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翼竜討伐戦

激戦もつかの間の緊急クエスト。

敵はゲーム時代にも闘ったモンスター。

クエスト対象外のモンスターも出現して────?

「んで……なんでそんな薄着なの?」

 アルファティアから数十キロ。

 お姉さんからのクエストを受けて次の日、俺達は一年中雪が降るという謎の山『アングラ』に来ている。

「だ、だってぇ……知らなかったんだもんぁ……っくしゅん!!」

 両手で腕を擦りながらガタガタ震えるシルフィは盛大なくしゃみをした。

 今いる五人の中で寒がっているのはシルフィだけである。

 氷点下のこの山には雪が積もっているが、歩けないというほど積もっているわけではなかった。

 しかし、雪は雪。足超冷てぇ。

「だらしないわねぇ……ちょっと待って」

 ステラは杖先に魔力を込めながら魔法を発動する。

「『寒中耐性(アンチ・コールド)』」

 そう唱えた直後、シルフィの周りに薄いオレンジの光が灯る。

「ふぁぁ……あったかぁい……」

「寒さ対策用の魔法よ……ほんとに何も準備してなかったのね」

「……街に……寒さ耐性付く……飲み物……売ってたよ……?」

 モン〇ンかよ。ホッ〇ドリ〇クじゃねぇか。

 半ば苦笑い、半ば呆れで俺は歩みを進める。


「ま……す………た……ぁ」


 ん?変な声が聞こえた気がする。

「………た……ぁ……」

「うおおおおおい!?シャナ大丈夫か!?」

 消え入りそうな声の持ち主は紛れもなく機皇類の────シャナだった。

「ステラ!魔法を!」

「え?あ、はい!」

 急いでステラがシャナに対して寒さ対策魔法を掛ける。

 冷えるの早いのかな。機械だし。

 てか効くの?機皇類に。

「……プログラム再開確認。感謝。ありがとう。ステラ・アストルテ」

 効いた。効くんだ。

「ステラでいいわよ……」

 呆れながらステラが言う。というかシャナとサーシャを除く三人は呆れ顔だった。

 しかし、前を向くと段々と酷くなってきている。

 着込んだくらいじゃ耐えられなかったかもしれない。

「しっかし……サーシャの魔法にこんな活用法があったのか」

「……?……『付与属性(エンチャント・エレメント)』の……こと……?」

 サーシャから教えて貰った『付与属性』という魔法は、自分や自分の所有する武器などに火、水、風、雷、土の五属性の内、一属性を付与させるものだ。もちろん強弱をつけることが出来る(ただし、自分の魔力を消費し続けるため、あまり火力は出せない)。

 今俺は火の属性の効力を弱めて自分の服に付与させ、身体を温めながら歩いている。これがなかなかに心地よいのだ。足は冷たいが。

「おう。ありがとな!」

 嬉しさのあまりサーシャの頭を撫でる。さらさらしててかなり心地いい。

「っ!?」

 するとサーシャはボンッと一気に顔を赤くした。

「さ、サーシャ!?」

 咄嗟に俺は手を離し、オロオロしてしまう。

 情けないことこの上ない。

「だ、だい……じょうぶ……」

 するとサーシャは手で俺を制した。顔はまだ赤いが、一応大丈夫なのだろう。

「斗真ぁ……」

「あんたねぇ……」

「質問。主様、それは失礼に値するのでは?」

「え!?そんなやばいことなの!?」

 サーシャを除く女性陣から蔑みの目で見られた。何故だろう。そんなにやばいのか……?

「うーん……分からん」



(頭撫でられた……なんで……だろう、顔が熱いしドキドキする……)

