おはよう
昨日、夢をみた。
正確には今日の午前一時だが、細かい事はいい。
どんな夢か、はっきりと覚えている。生々しくて今でも汗が止まらない。どうしたら忘れる事ができるのか、悩んでいたら余計に思い出してしまう。悪循環。こんな時は、いつものように過ごすのが一番なのかもしれない。そうだな。彼女におはようのメールでもしよう。他者と会話して落ち着こう。
『おはよう、今日もいい天気だね』
良し、と。
――♪♪――
すぐに着信が鳴る。よし、落ち着いてきた。シャワー浴びて汗とか流そう。このままの匂いじゃあ外に出れない。
「うわ、なんで風呂場に血が」
昨日、彼女がシャワー使ってたけど、あの日だったのかな。たくっ、流していけよ。にしても、あの夢は嫌だったな。なんで僕が彼女を殺す夢をみなきゃいけないんだよ。首なんか絞めて。……年下だけどしっかりしてて、料理も上手い。付き合っていて不満もない。一緒に街を歩けば周囲の男達の視線が気になるくらい。そう、そのくらい。だいたい、彼女はもうこの世にはいないのに。
「ふう」
だいぶさっぱりしたな。そういえば生ゴミの日っていつだったっけ。……お、ちょうど今日か。良かった。ちょっと溜まってて臭いがしてたんだよな。
――ガチャ――
「あらっ、おはようございます。」
「あ、おはようございます。大家さん」
「あらっ、それは生ゴミかしら」
「そうですよ、ちょっと溜まっちゃいまして」
「そういえば私の家もあったわね、おかげで思い出しました。ありがとうございます」
「いえいえ」
そう、あれは夢だ。
だって僕は刺して殺したんだから、彼女を。