異世界とゲーム世界
通学途中に異世界召喚をされた斗真。
創造者を名乗る少女シルフィと魔王軍壊滅の一歩として冒険者になるべく、冒険者ギルドへと足を運ぶ。
しかし冒険者にはなれない!?
「おい女神様」
「……なんでしょう」
「どうしてこうなった」
ギルド内飲食スペースにて、俺とシルフィはテーブルを挟み向かい合うように対峙していた。
「おい女神様」
「……なんでしょう」
「どうしてこうなった」
「……面目ないよ」
俺たちはギルドに向かった────のはいいが、冒険者になれなかった。
「……初歩的ミスだよな、『金不足』」
十数分前────
俺はシルフィから、この世界について色々聞きながらギルドに向かっていた。
この世界の文化、国の政治、生活……そして魔王軍が四つあることについても。
「そ、それは後で話すよ」
はぐらかされた。なんだよもう。
あっ、と言ったシルフィは突然ある建物を指差し少し小走りした。
「着いたよ!ここが冒険者ギルド!」
目の前には二階建ての白塗りの壁の建物。正面玄関直上約五メートル程には、ギルド特有の識別マークがある。
ここの識別マークは赤の円の中に鉱石をイメージした白塗りの描かれている。
……昔やってたカードゲームの……なんだっけ、ナントカの採掘の石に似てるよなぁ。
「多分中に人結構いるよ。基本、徴兵とかの義務はないけど、三分の二近くの男性は冒険者だよ」
「なんでだ?」
「簡単だよ、お金だよお・か・ね」
「あー……なるほどな」
要するに、命を賭ける代わりに金は弾むということだろう。
店を構えるよりも手っ取り早く、なおかつクエストによっては多額の報酬。
よほどの資産家か、一族で継ぐ店などではない限り、新たに店を構えようとする人は少ないだろう。
まぁ、なにせ異世界だし、冒険者とか多くないとな。
「とりあえず入って、カウンターで冒険者手続きしないとね」
嬉しそうに扉を押すシルフィは、斗真の手を掴み、中へと引っ張って入った。
その瞬間、斗真の背中にゾッとするものがあった。
昼だというのに笑いながら肩を組み酒を飲む筋肉質な男達。
クエストボードに張り付くようにクエストを選んでいるパーティであろう男女。
各々が持つ武器の煌めき。
ゲームでも見たはずのこの光景が、何もかもが初め手に感じた。
そして、改めて……いや、初めて『異世界』というものの空気を吸ったような感じだった。
「ようこそ、異世界へ」
驚きと高揚が混じった顔で立ち尽くす俺に気付いたのか、シルフィはこころなしか、楽しそうに声をかけた。
「……あぁ……来たぜ異世界……!!」
ギュッと拳を握り、思わず笑をこぼす。
────こんな場所を待っていたのかもしれない。
そう思わせるほど、俺の心に響く光景だった。
「感動もそれくらいにして、早く登録しよ?」
シルフィはなんだかウズウズしながら急かしてきた。
「あぁ、分かってる」
俺とシルフィは足を揃えて、ギルドカウンターへと向かった。
「こんにちは!冒険者ギルドにようこそ!」
異世界ってすげぇな。
カウンターのお姉さん超絶美人のおっぱいドーンだよ。
向こうではありえないよ。
俺の感心(精神的セクハラ?)には気付かず、笑顔で応対してくれるお姉さん。うん、綺麗。
「冒険者加入手続きを取りたいんですけど……」
「はい!登録料としておひとり様千セイクとなります」
へぇ……セイクって通貨単位、同じなんだ。
……ん?登録料?
シルフィの方を向くと、顔を青くした女神がそこにいた。
「す、すいませーん、財布忘れちゃってて……取りに行ってきますねー」
……棒読みすぎるだろ。
お姉さんも困った顔してんじゃん。
「で、では後ほど再度受付しますので……それでよろしいでしょうか?」
「……はい」
そう返事をするとシルフィはトボトボと飲食スペースへと歩いて行った。
「なんかすいません、うちの連れが……また来ますんで、その時はよろしくお願いします」
俺はフォローにもなってない言葉をお姉さんに言って、シルフィのあとを追いかけた。
そして現在に至る。
「どーすんだよ。金がねぇと稼げないじゃん」
「……あるのはあるんだよね……」
こいつもこの世界に降りてきたばっかだろ。どこにそんな資産もってるんだよ。
斗真の表情から考えが読めたのか、シルフィはため息を吐いた。
「この世界に創造した時のメンバーが何人か降りてきてるんだよね」
私は主神だから降りれなかったけど、と呟くシルフィ。
「神の住む世界でもあるのか……ますますセインクと似てるよな、この世界」
「ん?あ、言い忘れてた」
何かを思い出したかのようにシルフィは手を叩いた。
おっぱいは少し揺れた。
「セイバーリンクオンラインを作ったのは、この世界を作った神々だよ」
満面の笑みではっきりとそう言った。
は?セインクを……?
