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バランサー

登校中に異世界召喚!?

唐突に訪れた召喚先は……ゲーム内の世界とそっくり!?

驚きも最中にこの世界で果たすべきことを知ることになる。

この世界で果たすべきこととは────?

異世界の命運を任された一人の天才プレイヤーの運命は────?

チート過ぎる?関係ない!!

強すぎる主人公が送る異世界バトルファンタジー!!

 気が付くと、知らない景色が目の前に広がっていた。

 学校に向かうまでの通学路とは掛け離れた、中世ヨーロッパのような風景。

 目の色、髪の色が様々な人々。中には人ですらないような者もいる。

 しかし、決して騒いだりせず当たり前かのように、商売を、談笑を、生活をしていた。

 明らかに俺の住む国、日本ではない。

 まるで異世界だ。

 その異世界のような所の中の一人として俺はいた。それも唐突にだ。

 迷い込んだのか?

 それじゃ説明がつかない。

 どうなったら、日本からこんなところに移動するんだ。

 そして、不思議なことに────


 ────この街並みを、一部の人々を見たことがある。


 セイバーリンクオンライン、通称『セインク』

 世界中で売れまくってる擬似世界で冒険するゲームの人気タイトル。

 ゲーム内に意識を持ち込む技術が出来たのは数年前だが、二年前にはもう実用兼一般ゲームハードとして普及した。

 その中の一つがセインク。世界一、人気のVRMMORPGだ。

 その街並みにそっくりなのだ。

「……あ……え……?」

 よく分からない声を出す俺。

 状況を整理するまでもなく理解出来ているが、それでも混乱していた。

 俺は……通学路を歩いていたはず。

 なんでセインクに……?

 それに俺こと西尾斗真のアバター、『エルフィス・ギルフリード』の容姿とは掛け離れた実際の……制服姿の俺自身の背格好でログインは出来ないはずだ。

 サブアカウント禁止のセインクは制作した瞬間にアカウント凍結に、ハードを変えないとデータが戻ってこない仕組みになっている。

 つまり、俺のアカウントですらない。

 そして

「NPC……?が多すぎないか……?」

 NPC。ノンプレイヤーキャラクターの略称。

 コンピューターによる制御のもと動いているもの。

 そしてこの街、『アルファティア』は冒険者が最初に来る、いわばチュートリアルを行う街である。

 俺は地形だけでなく、街のNPCの会話や物品の品揃えまで完璧に把握している。

 その記憶からするに、これほど多くのNPCはいなかった。

 別のゲーム……?いや、それは無い。それだったらこの街のデザイン上、著作権などという法的問題が生じる。

 だとすると、ここはセインクの中ということになるが、NPCの多さが違うし、そもそもプレイヤー以外でこんなに活気は起こせない。

 じゃぁここはどこなんだ?

「あー……コホン」

 後ろからわざとらしい咳払いとともに制服の襟を捕まれ、後ろに強く引かれた。

「なっ!?」

 あまりにも突然だったため、バランスを崩し、一気に路地裏へと引きずられていく。

「ごめんね、急いでるの」

 俺を引きずっている人物からそう言われた。

 ……え?女の声なんだけど……。

 女に引きずられていることに動揺と、情けなさを覚えながら路地の奥へと移動した。

「ここでいいわね……離すよー」

「え?ちょ、わ!?」

 急に離され、頭を地面にぶつけてしまった。ちなみに地面は土だ。

「てめっ……いきなり何してくれ………てん……」

 美少女だ。

 それもとてつもなく、美しい少女。

 凛とした顔立ちにどこか幼さを残していて、茶色い目は少しつり目気味。髪は腰まであるような薄ら入っている太陽の光に反射して輝く銀髪がストレートになって、路地裏に吹くそよ風に微かに揺れている。

 起き上がる途中の姿勢なので背丈はよくわからないが、およそ150cmといったところだろう。

 服装はお洒落とは言いがたいが、動きやすそうな黒い長袖のインナーに二つの胸ポケットがついた薄い茶色のジャケットを上に重ね着し、さらに黒のローブを纏っていた。ジャケット越しにも分かるような膨らみがあった。下にはベージュの短パンに革製ながらも伸縮性に優れてそうな柔らかい白の靴を履いている。

「……何?私の顔になにか付いてる?」

 はっ、と我に帰り、再度起き上がる。

「あ……いや……」

 この世の人とは思えないくらい可愛くてつい。

 とは言えず、言葉を濁しながら目を逸らした。俺の悪い癖だ、すぐに目を逸らすのは。

「?まぁいいよ。急にこんなところまで引っ張ってきてごめんね?。あなたに用があったんだ」

「用……とは?」

 まだこの世界について分からない事だらけなのに用を頼まれてもなぁ……。

「でもまずは謝罪かな……」

 目の前の美少女は目を伏せた。

 少し言い辛そうに。


「あなたをこの世界、『セインクリバース』に召喚してごめんなさい」


 ……は?し、召喚?


