擬似竜討伐の次に待ち受けていたもの
────擬似竜討伐は終わりを告げた。
疲労困憊で帰路につく五人を待ち受けていたものとは────?
翼竜と擬似竜を討伐した斗真立ちを待っていたのは────
「本当に申し訳ございません!!」
────ギルド役員らの謝罪祭りだった。
「我々の調査不足が引き起こした事案が、トウマ様方を危険に晒してしまい……結果的にはいい方向にいったものの、本当に申し訳ございません!」
「え……あ……その……」
どうしよ。なんて言えばいいんだ。
「この件は全て我々の責任にあります。本当に申し訳ございません!!」
申し訳ございませんとずっと言い続けるギルド役員らに俺は困惑する。
「あの……」
「は、はい……」
俺が声を掛けると、このギルドの最高責任者である一番前で謝り倒していた男が情けない声を上げる。
よく見ると他の役員らも少し震えている。
そんなにやばいのかー……
俺は、その時精一杯の笑顔を浮かべ、役員らに言う。
「まぁ、結果的に擬似竜を討伐は出来た訳だし、良いじゃないですか」
「へ……?」
キョトンとする最高責任者。
「そりゃぁすっげぇ危険で死ぬかと思いましたよ。でも、擬似竜討伐することで俺にも利点があった訳だし」
「利点……?」
そう、俺にも利点があったのだ。
ユニークスキルの真価の発揮。
それを可能にしてくれた戦いだった。
まぁサーシャのお陰がかなりあるんだが。
「今回はWin-Winってことで!」
「う、うぃんうぃんですか……?」
通じねーよな。そりゃそうだ。世界が違うし。
「とりあえず水になが────」
「────せるわけないでしょバカ」
俺の言葉に割って入ったのは、ステラだった。
「こっちは心折られかけて、死にかけて散々な目にあったのよ?雪男の以上発生も報告なかったみたいだし……」
「そ、それは……」
「ともかく」
責任者の言葉を遮り、ステラは続ける。
「それ相応の責任をギルドには取って貰わないと割に合わないわ」
冷ややかな目を役員らに向けるステラ。怖い。
「……それは重々承知しております。どんな処罰にも対応します……」
「そう……なら」
シルフィは目を伏せ、続ける。
「私の……『魔導師』の勲章の剥奪をまずお願いするわ」
「「「え、えええええええ!?」」」
その場にいた役員、冒険者全員が驚きの悲鳴を上げる。
勲章剥奪が意味すること。それは────己の栄光を捨て去ることだ。
「そ、それは流石に……」
「出来ないの?」
「それは上が決めることで……」
「ふぅん……なら申請でもなんでもしてもらおうかしら」
ステラの目……本気だ。
「ステラ……なんでそんなに……」
「色々よ」
即答された。
なんだよ色々って。
「出来ないなら……そうねぇ……継承なんて出来るかしら?」
「継承……と申しますと?」
そのまんまよ、とステラ。
「勲章の継承……私の『魔導師』の勲章を……そこの彼女に移すの。出来る?」
ステラが指さす先には────シルフィがいた。
「え、わ、私!?」
「えぇ、シルフィ。あなたよ」
ステラは少し悔しそうに笑う。
「新魔法の編纂……そんなの私にも出来ないわよ」
周りは唖然とする。
当然である。新魔法の編纂は、過去五百年程なかった事案であるからだ。
「私よりも『魔導師』にふさわしいわ」
「いや……でも……」
シルフィが言い淀む。
しかし、ステラも自分の考えを曲げないようだ。
「シルフィ、折れろ。ステラの気は変わらない」
「でも……」
「もう一度」
俺はシルフィに声を掛け、次にステラにも向けて声を掛ける。
「『魔導師』の勲章を奪い返したいんだろ。折れてやれよ」
負けた。悔しい。
ステラの中にあったのはそれだった。
新魔法の編纂……それの応用活用。
ステラには出来ない所業だ。
シルフィに可能な所業。
勝てない……今は。
勝てないから諦めるわけではないのだ。
それを斗真は見抜いてシルフィにそう声を掛けたのだ。
ステラは俺の言葉に少し驚き、苦笑いした。
解ってるじゃない、と言いたげに。
「い、一応可能です……ただ……」
「ただ?」
最高責任者の男は躊躇いの素振りを見せたが、覚悟を決めたらしく、言葉にする。
「現『魔導師』……ステラ様を超える功績を残して下さい」
「功績……?」
「私の功績は『竜討伐』よ」
まぁ死にかけの不遇な竜だったけどね、とステラは言った。
元から本人にも勲章を受け取ることが不愉快に感じてたのだろう。
本当の功績を残した人に、勲章を受け継いで貰えるなら本望だろう。
「ステラの望みなら……私は良いけど」
周りに困惑と、しかし興奮の騒ぎ声が上がる。
ちょっとしたお祭り騒ぎだ。
「……ったく……なんだかなぁ」
この世界に来て、イベント起こりすぎじゃね?と感じている。
だがそれもいいかもしれない。
元の世界になかったことなのだから。
「それに同伴しても良いよな?」
「は、はい!構いません」
「それならこの五人で行く」
まぁ……良いだろ五人で行っても。
シルフィの技量を図るものらしいけど。
「それでは……依頼を持ってきますのでしばらくお待ちください」
最高責任者の言葉を皮切りに、役員や他の冒険者は散会し、それぞれいつも通りの日常に戻っていく。
「ステラ……良いのか?」
再び俺が問うと
「良いのよ……私よりもふさわしい人がいるじゃない」
「ま、お前が良いならいいんだけどさ」
「お待たせ致しました」
依頼を取りに行っていた男が戻ってきた。
「こ、これ……なんですが」
男はシャナを少し見ると、気まずそうにした。
「?」
キョトンとするシャナ。
……何かある見たいだな。
そう思ってると男が依頼書を差し出した。
依頼者『第一機皇類 DーMAKINAー0』
依頼者を見た瞬間、俺達は息を飲んだ。
……おい……まさか……。
依頼内容 『当機の永久凍結もしくは破壊』
────物語はさらに動き出す。
斗真という歯車が噛み合わされたことにより、より強く……狂わせていく。
「懇願。当機はどうすればいいか────教えて欲しい」
誰ですかねぇ、いつもの文章量に戻すって言ったアホは。僕です。すいません。
というわけで十五話です。
やっとこさ機皇類が大いに関わり持っていく展開に行けますよ。前置き長いなー。
では、予告でも。
次回「最終機皇類」
 




