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怪盗黒薔薇  作者: 杠葉 湖
第7話 ニーナのダイエット大作戦
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第7話 ニーナのダイエット大作戦-3

「それじゃ、はりきって行きましょっか!」

「なんで私まで……」

「ホラホラ、百合ちゃん諦めが悪いわよ。旅は道連れ世は情け、って言うじゃない」

「私は運動不足でもなければ走る必要なんてないんですけど……」

「もう、百合ちゃん!!」

「はいはい……わかりました……」

「うん、わかればよろしい。それじゃあレッツ・ゴー☆」

 ニーナは微笑みながらそう掛け声をかけて、走り出した。

 百合もその後をついていく。

 秋も深まってきたせいか、朝も早いことも手伝って少し肌寒かった。

 百合とニーナはそれぞれトレーニングウェアを着こんで、まだ薄暗い町の中を軽快に疾走していく。

 吐く息が少し白い。

「百合ちゃん頑張って。ホラ、いっちに、いっちに」

「ニーナさんこそスピードが落ちてきてますよ」

 百合とニーナは互いに励ましあいながら公園へとやってきた。

「ふぅ、少し休みましょっか。なんかジュース買ってくるけど、百合ちゃん何がいい?」

 先に立ち止まったニーナが百合にそう、尋ねてきた。

「スポーツドリンク、お願いします」

「了解♪」

 百合の返答を待って、ニーナは自販機の方向へと駆けていった。

「ふぅ……」

 百合は汗をぬぐいながら近くのベンチに腰掛けた。

 一瞬少し肌寒い風が、百合の体を吹きぬけていく。

 百合は公園を見渡した。

 少し大きめの公園で、ジョギングや朝の散歩コースとして妹尾市民に愛されてるこの公園には、既に色とりどりに色付いた紅葉が鮮やかに映えて、とても美しい光景を創り出している。

 しかしまだ朝が早いということも手伝ってか、普段見慣れてるはずの公園なのに、なんだかいつもと違う場所のような感じがした。

 たまにはこういうのもいいかな、と百合は思った。

「あっれぇ??四阿……さん?」

 ふと誰かに呼ばれたような声がしたので、百合はその声のした方角を振り向いた。

「あっ……水沢さん」

 そして百合も、驚きの声をあげる。

 それは百合のクラスの水沢つぼみであった。

 彼女は陸上部に所属していて、猪狩高志と友達以上恋人未満の関係にある、元気で活発な少女だ。

 つぼみは不思議そうな表情を作りながら百合に近づいてきた。

「珍しいね。ひょっとしてジョギング??」

「はい、そうです」

 つぼみの言葉に百合はそう答えた。

「四阿さんでもジョギングするんだ。ひょっとして走るのが好き、とか?」

「いえ、そういうわけではないんですけど……今日は走ってみようかなぁ、って思ったので」

 まさか無理矢理付き合わされたと答えるわけにもいかず、百合は苦笑しながらそう答えた。ウソはついていない。

「そうなんだ。でも、これでジョギングが好きになるといいね」

「水沢さんは毎日、ここ走ってらっしゃるんですか?」

「うん、そうだよ。私走るの好きだから。時々思いがけない人と出会えるしね」

「思いがけない人、ですか?」

「そう。今日は四阿さんに会ったでしょ?この前は人気ミュージシャンの上条一輝も走ってたし、あ、それから通君にも会ったことがあるよ」

「えっ!?通君に、ですか?」

 百合はその言葉を聞いて、衝撃を受けるとともにニーナの狙いが何であったか理解した。

 しかし、そんなことをつぼみが知るよしもない。

「まぁ、通君に会ったのは一回だけだから、あまり期待しないほうがいいかもよ?それじゃあね」

 つぼみはそう言って再び走りだした。

「通君……」

 百合は自分が通と併走する姿を想像して、思わず顔を赤らめてしまった。

「何やってるの百合ちゃん?」

 そこへニーナがスポーツドリンク二つを持って戻ってきた。

「い、いえ、なんでもないんです」

「そっかなぁ?なーんか怪しいぞ??」

 ニーナはニヤニヤしながらそう言う。

「気にしないでください。それよりもニーナさん、酷いです。通君がジョギングしてるってこと、どうして教えてくれなかったんですか?」

「え?なんで知ってるの??」

 百合の言葉を聞いてニーナは目を丸くした。

「さっき水沢さんに会ったんですよ。その時通君がここ通ることもお聞きしましたので」

「なーんだ。そうだったんだ。ビックリさせようかと思ってたのに」

 ニーナは舌をペロっとだしながらスポーツドリンクを百合に手渡した。

 百合はそれを受けとって、蓋を開け、勢いよく飲んだ。

 少し火照った体を冷やしてくれるようで、とても爽快な気分になった。

 ニーナも百合の隣に座ってゴクゴクゴクッと勢いよく飲み干す。

「ぷはーっ!!やっぱ運動の後はスポーツドリンクよねー」

「飲み過ぎに注意しないといけませんけどね」

「同感同感」

 百合とニーナは互いに顔を見合わせて、そして笑った。

「たまにはこういうのも、いいもんですよね」

「ホント?そう言って貰えると嬉しい。でも百合ちゃんごめんね。今日、三笠、こないみたいで」

「いえ、いいんです。通君とは学校でお会いできますから」

「そっか。そうだよね」

 ニーナは笑って、立ち上がった。

「それじゃ、もうひと頑張りしましょうか」

「はい、そうですね」

 百合も立ち上がる。

 だんだんと、陽が顔を出しはじめていた。

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