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怪盗黒薔薇  作者: 杠葉 湖
第8話 百合とニーナのマジックショー
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第8話 百合とニーナのマジックショー-8

 空は青く澄みきっていた。

 雲ひとつない快晴。

 行き交う人々も心なしか晴れ晴れとした表情で、紅葉がよく映えている。

 そんな天気のいい日に、百合と通は妹尾市民会館へとやってきていた。

 目的はもちろん、今話題の超魔術、ミスタートリックのマジックショーを鑑賞するためである。

 途中生中継が入るということもあり、テレビ局の人達や様々な機材があちらこちらに存在している。

 客席は既に満席になっており、観客はいまかいまかとショーのスタートを待ちわびていた。

 百合と通ももちろん例外ではない。

 ステージからちょうど真正面にあたる絶好の席に座りながら待っていた。

「いよいよですね」

「うん。今日は一体どんなマジックを見せてくれるんだろう?」

「きっと……ステキなマジックですよ。みんながあっと驚くような」

「そうだよね。トリックの魔術っていつも凄いから」

「はい」

 百合はクスッと笑った。

 館内の照明が落とされ暗くなる。

 ざわめく観客。

 ステージ中央が光に照らされ、一人の男性が現れた。

「ようこそ、わが魔術ショーへ。これからあなた達を夢幻の世界へと誘いましょう」

 その男、トリックが一礼すると拍手が沸きあがる。

 そしてトリックのマジックが始まった。

 ハトを出すものやトランプマジックといった基本的な物から空中浮遊や瞬間移動といった大技まで、惜しみなく披露していく。

 マジックが魔術を披露するたびに観客席からは凄い歓声と拍手が沸きあがっていた。

「凄いね、百合」

「はい、そうですね」

 通の言葉に百合は楽しそうに頷く。

 しかしその言葉とは裏腹に、心の中では冷めた目でこのショーを観賞していた。

 もちろん通といっしょ、ということで楽しくないはずはないのだが。

 やがてショーも佳境に入り、トリックの十八番である消失マジックを披露する時がやってきた。

 まずトリックが観客席の中から一人、ショーに参加してくれるアシスタントを選んで、その人物をステージに上がらせる。

 今回選ばれたのは中年の女性で、やはリ指に高価な宝石のついた指輪をはめていた。

 生中継が始まる。

 トリックがいつもの要領でその女性の指に白い布をかぶせて右手を前に突き出し、念をおくった後、白い布を華麗な動作で取り去る。

 消える指輪。

 青ざめる女性。

 ざわつく観衆。

 そしてトリックが財布を出すように指示すると、その中から指輪が出てきた。

 驚く女性。

 観客席からは盛大な拍手が送られる。

「(ふっ……ちょろいもんだぜ)」

 トリックは自分の完璧なまでの演技に酔いしれていた。

 と、突然体が硬直する。

「(……な、なんだ一体……)」

 突然の出来事にトリックは一瞬錯乱状態に陥った。

 身体の自由がきかない。

 声も出ない。

 まるで自分の体が別の意思を持ってしまったかのような感覚だった。

「(……ど、どうしたんだ……)おいっ!!」

 自分でも驚くほどの大きな声を張り上げる。

 静まり返る観客。

「こんなちゃちなマジックで感動してるんじゃねーよお前ら!!」

 カメラ目線でトリックは自分の意思とは無関係に演説を続ける。

「まったく、お前等のような無能なやつらのおかげで俺はとことん儲けさせてもらったぜ!!そのおばさんの指輪をイミテーションとすり替えたようにな!!」

 ざわざわと騒がしくなる観客席。

 トリックは自分の懐からまったく同じ指輪を取り出し、高々と掲げる。

「(バ、バカ!なにやってるんだ俺は!!やめろ!!)本物はこれだ!!今までのマジックでもすりかえさせてもらったぜ!!はーはははははははははっ!!」

 トリックは高笑いを始めた。

 途端に観客席から野次と罵声が飛んでくる。

 そして警察がどこからともなく現れて、逮捕令状を見せるとトリックに手錠をかけた。

 うなだれるトリック。

 懐から一輪の黒薔薇が落ちる。

 再びざわめく観客。

 中には「よくやったぞ!!ブラックローズ!!」と声援を贈る者もいる。

 こうして世紀のマジックショーは一転して前代未聞の公開逮捕劇となってしまった。

「な、なんだか凄い事になっちゃったね……」

「はい」

「あれ?百合はなんだか楽しそうだね?」

「いえ、そんなことはないですよ」

 目を丸くしている通の横で、百合は楽しそうに微笑み続けた。

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