プロローグ 異世界会議へようこそ!
キリがいいので、プロローグ短めです。一話も続けて投稿します。
プロローグ 異世界会議へようこそ!
俺の嫌いな映画の話をしよう。
それは、とある戦争映画だった。
いや、まぁ、戦争映画が大好物、もう人が吹き飛ぶシーンとか涎が溢れるぜ! という類の人間はあまりいないような気がするが、そういう意味で嫌いなのでないことはあらかじめ言っておく。
その映画のクライマックス、主人公がこんなセリフを叫んだのだ。
「敵だって? いいや、違う。あれは傷ついた人間だ!」
と。
要するに、今まで憎い敵にしか見えていなかったものが、時に化物にさえ見えていたものが、突如として自分たちと同じ人間であると気づくという感動的なシーンだ。
たぶん見た人間のほとんどが涙を噛みしめるであろうこのシーンを見て、俺は思ったのだ。
「いやいやいや、今さら気づいたんかい!」
思わず下手な関西弁を使ってしまうほどの勢いでツッコミを入れてしまったわけだ。
いや、だってそうだろう?
相手が人間? 喜怒哀楽の感情を持ち、故郷には家族がいて、銃で撃てば傷つき死ぬ?
そんな当たり前のことに、今まで気づかなかったのか? そんな簡単なことに気づかなかったから、今まで殺し合いをしてただって? じゃあ、今までに死んだ奴はなんだったんだよ?
とまぁ、そんな具合で、納得がいかなかったというか、悲しくなってしまったわけだ。
だからなんだろうか? 俺は、たとえ相手が誰であれ、男であれ女であれ、子どもであれ大人であれ、髪の色が金だろうが赤だろうが黒だろうが、常に思ってしまうのだ。
話せばわかる! と。
なぜなら、相手は同じ人間。
殴れば痛み、悲しければ泣き、怒る、同じ人間なのだから、わからないはずがないって。
それは、もしかすると俺の信念とも呼べるものなのかもしれない。
「というような話をですね、していたことを、おぼえてますか? ツグルお兄さん」
「いや、もう、ぜんっぜん、欠片ほどもおぼえてな……」
「そうですか、思い出せませんか? こう、いい感じの角度にですね、あごを上げて、いささかスカした感じで言ってたんですけど、こう、腕組みなんかして……」
「ああ! もう、おぼえてるよ。っていうか、思い出したよ。ったく、なんでるり子ちゃんの前でそんな話をしてしまったのか、過去の自分を殴りたいよ!」
「あっは、ダメですよ。そんなに自分を卑下しちゃ。格好よかったですよ、ツグルお兄さん。それでからかおうなんていう、るり子の性格がひん曲がってるだけですから、あまり自分を責めないでください」
「……っていうかさ、どうしてそんな話をいきなりしたんだい? るり子ちゃん」
「いえ、この物語を始めるにあたって、ちょうどいい逸話だったもので。まぁ、そんな具合に場が温まってきたところで、それではそろそろ始めましょうか? 異世界会議、本日の議題は……」
はじめまして、餅月望です。
一応、ライトノベル作家をしています。
この作品は、いくつかの出版社に持ち込み、微妙なところまで行ったのに出版に至らなかったというほろ苦い思い出のある作品です。このままPCの中で肥料にしてしまうのもアレだと思い、投稿してみました。
なろうっぽくない&書いたのが少し昔なので古臭い部分があるやもしれませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。