ある姫の心
ずいぶん前に書いた『忍恋』改め『ある忍びの心』から発生
お姫様目線です
目前にあるのは貴方の顔
驚きで目を見開きました
気遣わしげに私の着物に巡らせる貴方の視線
抱擁を認識した瞬間上がった熱
次の瞬間に触れてしまった液体に
その正体に気づき涙が溢れ出しました
間者の攻撃を受け倒れる貴方
最期の願いを聞いた私は
あの時のように貴方に笑顔を向けました
最初の出会いは、
初めてお父様にに呼ばれたあの日
まだあどけなさの残る貴方に出会いました
面を上げ、その瞳に私を写した時
私は貴方を愛してしまいました
どんな時も側に居てくださいました
貴方に会いに勉学から逃亡を図ったときも
共に城の外にこっそり出たときも
同じ景色を見るために木の上に上ったときも
...貴方に頂いた小鳥が死した時も...
毎日見つける貴方の新しい表情
その多くは私と共に居るときに見せるもの
日に日に募る貴方への思い
誰にも悟られ無いようにと隠しました
ただ一人気づいていたのは貴方の相棒だけ
隠し続けて数年
私の輿入れが決まってしまった
相手は幼き頃から出入りしていた武将
絶望の中あの方にそのことを告げました
表情を変えない貴方が憎らしかった
白無垢に身を包んだ私
だけどこの身に駆け巡る思いは漆黒
その夜貴方は任務で居なかった
初夜の相手を呆然と見つめながら
貴方を想い涙を流しました
いく年月が過ぎ戦が始まりました
次の戦場へと行く前に夫が
此度の戦を終えたら話があると告げました
出撃前に呟いた言の葉
いったい如何言う意味だったのでしょうか?
数日たったある日
嫌な予感がこの身を駆け巡る
不安が募りだれぞ呼ぼうとしたその時
突如降り立った黒い影
鈍い光を認識した瞬間、目の前が黒に染まりました
最初に感じたのは力強い抱擁
次に理解したのは貴方の匂い
初めて抱きしめられて感じるその温もり
不謹慎だが幸せだと思ってしまいました
頬に感じる何かを拭うあなたの手
満足げなその顔の色は..蒼白
何が起こったのか分かりたくありませんでした
取り乱し叫ぶ私に掠れた声で呟いた貴方
最期に見た貴方の顔は満ち足りたものでした
もしもこの世に神様がいらっしゃるのなら
一つだけ我侭を叶えて下さいまし
もしも来世と言う物があるのならば
たった一つだけの望みを叶えて下さいまし
もしも運命と言うものが決められるのでしたら
一つの宿命をお与え下さいまし
次に生を受けるときには
その時は平和な世であることをお願いいたします
次に生を受けるときには
身分など無い時代に生きとうございます
次に生を受けるときには
二人が共に生きる事が許されますように...
(ある時代、ある場所で
ある男女が巡り合う
それは果たして叶わなかった思いへの慈悲か
それとも強き想いの為せる事柄か__)
如何でしたでしょうか?
感想お待ちしております(ペコリ)