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光と闇の歯車  作者:
第1章
7/21

追憶

ああ、私は一体どうなるのだろう。重くて拷問死。軽くて斬首といったところだろうか。


悲しみも悔しさも、憎しみも後悔も浮かばない。何も思い浮かばない。


「疲れた」


私の声は石造りの牢の中に、冷たく響いた。


何日かぶりに声を出した気がする。日の光も入って来ないので、どのくらいの時間が経っているのか解らないが、長い間声を出していなかった。


身体が重い。ねっころがりてしまいたい。


腕を少し動かすと、ガシャガシャと金属の触れ合う耳障りな音がする。腕が鎖の付いた手錠で壁に繋がれている今、ねっころがったら手首がなお一層痛むだろう。その前に、ねっころがるのすら面倒に思える。


頭が痛い。四肢が痛い。どうでもいい。痛いから何だっていうんだ。関係無い。


何故私は何時も何時も皆に嫌われるんだ。努力しても認められない。いくら功績を揚げても、不気味がられる。


「何故ですか。父様。母様」


物心付いた時から、長年抱いてきた疑問。


私が女だからか?私が弱いからか?


違う。答えは既に出ている。父様と母様から、答えは貰っている。


『お前を可愛い娘だと思ったことは、一度だって無い。貴様など要らん存在でしかない』

『貴方なんて生まれて来なければ良かったのよ』


冷たく嫌悪と侮蔑が入り混じった恐ろしい声。私は両親から名を呼んで貰ったことさえ無い。笑顔を向けられたことさえ無い。向けられたのは、負の感情。


『子供に癖に泣かないなんて、気味が悪い』


陰で良く言われた言葉。私だって泣きたかった。


だが泣いていたら、お前等はどうした?所詮子供。やっぱり弱い女だと嗤だろう。泣いても泣かなくても、批判され否定されることに変わりはない。


『大丈夫ですよ!赤い目だろうと何だろうと、私達は友達です』


ある少女が言った言葉。


『毒!?そんな!次は私が守ってあげますね』


優しい言葉だった。嬉しかった。


なのに、真意は違った。表面に騙された。


彼女は私を殺すための、暗殺者だった。毒を盛ったのも彼女だった。依頼人は父様だった。


結局私が彼女を殺した。嬉しいと思っていた筈なのに、殺してしまった。


全部全部、この目が赤いせいで嫌われる。一回だけ、この目をえぐり出してしまおうかと、考えたことがある。


『馬鹿!』

『ふざけんな馬鹿野郎!』


酷い罵声を飛ばされた。けど、何処か温か味のある言い方だった。


驚いていると、平手打ちをされた。


ルシアとヘイゼルとイリス将軍。私なんかに本気で怒ってくれた。そんなのは初めてで、どうすれば良いのか判らなかったが、私のことを大切にしてくれるというのは、理解出来た。


「それも嘘だったというのか…………?」


確かめるすべはない。嘘でなかったと願いたい。私の唯一無二の存在だったから。


『あんたは、どうするべきかより、どうしたいかを少し考えた方がいい』


城を抜け出して、酒場で知り合った奴に言われた。そいつとは、色々話した。話しの分かる奴だった。


私もあいつの言った様に、自分のやりたいことを少しでもやっていたら、何かが違ったのだろうか。


私はゆっくりと目を閉じた。


今更考えても仕方がない。どうせもう時期死ぬのだから。






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