「あなたにこの世界を救ってもらうわ……この世界を蝕む魔王を倒すことで」


 救う?魔王?倒す?

 そんなのまるで────


「セイバーリンクオンラインのグランドクエストのように」


 俺の頭には、ソロで魔王を倒したあの日の情景が走馬灯のように流れ始めた。


 ────二ヶ月前。

 半年に一回、今回で第四回のプレイヤーの頂点を決める大会『インダストグランドプレイヤー(以下IGP)』が運営により開かれた。

 優勝者には多額のお金(単位はセイク)と限定レア武器。

 そして……グランドクエストへの挑戦権。

 グランドクエスト名『物語の終焉』は最終ボス『魔王イルフリード・ギア・イシュタル』の討伐という至ってシンプルかつ、高難易度のクエスト。

 ボスの攻撃パターン不明。弱点不明。地形不明。ボス属性不明。取り巻きの有無不明。

 数々の不明要素が重なっている砦だ。

 もちろん三度、大会優勝者が挑んでいるものの、攻撃パターンを読む前に死んでしまっている。

 レイドレベル……いや、レイドでも返り討ちに遭うかもしれないこのクエストを、ソロで受けなくてはならない。

 それが優勝者としての本当の最強になるための挑戦権である。

 俺はその四度目のIGPに優勝した。

 歴代最速の決勝記録を残して。

 プレイヤーレベルMAXはもちろんのこと、各パラメーターもカンスト済み。このあたりはIGP上位ランカーは当たり前のようにしている。

 武器は運営に準備される支給武器によるもの。

 つまり、残りは技量のみとなる。

 はっきり言えることは────現実世界で格闘技や剣術を学んだ者の方がある程度有利になるということだ。

 しかし、俺はそんなもの会得していない。

 セインクにのみ対応する、『我流』を編み出し、それをIGPで使ったまでだ。

 俺の『我流・真化』には、準優勝者に対して圧倒的な差をつけた。

 HPバー半損の試合の決勝。

 それをノーダメージで終わらせたのだ。

 準優勝したプレイヤーの顔を……アバター越しに伝わる顔を忘れることは出来ない。

『化け物』

 それを見るような怯えた顔だった。

 表彰を受け、ゲーム内の情報屋に囲まれるより前に疾走し、失踪してやった。

 すぐに道具を揃え、『物語の終焉』を受注した。

 早く最強の称号を手に入れるために。

 それから……無我夢中で斬り続けた。

 それから────


「回想は置いといてもらえるかな?」

 頭の中をめぐる回想から、美少女の一言で抜け出した。

 顔を上げると、美少女呆れた顔で俺を見ていた。

「あ……ごめん」

「まぁ……嫌なことでも思い出せちゃったみたいだね?ごめんね?」

 図星だった。

「……それは置いといて、あんたは一体何者なんだ?セインクのことも……恐らく俺のことも知ってるみたいだけど」

「うん、知ってるよ」

 即答でいう美少女は、長い髪をかきあげた。

 その姿も絵になっていて、思わず見惚れてしまいそうだった。

「私の名前は『シルフィ』。一応この世界の主神なんだよ?」

 ……はい?なんとおっしゃいました?

 主神!?この世界……セインクリバースの主神!?

 え?神様なの!?偉い方なの!?

