表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほらっ、ホラ〜だよ  作者: 灰色の猫
34/34

しのさき


 隣の県まで、連休を利用して車で遊びに行ったんだ。彼女と一緒に話題の水族館に。お互い、生き物やら水槽やらの電飾とか、あういう感じの光り物が好きな事もあって盛り上がったデートになった。


 一日目はその辺のラブホに泊まった。普通のホテルだと、なんかね。だからラブホの方が気が楽だった。


 二日目は名物の旨いもんを食いまくった。ちょうど秋ということもあって、何を食べても美味しかった。


 連休最後の三日目は、家でゆっくり過ごしたかったから二日目の夜に帰る事にしたんだ。行きは高速で来たんだけど、帰りは国道でゆっくり帰る事にした。晩飯も秋の旬を堪能した後、車のガソリンも満タンにして。


 初めて通る道で、思ってた以上に寂れていた。コンビニも三十分前に見てから、次に現れる気配もない。民家も無くなり、辺りは林というのか、森と言えば良いのか。単調な景色に会話も少なくなり、いつしか助手席の彼女も寝ていた。かけていた音楽の音を小さくした。


 たまに対向車が通る事で、なんとか眠気を覚ましていた。


 いよいよ限界、というとこでいきなり淡いオレンジのコンビニの灯りが見えてきた。助かった。少し仮眠しよう。


 ただ仮眠していくのも悪い気がして、寝る前にコンビニで何か買うことにした。


 一応、彼女を起こしてみたが起きる気配がない。諦めて一人でコンビニへ行くことにした。彼女が好きなオレンジジュースでも買っとこう。


 名前は聞いたことがないコンビニだった。たまにこういう店はある。特定の地域内だけで異常に栄えている店とか。だから特に気にはしなかった。『しのさき』という名前でも。


 自動の入り口を通ると陽気なチャイムが鳴った。店員の声は聞こえなかったが、まあ深夜だし気にはならなかった。どうせ店内のカメラでチェックされてるだろうし。


 尿意を感じたから買い物の前にトイレに入った。ご自由にと書かれた扉を開けたら、少し汚めな空間だった。洗面台は水垢が目立ち、鏡もなんだかぼやけて見える。まあ、こんなもんだと思い、個室に入った。用を済ませて出ようと思ったら扉が開かない。たてつけが悪いのか、ちょっと隙間ができるだけで身体を通せるほどでもなかった。


 焦りと共に、なんだか滑稽に思えてきた。少し声色を良くして店員に気づいてもらえるように声を出した。


「すいませ〜ん」


 反応はなかった。何度声をかけても。携帯も車に置いてきてしまった。


 まあ、いいか。気づいてもらえるまでここで仮眠するか。少し臭うが仕方がない。こんな異常事態でも俺の眠気はますます深くなっていた。便器に蓋をして、前屈みに座りながら眠る姿勢に入った。俺は目を閉じると同時に眠りについた。




 ドンドンドン。ドンドンドン。ドンドンドン。



 なんだか頭の中で響いている。うるさい。せっかく気持ちよく寝れているのに。




「おい、あんた! 大丈夫か?」



 大丈夫? ああ、そういえばトイレに閉じ込められたんだっけ。店員がやっと気づいたのか。


 目を開けると、俺は車の運転席にいた。運転席側の窓には見知らぬオッサンがいた。それよりも目の前には木があった。車が木にぶつかっていた。わけが分からなかった。いつ事故にあったのか。



 それ以上に分からなかったのは助手席にいるはずの彼女が居なかった事だ。


 なぜ。どうして。


 代わりに助手席にはオレンジジュースとレシートがあった。


 やっぱりコンビニがあったのは間違いない。俺はレシートを確認した。そこにはこう書いてあった。




『死の先


 オレンジジュース


 お代    あなた』と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