 斗真が困惑する一方、頭を撫でられたサーシャは知り得なかった感覚に困惑していた。


 後にこの『感情』は何か、知ることになるのだが……まだ先のお話。



 ────洞窟入口。

「この中に翼竜(ワイバーン)の巣があるらしいな」

 しんしんと降っていた雪は、いつの間にか吹雪になっていた。

 夜になったのか、あたりを闇が覆う。

 クエスト内容に巣までの道のりが書かれていたが、偵察隊が確認できたのはここまで。

 本格的な吹雪になりきる前に着いて本当によかった。

 つまりこの先からは未知の領域。油断は出来ない。

 出来ない……のだが。

「ちょっと疲れたぁ……」

「そうね……少しばかり休憩しましょ」

 そう言ってシルフィとステラは洞窟の入口に座り込んでしまった。

「あ!私、パン持って来たよ!」

「凍ってるじゃない」

「あ……」

「あ……じゃねぇよ」

 呆れ顔で二人を見つめる俺はそっとため息をついた。

 緊張感無いよなぁ、この二人。

 するとシャナが俺の袖を引いた。

「主様。この奥に翼竜の反応を感知。加えて洞窟外から雪男(スノーマン)の反応多数」

「────そうか」

 短くそう返事した。

 雪男はこの山に住む下級モンスターである。

 全身雪にも耐える剛毛に覆われており、一年中雪が降るこの山を住処としているらしい。

「ステラ、シルフィ、サーシャ」

 俺は三人の名前を呼んだ。もちろん作戦を伝えるために。

「洞窟深部に翼竜、洞窟外から雪男が来てるらしい。俺は翼竜討伐に行くから、お前達は雪男を頼む」

「一人……ううん、二人(・・)で大丈夫?」

「応答。問題ない」

 俺の代わりにシャナが答えてくれた。

 確かに二人は少し心配だ。それもシャナの戦闘スタイルを見ていないし、完全に信じきれてない部分も少ないがある。

 セインクの翼竜は、一応レイドパーティを組まないと勝てなかった気がする。まぁレベルが低かった時の話だったのだが。

「シャナもそれなりには(・・・・・・)強いだろ」

 シャナに対して少し煽りを入れる。

 さて……どうでるか。

「質問。主様、それは当機に対しての侮辱と受け取ってもよろしいのでしょうか?」

 乗ってきた。

 俺はニヤリと笑い、さらに続ける。

「あぁ、まぁそういうことだ」

 今度はどう来るか……?

「返答。当機の実力証明のため、全力を尽くさせてもらいます。主様」

「おうよ、そうしてくれ」

 あくまでも従順って感じか。

 期待外れかなぁと思いつつ一枚の銀貨を取り出す。

「銀貨?どーするの?」

「まぁ見てなって」

 腕を明後日の方向に向け、指先で銀貨を弾く。

 瞬時に腕に魔力を回し、魔法を発動する。

「『付与属性・雷(エンチャント・エレメント・サンダー)』」

 腕に雷を纏わせ、弾いた銀貨が指先に戻ってくる。


 ────指先に触れた瞬間、銀貨が発射された(・・・・・)


 音速の七倍(・・・・・)で発射された銀貨は、吹雪で隠れていた何かを貫いた。

「グォォォォォ………」

 獣のような断末魔の後に何か重いものが雪に沈んだかのような音が響く。

「な、なんなのよ今の…………」

 顔を引きつらせて驚くステラ。もちろん、ほかの三人も驚きを隠せないでいた。

「艦載電磁加速投射砲……つまり超〇磁砲(レールガン)だけど?」

「そんなの知らないわよ!!」

 ステラの叫びに激しく頷くサーシャとシルフィ。シャナは何が起こったのか分からないというようにキョトンとしている。

「まぁそんなことは置いといて……今殺したのは雪男で間違いなさそうだ。多分さっきの断末魔で仲間が来る」

「それってやばいことなんじゃ……?」

「おう、あとよろしく」

 青ざめた顔でこちらを見たシルフィに対し……最高の笑顔で応答した。


 ────雪男がたっくさん来るけど頑張ってね☆


 と。

 そして俺は洞窟の奥へとダッシュする。

 ようやく気づいたシャナが数歩遅れで俺を追う。

「斗真のクズううううううううううう!!」

 シルフィの叫びが聞こえたが気にしない。走るのみ。

「し、シルフィ!雪男なんか多いんだけど!」

「もう!どうにでもなってよ!」

「……やるっきゃ……ない……!」

 それぞれの武器を構え、雪男を待ち受ける三人は、心の中で走り出した二人の無事を祈っていた。



 走り出して数分、洞窟の最深部へと出た。

「…………デケェ……」

 翼竜の巣。それは巨大なドーム型空間だった。

 そして……巨大な翼竜がその空間の中央で俺たち二人を睨みつけていた。

「……シャナ」

「応答。いけます。」

 構える二人を見た翼竜は────吠える。


 グォォォォォオオオオオオオオオンッ!!


 その咆哮はドーム型の空間を震動させた。

 翼竜とはいえ、竜は竜だ。かなりの強さを誇るはずだ。

 それなのに……なんでだろうな。


「質問。主様、なぜ笑う?」


 そう────俺は笑っていたのだ。

「さぁな?」

 そう返した。それ以外に返す言葉がなかったから。

「いくぞ……シャナ」

「応答。もちろんです」

 もう一度合図をすると、シャナが武装を展開する。


展開(アインザス)……『竜殺しの聖典(ドランベイン・シュイスター)』」


 その声に呼応するかのように、シャナの身の丈以上の大剣が出現する。

 竜殺し特化の剣と見て間違いないだろう。

「さて俺も、かな」

 斗真もひと振りの大剣を呼び出す。

 ドイツ英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』に登場する不死身の英雄が持つ大剣。

 竜を屠る剣。

 ────その銘は


「『竜堕剣(バルムンク)』……!!」

祝!二桁投稿!

十話ですよ十話!

少し掛かりすぎな感じがしましたが、頑張りました!

さて、もう次回予告をさせていただきます!


次回『翼竜(ワイバーン)竜堕剣(バルムンク)

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