「作ったぁ!?」
「そ♪」
シルフィは首を傾げながらウインクをした。
あ、可愛い。
シルフィって可愛いよなぁ……向こうでは考えられないよ、こんな美少女。恋愛対象外だけど。
ってそれは置いといて。
「作ったって……ゲームだぞ?ゲームの世界を作るのは作るが、作り方はまるで違うぞ!?」
俺の言葉にシルフィは少し苦笑いした。
「直接私達が作った訳じゃなくて、設定資料を渡したの」
某有名ゲーム制作会社から発売だったのはアイデアを委託したからだろうか。
それにしても、設定資料か……見てみたいな。
セインクのファンブックは持ってるけど、設定の詳しい内容とかは分かんないからなぁ。
「ってことは一度向こうの下界に降りたのか?」
「ううん……うーん、なんて言うかなぁ」
シルフィは腕を組み、唸りながら言葉を探す。
その表情も可愛い。
くそう、なんで可愛いんだ。向こうの世界にこんな可愛い子いないのに……。
まぁ学校にもバイトにも行ってないし、分かるはずないがな。うむ、ニート宣言。
「なんかしょうもない事考えてる……よね?」
バレた。
「まぁいいとして、性格にはアイデアを提示した、かな」
「どうやって?」
「ここに、直接アイデアを送り込んだの」
指先で自分の頭を指さすシルフィ。
テレパシーみたいなものかな?と勝手な解釈をしながら話を聞く俺。
「プランナー本人には『ある日突然湧いたアイデア』ってなってるけどね」
神が与えたアイデアってバレたくないしね、とシルフィは言う。
自分の作ったものが恥ずかしいわけでもあるまいし、別に……あぁ、そういうことか。
「神頼みになって欲しくなかったからか」
神から授かったアイデアで作ったものの続編とかならさらにアイデアを貰おうと、他力本願になってしまう。
それじゃ、自分で考えることが無くなってしまう。
「よく分かってるね。あ、話しそれちゃったね。戻そうか」
本当はもっと聞きたかったが、金をどうするかが優先度が高い。ひとまず戻すか。
また今度聞けばいいし。
「この世界に、私以外の神が降りてきてるってことは言ったよね?」
「あぁ」
「そのうちの一人……一柱がこの国にいるんだよね」
どうやらシルフィ以外の神々はそれぞれの国の統治を行っているらしい。
創造者グループの神が統治するとなれば、システム的にもOKだろうということか。
「まぁ普通に隠居生活だけどね」
違ったよ。なんか恥ずかしいな。
「まぁ創造者グループとして……」
「金を借りようとってことか」
「ハイ……」
貸してくれたらこちらにとっても嬉しいが、相手にもよるな。怖かったらどうしよう。
しかし、闇金みたいに利子ドーンされたらたまったもんじゃない。
「一番仲良い神様だから大丈夫だと思うけど……」
「……微妙に信じれないような」
この世界に来てからずっとシルフィといるが、大体の性格は把握しているつもりだ。
根は真面目。でもテンション上がると周りを急かしてしまう。
なんとも可愛らしい性格だ。童貞キラーかな?(適当)
「とりあえず、ギルドの隣の家だから行ってみよ?」
「隠居生活してる人間……いや神か。なんでこんなところにいるんだよ」
「知らなーい」
知らなーいって……まぁいいか。
行くに行ってお金借りて、すぐ返せば問題ないだろ。
「そういえば、斗真の髪の毛伸びっぱなしだよね?」
「ん?あぁ……ヒキニートしてたからな」
セインクに入り浸ってる間、よっぽどのことがない限り家の敷地内からは出なかった。流石に全く動かないわけにはいかなかったから、ストレッチと軽い筋トレはしていたが。余談である。
しかし、汗をかこうとも髪も切ろうとは思わなかった。洗えば済むことだしな。
今現在の髪型というと、前髪は目のすぐ上まで伸び、耳は完全に隠れ、襟足はそろそろ肩に届くのでは?というところだ。
「流石に伸びすぎだよ。ロングヘアーを目指すなら止めないけどさ」
「それはない。少なくとも俺的にはな」
しかし、だ。何故いきなり髪の毛の話なんだろうか。
「そのお金を借りに行く神友が、髪を切るのが好きなんだよね、神だけど」
「上手くねぇよ」
でもまぁ、これから魔王軍と戦わなきゃいけない訳だし、切るのもいいか。
「なら、それも込みで話つけようぜ」
「うん、そうだね。じゃあ行こうか」
「おう」
俺とシルフィは席を立ち、この国の『神様』に会いに行った。
またな美人のボインお姉さん。また来るからなっ!
「セクハラはダメだよー」
バレました。反省。
二話目ですね……。
異世界召喚を遂げた主人公、西尾斗真。
セインクリバースの主神を名乗る少女、シルフィ。
彼らの戦闘能力は果たして?
戦闘シーンはもう二話先ですかね(笑)
今回から次回予告もしていきたいと思います。
それでは!次回!
『願い』
お楽しみ頂けると幸いです。
では、次回まで!