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光と闇の歯車  作者:
第1章
5/21

回る歯車

 もしも、私が普通であったなら…………。

 もしも、私がまともであったなら…………。

 今はもっと、違っていただろうか…………。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 可愛らしい鐘の音が鳴る。会議の開始の合図。

ユミカは長い長方形の机の、一番奥の席に堂々と座っていた。大人達の中で一人子供がいるのは、なんとも異様な光景だった。


みなに来てもらったのは他でもない。パーティーの準備、進行の確認をするために集まってもらった」


その中で、臆することなく発言する姿は大したものだ。女王というだけのものはある。


「今から確認をしていくが、疑問に思った事や不手際が有ったら、すぐに言ってくれるとありがたい」


 凛々しく雄々しい姿はユミカ自身によく似合っている。だが、それ故に妬みや不満も少なくない。さながら、目の上のたんこぶと言ったところだ。


 ユミカが合図をし手元に多くの資料が配られる。その資料の内容を、すらすらと不安や緊張など、微塵も見せず確認して行く。おおかた、全てを覚えて理解しているのだろう。


 ユミカを辱めてやろう、と言うのが丸見えな男は下卑た笑顔を顔に浮かべ、わざと答えずらい疑問を口にする。


「こんな控えめな装飾では、権威を示せないのではないですか?」

「食客名簿を見ていないのか?食客は全て同盟国に加入している面々だ。今更権威の大きさを示したとこるで、何か変わるとは思えない。相手側とて、重々承知のはずだ。それにーーー」


そこで一回言葉を切り、不敵に悪戯っ子そうに微笑む。


「きっと装飾よりも、美しく着飾ったルシアに見とれると思うぞ」


ユミカにしては珍しい冗談だ。皆がポカンとした後、少しの間があって緊張感のある空気が一瞬で緩む。だがそうでない者が一人いる。ユミカを辱めてやろうとした男だ。


 下卑た笑みを屈辱と妬みに染めて、顔を醜く歪ませる。自分の歳よりも三分の一程度の小娘に、あんな言い方をされたのだ、顔位歪んで当然の事である。


「権威の大きさや品位に関しては、皆の腕の見せ所だ。任せたぞ!」


そうやって不敵に笑えば、皆が了承する。多くは渋々といった感じだが……。女王の命令とあっては従うより他無い。


「解散!各自準備に取り掛かってくれ」


凛とした声で場を絞め、会議は終了となった。




ーーーーーー錆び付いた歯車は間違いを引き起こす。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「ルシア、準備は出来たか?入るぞ」


軽くノックしたあと、了承を得て扉を開ける。シルクの布をふんだんに使ったドレスを纏うルシア。対して私は男性用の物だが……。


そこにいたルシアは華の様に美しかった。薔薇の様な豪奢さに、百合の様な清楚さ。向日葵の様な明るさとチューリップの様な可愛いらしさ。例えるなら華だろう。


「何?私に見惚れちゃった?」


ルシアは私の顔を覗きこみ、その美しく愛らしい顔に悪戯っ子の様な笑みを浮かべる。


「ああそうだな。見惚れてたよ」


面倒臭そうに返すと、えーと言って拗ねた振りをする。


「それよりルシア、誕生日おめでとう」


小さく微笑むと、ルシアは嬉しそうな顔をして言った。


「それだけ?贈り物は?良かったね。これでユミカがおばさんにならなくなった」


……………………。


喋らなければ、どっからどう見ても美少女なのに、勿体ない。


「ルシア。私はお前と六ヶ月しか変わらないが?」

「六ヶ月もだよ」


溜息をつき、肩を落とす。疲れた。


「エスコート役は私だが構わないか?」


それにクスクスと可愛らしく笑う。


「嫌と言ったらどうするの?そういうのは決める時に言うのよ」


それもそうだ。決定事項をわざわざ聞かなくても良いだろう。


「さ。行きましょう」


迎えに着た筈の私が最終的に促され、パーティーホールの大広間へと向かった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



王の挨拶も問題なく終わり、パーティーも滞り無く進んでいる。これなら心配なさそうだ。


その頃私は休暇として、カーテンの後ろの隅にいた。


「疲れた…………」


最初はルシアのすぐ側で護衛をしていたのだが、人が多く寄って来る為、途中でヘイゼルと交換したのである。特に多いのが、貴族の若い男だった。


「あの小娘。調子に乗りおって!笑顔で厭味ばかり。気に食わん!」

「全くだな。女王だかなんだか知ったこっちゃない。」


また私達の悪口か。最近は減ったと思っていたのだが………………。


「だいたい、忌み嫌われた赤目の分際で女王になどあってたまるか!」


やはり私への批判は大きいな。


私の目はオッドアイだ。左目はエメラルドグリーンでいたって普通だが、右目が赤い。何時もは眼帯をして隠してはいるが、幼い頃はしていなかったので、殆どの者がその事実を知っている。


「そこで者は相談なのだが、俺と手を組まないか?」

「手を組む?何のだ」

「反乱を起こして玉座を狙わないか?」


!!


ルシアに知らせないと!押さえ込むだけのことなら、私にも出来なくはないがそうすると、なお一層火種を生んでしまう。


話していた男二人の顔を確認し、足音一つさせずその場を立ち去った。





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