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消えた煙草
一日一箱は吸ってしまうヘビースモーカーの俺。朝に何本、昼に何本、夜に何本、だいたい決まっていて、夜寝る前に空の箱をごみ箱に捨てるのが日課となっていた。
でも、今日の朝はおかしかった。朝の目覚めの一本を吸ったあと、何本か煙草が消えていた。
妻は昨日から機嫌が良い。あいつの嫌いな煙草の話をして機嫌を損ねるのも悪手だ。この前、保険料がどうたら言っていたのは遠回しに煙草を止めろと言っているのだろうか。冗談じゃない。無趣味な俺の唯一の楽しみだ。それだけは勘弁。
とにかく、煙草どこにやったかな。寝室に落としたかな。まあ、夜に探すか。
「はい、あなた、珈琲よ。今日からちょっと豆を変えたの」
「お、ありがとう」
ん、ちょっと苦いな。まあ、こんなもんなのか。うっ。
「ゴフッ」
「キャアアッ」
珈琲と自分の血が混じった液体がテーブルに拡がる。そこに突っ伏したまま見た妻の顔は。
やはり……上機嫌だった。




