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怪盗黒薔薇  作者: 杠葉 湖
第8話 百合とニーナのマジックショー
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第8話 百合とニーナのマジックショー-1

「えい、えいっ!!」

 百合は学校から帰ってくるなり、奇妙な叫び声を耳にした。

 何事かと思い、急いでその声の発生源と思われるリビングに行くと、ニーナがこれまた奇妙なポーズを取りながらテーブルの上に置かれている箱と対峙していた。

 瞳を閉じ、両手を前につきだし、手のひらを箱に向けて、そして時には震わせている。

 まるで何か念を送っている、そんな感じさえした。

「……なにをやってるんですか?」

 百合が恐る恐る尋ねたが、ニーナは黙ったままなにも言おうとしない。

「…………」

 百合は黙ったままその光景を見守ることにした。

 1分、2分、3分……

 時間だけが静かに流れていく。

 5分経過。

 その時、ニーナがカッと目を見開いた。

「やぁっ!!」

 甲高い声をあげるとともに両腕に力をこめる。

 しかし……何も起こらなかった。

「……はぁ、やっぱり駄目かぁ……あたし才能ないのかな?」

 ニーナはその結果にガックリと肩を落とし、そして深いため息をついた。

「あの……何をなさってたんですか?」

「えっ?なにって……見ての通り、ハンドパワーだけど?」

「ハンドパワー?」

「そうよ。あたしにも出来るんじゃないかなぁ、って思ってね」

 百合の再度の質問に、ニーナは大真面目にこう、答えた。

「それで……動いたんですか?」

「全然。ピクリとも」

 ニーナはため息をつくと、カーペットに身を投げ出した。

「あーあ、やっぱりダメだったか」

「あの、ニーナさん。ひとつお尋ねしてもよろしいですか?」

「なに?」

「ハンドパワーって、手品だっていうことはご存知ですよね?」

「えっ!?アレって魔法じゃなかったの!?」

 ニーナが驚いたように上体を起こした。

「……………………」

「……………………」

「……………………くすっ」

「あっ!!なによもう!!笑うことないじゃないの!!」

「ごめんなさい。だってニーナさん、魔法だなんて夢みたいなこといってるんですもの」

「ふーんだ。どーせあたしは夢見がちな少女ですよーだ」

 ニーナはぷんぷん怒りながら箱を開けた。

 中には少し冷めたたいやきが入っている。

 ニーナはそれを一匹とりだすと、口の中へと運んでいった。

「あーあ、無駄な時間過ごして損した。こんなことなら焼き立ての時に食べとけばよかった」

「もうすぐ夕食なのに……太りますよ?」

「太ってもいいもん。どーせあたしは無知で食っちゃ寝なオバケなんですから」

「ニーナさん。怒らないでくださいよ。笑ってしまったことは謝りますから」

「こーなったらヤケ食いしてやるんだからー!!」

 そしてニーナは怒りながらもあっという間にたい焼き10匹を平らげてしまったのだった。

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