表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほらっ、ホラ〜だよ  作者: 灰色の猫
6/34

消しゴム


 授業中に声が聞こえた。


「はじめまして☆」


 最後に星のマークがあったかどうかは定かじゃないが、俺にはそう聞こえた。


 俺はそんな能天気な声の主を探した。辺りを見回していたら先生に注意をされた。それもそうだ。今は四月でもないし、そもそも授業中に挨拶してくる馬鹿は、この教室の生徒の中にはいない。


「はじめまして☆」


 そいつは俺の目の前にいた。


「はじめまして☆僕消しゴムだよ」


 信じられなかった。一週間オナ禁しているから、ついに禁断症状が出たんだと思った。小さな消しゴムが喋った。角がまるくなり、ケースもない丸裸の消しゴムが挨拶をしてきた。


「僕、消しゴム☆なんでも消すよ」

 そんな芸名みたいに星マークを使うなよ。分かったから喋るな。ボソボソと俺は消しゴムに話しかけた。月に行った人間は何人かいるが、消しゴムと話した人間は多分俺だけ。帰ったら寝よう。そしたら悪い夢で終わる。そうだ。



「それじゃあ、今から小テストやるぞ〜」


 え〜、とざわつく教室。けど俺にとっては大したことないハプニングだった。


「僕、消しゴム☆なんでも消しちゃうよ」


 消しゴムが目の前で喋ってるんだから。



「じゃあ今から、授業時間終わるまでな〜」


 先生の合図で始まった小テスト。


「僕、消しゴム☆なんでも消せるよ」


 相変わらず喋ってる。


「名前、なんかしっくりこないな」


 俺はバランスに気を使う。書道を習っているせいなのか、自分の名前ですらバランスよく書けるまで手直しをしてしまう。


「僕、消しゴム☆なんでも消しちゃうんだ」


「ちょっと文字のサイズが小さいかな、ほれ、お前の出番だぞ」


「僕、消しゴム☆人だって消せるんだ」


「どういう意味だ?」


 まあ、いいや。早くしないと時間が無くなる。


「僕、消しゴム☆」


 ゴシゴシ。


「存在なんかも消せるんだよ☆」


 俺が聞いた最後の言葉だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