────情けない。

 なんで自分で気付かなかったのか。

 その後悔も混じった感情に襲われる。

 ふと、力が緩む。

 その隙を今度は見逃さず、オルレアンは強くサーシャの剣を弾き飛ばす。

 空いた腹部に蹴りを繰り出し、サーシャ本人を蹴り飛ばす。

 地面を二、三回バウンドし、転がったあたりでようやく止まる。

 痛みを堪えながらも立ち上がろうとするが、心の影響もあるのだろう、その行動はゆっくりだった。

『……お前は……何を望んでいる?』

 ゆっくり立ち上がろうとするサーシャを見つめながら、オルレアンは言う。

『お前の『理想』はただの『願望』だったのだろう?』

 ────見抜かれてる。

 強くなりたいのは『願望』であり、『理想』……と思い込んでいた。

 でもそれは私の『わがまま』にも取れることにようやく気付いたのだ。

 オルレアンはさらに続ける。サーシャを諭すように。


『お前の本当の(・・・)『願望』とはなんだ?』


 私の────願望。

 一体……何?

 偉大なる先祖に諭され、心に迷いが生じるサーシャ。

 剣を持つ手が震える。上手く力が込められない。

 どうすれば────

 分からない。

『迷うか。それもいいだろう』

 オルレアン自身も迷いを持ったことは数多くある。

『だが、答えが出ないなら……』


『お前にこの剣を────『氷光の秘剣(グラキエス・ルーメン)』を使うことは出来ない』


 答え────それは何?

 私の中にそれはあるの?


 迷いの中に答えはある。

 誰かがそう言った。

 しかし、その過程は自分で作るものだ。


「私の……本当に………望む……こと……」


 それは見つかるのか。

 私は重ねて思う。

 ────分からない、と。

なんででしょうね、見間違いでした!

二十二話です!前回のは二十一話です!

こんなところでドジっ子属性が(誰得)


次回「答え」

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