2.旅立ちはお早めに
私は、用意された部屋の中に入って窓の外を見ると住んでいた街とは違う光景に本当に異世界に来たんだと実感いたしましたわ。
明日のために今は休む時です。今日はもう寝ましょう。
朝になって、目を覚ましましたわ。そしたら、ノックする音が聞こえたので返事をしました。
「はい。起きてますわ」
「では、もうすぐ朝食のお時間です。支度なさってください。それまでは、扉の前でお待ちしております」
「わかりましたわ」
私は着替え終わり、扉の前にいるメイドさんに声をかけました。
「お待たせいたしましたわ」
「いえ、お気になさらず。食堂までご案内します。申し訳ありませんが、王様はお忙しいので、私がこの世界の状況をあなた様方が朝食を食べている間にご説明します。その後、昨日の広間にて王様に会っていただきます」
私が食堂に到着した後に、海さん・実優さん・佐々木さんが来ました。
メイドさんによると
ここは、グロンテと呼ばれる世界。
ミソシール国、ポタージュ国、スープ国、ビシソワー国の4つの国があります。
数百年に一度『魔の空気』と呼ばれる不浄の空気がどこからともなく複数出現します。『魔の空気』は魔物を創り、この世界の住人を襲います。
そこで、異世界から巫女様と巫女様をお助けする従者を召喚するのです。巫女様はその『奇跡の手』で『魔の空気』を浄化することができます。
そして、役目を終えられた巫女様と従者の方は元の世界にお帰りになることができるのです。
ということらしいですわ。それでは、朝食も終えたことだし昨日の広間に向かいます。その時に、海さん・実優さん・佐々木さんに王様との会話は私に任せるように、頼みましたわ。
「昨日はゆっくり休めたか、異世界の者たち。申し訳ないが、公務で忙しいためすぐに来てもらった。『魔の空気』を浄化する旅に行ってもらうについて、旅を助ける4人の優れた男たちを選別した。必ずや役に立つであろう。今日から、魔物退治の訓練をしてもらう」
「王様、この世界はいま危機にあります。この世界のためにも、すぐに旅立ちたいと思います」
「すぐに旅立たなくてよい。訓練をしてからだ」
「いえ、困っている人々がいるのに呑気に訓練から始めている場合ではありません。私たちはこの世界を救うためによばれたのです。訓練なら、実践で慣れればよいだけ。それに、旅を助ける者を選別したとおっしゃていますがその者たちこそここに残して、この世界の住人のために助けを行うべきではないですか?」
「いや、お前たちはこの世界にとって必要な者だ。連れて行ってもらう」
「わかりました。早速、旅の準備を始めたいのですが」
「そうだな。すでに旅の準備をこちらでをした。旅に必要な紙幣も用意している。しっかりな」
「はい。ありがとうございます。これにて失礼します」
「そうだな。食堂で待っていろ。旅に必要なものと同行者をそこで引き合わせよう。お前たち同士の話し合いも必要だな。一時間くらいそこで待機するがよい」
そうして、広間から出てメイドさんの先導で食堂まで戻りましたわ。その後、メイドさんは紅茶の用意をして食堂を出ました。
「里桜、どういうこと?」
「説明するだろ」
「蓮見さん、どうしてすぐに旅立つの? 訓練したほうがよくない?」
「すぐに旅立つのはここの住人が信用できないからですわ。おそらく、私たちを元の世界に返す気はないでしょう。その証拠に、旅の同行者に男を4人選んでいたでしょう? きっと、私たちを誘惑させてこの世界に留まらせる目的ですわ」
「ちょと待ってよ。私は元の世界に戻りたいのよ」
「俺も」
「私も。決まっているじゃない」
「落ち着いてください。旅の間に元の世界に戻れる方法を私が探しますので、安心してください。それまでは、おとなしくこの世界を救うふりをしてもらえませんか?」
「それって、『魔の空気』を浄化する旅をちゃんとするってこと?」
「そうですわ。本当にしないと相手を騙せませんから」
「それもそうね。私たちは本当に帰らなければいけないもの。里桜は家同士の繋がりの婚約者がいるし、海は会社同士の繋がりのための婚約者がいるし、私は恋人がいるし、佐々木さんにいたっては、男バスが全国に行くための秘密兵器だしね」
「えぇっ? 蓮見さんと相沢君って、婚約者がいたの?」
「そうですわ」
「こう見えても、社長子息だしな」
「それと、佐々木さん。海さんのことは相沢君ではなくて海と呼んでくださいね。この世界の人たちは女の子と勘違いしていますし」
「俺、男だよ」
「元の世界に帰るのに必要なことですわ。やってくれますよね」
「強制かよ。仕方ないな。しゃべり方は?」
「今のままでかまいませんわ。知らない方には容姿に反した言葉遣いですが、それはそれで需要がありますもの」
「どんな重要だよ...」
「んー、でもさ里桜。このまま名字呼びだと運命共同体としてはおかしくない? いいよね呼び捨てで、帆夏」
「いきなり、馴れ馴れしすぎですわ。実優さん」
「いいよ、帆夏って呼んで」
「では、改めてよろしくお願いしますね。帆夏さん」
「俺は知っての通り海だけど、海呼びで、帆夏ちゃん」
「うん、里桜ちゃん。海ちゃん、実優ちゃん」
「本物の女の子にちゃん付けされるのは新鮮ですわね」
「それもそうね。」
「旅の同行者にも名前呼びをしてもらいましょう。統一しておかないとうっかり、海さんの性別がばれる場合がありますわ。親しくする気がない方に名前呼びされるのはイヤなのですが...」
そうやっていると旅の荷物と一緒に同行者たちがきました。
「君たちが、巫女様ご一行か。はじめまして。俺は、ビクトリアス・ミソシール。この国の第二皇子だ」
「はじめまして。私は、アクレサンダー・ハイデンブルト。この国で騎士隊長を務めております」
「僕は、ノア・ミストリア。魔法研究所の副所長をやってるんだ」
「私は、ガブリエル・メープル。神官をしております。昨日、あなた方がお会いしたのは私の父なのですよ」
「そうなのですか。私は、里桜と申します。こちらから、海さん、実優さん、帆夏さんですわ。呼び捨てでかまいません。これからよろしくお願いしますね。」
「早く旅立ってもいいことだし、すぐ行くか。そうだな、俺たちも呼び捨てでかまわないよ。それと君たちはアレか。巫女だと知れていく方がいいか?」
「いえ、知られずに行く方がよいと思いますわ」
「そうか、早速行こう。『魔の空気』浄化の旅へ」
こうして、私たちの旅の幕が開けたのでした。