幸せな夢 2
俺は、ただ慌てる彼女をなんとなく眺めていた。
「とっ、とりあえず行ってくる!」
行ってらっしゃいと、笑顔で手を振る。
完全にユミカが消えた後、背後に威圧感。
「こら、…………ヘイゼル……………。」
その聞き慣れた恐ろしい声に、身体の全機能が一時停止する。カクカクと人形の様に、首を回して後ろを向くと案の定。イリス・カミア将軍。
先程、ユミカが指示を出した白髪の男というのが他でもない、彼である。
今の彼は、いつ怒鳴るか分からない。と、いった表情をしている。
「貴様、陛下を姫様などと呼びおって!何様のつもりだ。しかも、何だあの軽々しい口調は!!」
無言で立ち上がり、イリス将軍に背を向けたまま逃走。
イリス将軍は俺の上官なのである。たいへん厳しい人で、特に礼儀作法には容赦がない。その為、今のユミカへの対応を怒られているのだ。
「待たんか!!」
「嫌だよ!絶対俺、怒られんじゃん!」
「当たり前だ馬鹿者!」
叫びながらも必死で走るが、とうとう追いつかれてしまった。老人にはあるまじき、恐ろしい体力。
イリス将軍に首根っこを掴まれ、引きずられる。なんという怪力。
「全く、これだから最近の小僧は………………―――――――――――」
こっからが勝負だ。いつまで真面目に聞いているようにみせれるか。要は、いつまで小言を聞き流しているのが、ばれないか。
「真面目に話を聞かんか!!」
やはりばれたか。はっきり言って無理だ。どんなに辛抱強い奴でも堪えられないと思う。それに俺自信、辛抱強い方じゃない。
次の瞬間、頭が真っ白になった。余りの痛さに。
「痛てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
俺の頭に石の鉄槌が落ちたようだ。
「なにも、いきなり殴ることないでしょ!?」
抗議も虚しく無視され、明日の会議に絶対参加を言い渡された。
此処で少しユミカを恨んだ。まぁ、仕方のないことだけど……………………。