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ほらっ、ホラ〜だよ  作者: 灰色の猫
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熱心な読者


 先日、ある小説サイトで一万字ちょいの恋愛小説を投稿した。幼馴染みとのベタベタな恋愛作品。実際にいる幼馴染みとの『もしも話』を妄想して書いたものだ。書けた満足感からか、その日はぐっすり眠れた。

 次の日にサイトを覗くと、感想が届いていた。


『はじめまして、ミーナと言います。作品読みました。甘酸っぱい恋愛、面白かったです。次作も楽しみにしていますね』


 感想自体は初めてじゃないけど、褒めてくれる読者は初めてて舞い上がった。自分の言葉で、誰かを感動させれたという達成感で。


 結局感想はその人だけで、閲覧数も初日以降伸びる事はなかった。


 けどある日、その作品の閲覧数をチェックしていたら、異常な日があることに気が付いた。閲覧数は千桁なのに閲覧者は一人。どういう事だ。一人で何回も読み直したのか。そんな異常な事が何回か続いた。


 元々、そこまで執筆に割ける時間もないから、あれ以降新作を投稿できないでいた。


 久しぶりにサイトを覗いたら直でメッセージが来ていた。


『ミーナです。リアルで忙しいですかね? 新作待っています』


 あの人だった。待ってくれている人がいるのを知って嬉しくなった。その時は創作意欲が沸き、ある程度のプロットが出来た。また恋愛ものだが。


 それから数日して執筆しようと思いサイトを覗いた。そしたらまた直でメッセージが届いた。


『ねぇ、まだ?』


 ミーナだった。苛立ちの後に申し訳ない感情が出てきた。とりあえず一話を投稿しておいた。


『また恋愛もの?』



 またミーナさんからメッセージが来ていた。その日は書く気が起きず、更新はしなかった。


『テンプレもの書いてよ。異世界ものとかさ』



 次の日も来ていた。ここでやっと怖いと思い、ミーナさんをブロックして作品の続きを考えていた。すると携帯が鳴った。 知らない番号だった。誰かの間違い電話かと思い、出なかった。着信音が切れた瞬間に、ショートメールの着信音が鳴った。なんだなんだと見てみると、



『なんで出ないの? もしかして異世界もの書いてる途中?』


 俺は携帯を投げた。なんで知っているんだ。もしかして知り合いがミーナさん? いや、小説書いているのを公言した事はない。俺は執筆をやめようと思い、書きかけの文章を保存した。そしたらマイページに新着メッセージの表示が。



『ミイナだよ。携帯投げたら壊れちゃうよ☆執筆頑張ってね』


 部屋を見渡した。どこかにカメラがあるのか? 辺りの物をしらみつぶしに探したが見つからなかった。


 着信音が鳴った。怖くなった。電源を切った。


――ピンポーン――


 めちゃくちゃになった部屋に鳴り響いた。


――ピンポーン――


――ピンポーン――


――ピンポーン――


――コン、コン、コン――


――コン、コン、コン――


 やがて玄関の前からコツコツと歩いていく音が聞こえてきた。


 俺は次の日、早々に引っ越した。携帯も替えた。ミーナと思われる人からの嫌がらせは無くなった。



 俺はこんな昔の実体験を小説にして投稿した。今思えば、それなりにネタにできる過去。夏ということもありそれなりに好評だった。何人かから好意的な感想ももらえた。ミーナに感謝しなくては、そんな馬鹿なことも思っていた。


 そしてまた新着メッセージが来た。



『ミーナです。なかなか怖くて面白かったです。次作の異世界もの期待してますね』



 携帯の着信音が鳴った。


――ピンポーン――


 同じ奴なのか、それとも別なミーナなのか、今の俺にはどっちでも良かった。

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