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怪盗黒薔薇  作者: 杠葉 湖
第3話 ニーナの登校
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第3話 ニーナの登校-1

「38度4分……完全に風邪ね」

 ニーナは体温計の数値を確認すると、確信めいた口調で百合に告げた。

「ゴホゴホッ……わかってます」

 ベッドに寝ている百合は、咳き込みながら答える。

 額には濡れたタオル、頭の下には氷枕。

 顔が赤く、息苦しそうにしながら、絶え間なく咳が出続ける。

「しっかし、とんでもない時に風邪引いちゃったねぇ」

「はい……」

 百合は頷き、視線を宙にさまよわせる。

 今日は古文の授業で小テストがある予定であった。

 期末考査や中間考査ではないため直接的には成績に影響がないが、普段の例から言うと、小テストが本試験のヒントになることが多々ある。

 成績優秀者の百合としては別に知らなくても問題ないのだが、通に勉強を教える場合、範囲を知っているのと知っていないのとでは、効率的な教え方をするという意味においては、大きな問題があった。

「ホント、しょうがないなぁ……」

 ニーナはため息をつくと、両手を前で合わせ、祈りを捧げるようなポーズを作り、言葉を発した。

「聖なる星の聖なる音。今、時の旋律に身を委ねし聖なる乙女に、その力をもって仮初の姿を与えよ。ドリームチェイン!」

 途端に、ニーナの体が光に包まれていく。

 そして光が収束すると、そこにはもう一人の百合が立っていた。

「……うん、こんなもんかな?」

 その少女は自分の姿を見て、ウンウン頷く。

「……何をしているんですか?ニーナさん」

 百合が不審げな眼差しでその少女を見る。

 その少女は、紛れもなく、百合に変身したニーナであった。

「いやぁ、百合ちゃんが倒れた責任の一端は、あたしにあるからさ」

 ニーナは申し訳なさそうに言うと、指を二度三度振った。

「でも安心して!今日はあたしが、百合ちゃんの代わりに学校に行ってきてあげるから!」

「えっ!?」

 突然の申し出に、百合は戸惑いの声を上げる。

 ニーナが高校に行きたいと言い出すなど、百合は全く想像していない展開であった。

「大丈夫大丈夫。百合ちゃんらしく振る舞うから」

 そんな百合の心配事を見透かすかのように、ニーナは言った。

「それとも、そんな体調で学校行く気?そんな聞き分けのない悪い子には、三笠連れてきて看病させちゃうぞ?」

「うっ……」

 三笠の言葉を出された途端、百合は言葉に詰まってしまう。

「じゃ、百合ちゃんも納得してくれたところで。行ってきまーす」

 ニーナはそのまま鞄を持て、部屋を出て行く。

「……ずるいです、ニーナさん……」

 一人残された百合は、誰もいない部屋の中でポツリと呟いた。

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