6.『魔の空気』の正体
遥か昔、この世界の悪い瘴気が長い年月をかけて蓄積された禍々しいものを『魔の空気』と呼んでいました。
はじめは、この世界の者たちで対処できたのです。
ですが、日々強くなっていく『魔の空気』に対処できない日が起こりました。
もうすぐ、この世界の崩壊が始まってしまいます。
そこで、グロンテの神は最終手段に出ました。異世界の聖なる巫女を召喚したのです。
そして、聖なる巫女と従者の方たちによってこの世界は平和を取り戻しました。
これに味をしめたグロンテの神によって、『魔の空気』が出現するごとに異世界から巫女を召喚するようになったのです。
はじめはよかったのですが、召還された巫女様にミソシール国からの同行者である第二皇子とグロンテの神が恋心を抱いてしまいました。
役目を終え、巫女様一行は元の世界に帰ろうとなさったのです。
巫女様にこの世界に留まって欲しかった第二皇子とグロンテの神の逆鱗に触れ、元の世界に帰る魔方陣をこの世界から永遠に使わせないため二人で壊してしまったのです。
それからがこの世界の苦難の始まりで、ミソシール国の栄光の始まりでした。
『魔の空気』は、異世界から召喚される巫女様でしか浄化できないようになってしまったのです。
召還された者たちの中に、元の世界に戻れないと気付く者たちもいました。
その者たちは役目を終えた後、他国に逃げミソシール国に利用されないようしました。
召還され、元の世界に戻れないと知った者たちのグロンテの神とミソシール国への恨みが『魔の空気』を強くする最大の原因となったのです。
それを知ってなお、ミソシール国は自国の利益追及のために異世界からの巫女様誘拐をし続けています。
彼らは自国のため、グロンテの神はあの少女を再び手に入れるためにこの世界を危機に晒し続けるのでした。
ーーースープ国 コンソーメ神殿 保存「グロンテの神とミソシール国の大罪」よりーーー
彼らはひどい二日酔いになっていたので、スープ国が用意した宿にすぐ向かって行きました。
その時に馬鹿は偉そうに「ミソシール国の代表として来ているのだから品位を落とすなよ」と言って行きました。今現在、その品位とやらを落としてる真っ最中の方には言われたくないですわね。
コンソーメ神殿に着くとそこの神官長が、『魔の空気』とグロンテの神の罪のことについて語りましたわ。そして、
「モロヘイーヤ神のご友人の神様のご友人はどなたでしょうか?」
「私ですわ」
「それでは、私についてきて下さい。他の方は、ここでお待ち下さい」
そして、大きな広間まで着くと神官長は
「ここで、その神様に拳で語り合うよう言われています。では、始めます」
と言い、私たちは闘い始めました。それから、三十分以上たって神官長による私の見極めが終わりました。
「あの神様が言っていた少女のようですね」
「どのようなことをあの神様は言ったのでしょう」
「グロンテの神に怒りの鉄槌を落とす方だと」
「ご自分でしないのですね。もちろん、私はグロンテの神をボコるつもりですわ」
「そうでしょうね。あなたが気が済むまでボコッた後にあの神様は来るそうです。ご自分の手で低級神をヤリたいだろうからと」
「やはり、グロンテ神は三流神でしたのね」
「でないと、罪悪感の欠片もなく異世界の巫女を誘拐して来ないでしょう」
「最低ですわね」
「ええ、自分より格下のモロヘイーヤ神の管理している世界から子どもを誘拐するまでは彼の思い通りになったのですが、自分より格上の神の管理する世界から子どもを誘拐したのが運のつきでしたね」
「私たちを誘拐したのを後悔させてあげましょう」
「では、ご自分を囮にしてはどうでしょうか? 神殿に保存されている書物の記述によれば里桜様は、グロンテ神が恋心を抱いた少女に瓜二つだと思われます」
「それは、いいことを聞きましたわ」
「それと、ミソシール国までこの壺をお持ち下さい。 コレを思い切り容赦なくグロンテ神に投げつければよいそうです」
こうして、内容はともかく終始にこやかに私たちは語り合いました。
そして、宿に着くと私はミソシール国に戻ることが旅の終わりだと実優さん、海さん、帆夏さんに告げました。
「ショートカットしすぎて、旅をした実感が全くないわね」
「そうだね。でも、すぐに元の世界に戻れると分かって嬉しいよ」
「うまくいくのか?」
「大丈夫ですわ。そのための武器を神官長に貰いましたもの」
翌日、馬鹿をはじめとしたミソシール国の私たちの監視役がこの国の神官たちの手によって、縄でグルグル巻きにされ転移魔方陣の前にいました。
そして神官たちは、彼らを気絶させ転移魔方陣の中に置きました。
私たちと神官長は、その後に魔方陣の中に入りましたわ。
これで、ミソシール国に戻ります。
ついに、グロンテの神をボコる時。楽しみで仕方がありませんわ。