「驚くことも無理はないね。本来主神たるもの、その世界の天界にいなくてはいけない存在、普通下界なんかにいないもの」

 溜息をつく美少女────シルフィは腰に手を当てながら言葉を続けた。

 あ、おっぱい揺れた。

「その変態思考を止めてもらえない……?」

 睨まれた。当たり前か。

「思春期真っ盛りの男子高校生だぞ……仕方ないっちゃ仕方ないだろ」

「それを抑制するのが紳士というものじゃないの?」

 正論。ぐうの音も出ないよ。

「……続けるよ?主神の私がここにいる理由は、この世界のバランスを保つためなの」

「バランス?」

「うん。知っての通りここは異世界。日本と違って魔物もいれば魔王もいる世界」

 シルフィはしっかりと俺の目を見ながら話を続ける。

「ここ百年のうちにね、魔王軍が力をつけ過ぎた……それによって、人、亜人、獣人達一般市民の部類に入る人達が凄く減らされたの」

「つまり人間達一般市民と魔王軍……いや魔物の割合がおかしくなった、ってことか」

「そういうこと」

 シルフィは少し苦笑いしながら続けた。

「君を呼んだのはね?そのバランスを正常に戻すためなんだよ。方法としては魔王軍の壊滅かな」

「ちょっと待て」

 それじゃ今度は一般市民が増え過ぎるんじゃないのかよ。

 そう言うと彼女は首を横に振った。

「この世界には、セイバーリンクオンラインと違うところがいくつもあるの」

「……一般型NPCに亜人、獣人の追加もそのうちの一つだな」

「うん、理解が早くて助かるよ」

「他には何が違うんだ?」

 シルフィはしゃがみ、土の地面に腰に差したナイフの木製の鞘で描く。

 真ん中に直径十センチほどの円。その周りに直径三センチほどの小さな円を四つ描かれていた。

「真ん中の大きい円が一般市民。周りの小さな円が全て別々の魔王軍なの」

「は?」

「セイバーリンクオンラインと違うところ、それは」


「魔王が四人いるの」


 ……は?なんだよそれ……。

「君には魔王軍四つを壊滅してもらうよ」

「鬼ゲー過ぎんだろ!!」

 魔王が四人!?なんのマゾゲーだよ!!

 面白味があってもストーリーが立てらんねぇだろ!!

「ほんとにそうよ……恨むなら前任の神様恨んでね」

「……めちゃくちゃじゃねぇか」

 丸以外は多分魔物のいる森とかだろうな。それも移動が面倒だな……。

「あくまで組織図みたいなものだよ。詳しい地図はまた後で渡すよ」

「お、おう……」

 あ、そういやシルフィ……様は神様だっけ。敬語敬語。

「了解しましたシルフィ様。私はどのような行動を取ればよろしいのでしょう」

「……」

 明らかに『うわぁ……』って顔したよこの神様。いや、女神か?

 女神様ならなおのことこんな顔しねぇだろ普通。知らねーけど。

「無理に敬語、使わなくていいよ。私も今のところ君と同じ立場なんだから」

「え、なんで?主神だろ?おかしいだろ」

「君のせいだよ……」

 シルフィは目を横に逸らしながら呟くようにボソボソ何かを言った。

「え?なんて?」

「だーかーらー!!」


「君を召喚するためには私が下界にこないと出来なかったの!!」


「バランス取れてない今、私が下界に降りたら、バランス取れるまでここにいなきゃいけないし……」

 どうやら召喚の時に色々と制約でも受けたらしい。表情が物語ってる。

「……自分から呼んだくせに俺のせいにすんなよな」

「うっ……」

 シルフィは少したじろいだが、すぐに持ち直す。

「ともかく!バランス取れるまでは……魔王軍四つの壊滅!これができるまで帰れないの!!」

 駄々をこねる子供のように叫ぶシルフィは、深呼吸をして呼吸を整えた。

「今から私と君のプレイヤー……この世界では『冒険者』だね、それの登録に行かないといけないんだ」

「冒険者ギルドか」

「そーゆうこと!この街の中心に行かないとね」

 親指を立てたシルフィは路地裏から出るように歩き始めた。

「今の君は私の力で、セインクのステータスになってるから……まぁ強いよね」

 いやチート!?

「でも冒険者じゃないから、勝手にモンスター達を倒しちゃ捕まるんだよね……」

「めんどくせぇな……」

「だから、ね?」

 シルフィは大通りに出る手前で振り返ってこちらを向いた。

「早く行くよ!日が暮れちゃう!」

「ま、待てよ!今行くから……」

 シルフィの背後から指す光のせいもあってか……いや、それが無くてもその笑顔は輝いていた。



 異世界召喚から数分しか経ってないが、俺は早くもこの地でやるべきことを女神から言い渡された。

 先は恐らく長いだろうな……。


 だか、悪くなさそうだ。


 俺は少し笑いながらシルフィの後を追いかけた。

 この世界を救うために。

 大通りに出る直前、呟くように決意を表した。



「ハロー異世界。世界一強いチーターが助けに来だぜ」

おはようございます。こんにちは。こんばんは。

神矢輝と申します。

この度、この小説を書き始めました。

やっと……異世界に手を付けました(人生初)。笑。

別作品も同時進行で執筆していきますので、よろしくお願いします。

お楽しみ頂けると幸いです。

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