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第9話 リリアの想いとセリアの気持ち

 生活感を彩るようなタンス等の家具もなく、コンクリート打ちっぱなしの壁がそのままになっている無機質な部屋。セリアとオレは拉致された後にこの何もない部屋に監禁されていた。


「リリア、ごめんさない。こんなことに巻き込んでしまって」


 セリアが眉毛を寄せて申し訳なさそうに頭を下げてきた。オレはセリアに頭を下げる必要はないんだと言ってやりたい。そして、おまえはオレの大事な1人娘なのだから、絶対に守ってやると言って抱きしめたい。


 だが、今のオレにはそんなことは無理だ。ならば、少しでも彼女を安心させる為に微笑もう。


「気にしないでください。お姉ちゃん、私は大丈夫です」


 オレの言葉を聞いたセリアは突如として顔を伏せる。どうしたのだろうか。誘拐された時にどこか怪我でもしたのだろうか?


「どこか、痛いのですか? 大丈夫ですか?」


 オレが本当に大丈夫だろうかと心配をしていたら、急に顔を上げて毅然とした表情でこちらを見て、力強く抱きしめてきた。


「そうね。私はあなたのお姉さんだものね。いつまでも、悲嘆にくれているわけにはいかないわ。リリアだけでも、ここから家に帰れるように私がどんな目にあっても頼んでみる」


 彼女はオレの肩に手を乗せて、安心してと言ってオレに向けて微笑する。セリアはオレの知らない間に強くなったようだ。夜に怖い夢を見たと言っては、オレのもとまで駆け込んできた。あのセリアが人の為に気丈に振る舞おうとするとは…


 いかん、目から溢れそうになる水滴を押し止めることがこんなに困難だったなんて知らなかった。オレの頬を涙が滴る感触が伝わってきた。


「どうしたの? リリア、大丈夫? どこか痛いたいの?」


 オレの顔に滴る雫を見てセリアは心配そうにこちらを伺ってきた。


 セリア、大丈夫だよ。オレはただ思っていたよりも、娘がしっかりした女性に成長したことに感動して泣いているだけだからさ。


「大丈夫です。セリアお姉ちゃん、安心して少し涙が出てしまっただけです」


「大丈夫よ。リリア、私がいるわ。必ず家に帰れるからね」


 セリアがオレを安心させる為に微笑みを作り場を和ませようとしている。オレが娘を心配させてはいけないと涙を拭っていたら、急に扉からノックの音が聞こえてきた。


 その音に反応してセリアがオレを抱き寄せる。


「セリア王女様、入ってもよろしいでしょうか?」


 ノックした奴は声からすると男だろう。どうやら、誘拐犯のヴァルデンブルク解放戦線のメンバーが来たようだ。小さく震えながらも、気丈にオレに大丈夫だと言い続けているセリア。オレは彼女を守る為になにができるだろうか。


 オレは疲労でまわらない頭を必死に使い、彼女を守る方法を考えていた。そして、扉が静かに開く。

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