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第14話 ゲオルグと老将

 敵将の挑発に嬉々として乗る伯爵はどこか頭がオカシイのかもしれない。それは彼の嬉しさを抑えきれないと言わんばかりの笑顔からもわかる。ここで負けたら、国を再興するどころか、軍そのモノが瓦解するのに…


 一緒に乗馬している解放戦線のレオナードがどこか苦虫を噛み潰したような顔をしている。そうだよな。彼の人生を考えると滅んだヴァルデンブルク王国を復活させるためにひたすらに頑張ってきたんだ。そして、オレだってジークのクソ野郎に復讐はもちろん忘れないが、できる限りヴァルデンブルク王国のために尽くしたいと思っているのにさ。個人の楽しみを優先されるなんて…


そんなオレたちの気持ちなど露知(つゆし)らずに伯爵は、


「皆の者、手を出すでないぞ?」


 と宣い、彼のその発言を聞いていた部下が諦めたようにため息を吐いている。その諦めの境地からきっと、いつものことなのだろう。いや、オレの記憶が正しければ昔と変わっていないと言うべきなのだろう。まぁ、昔はもっと時と場所は選ぶ人だとオレは思っていたけどね。そんなことを考えていたら、


「いつか、ジジイと戦いたいと思っていたぞ!!」


 と馬蹄を響かせて、巨漢の敵将ゲオルグがいつの間にか眼下まで迫っていた。


「最強の魔術師。いや、 王国が生み出した最後の化け物。ジジイ、貴様を殺してオレはジークさまに仇なす敵をすべて殲滅してやる!!」


 巨漢が不敵に笑っている。それだけで多くの兵士の表情が凍りついているのに、


「小僧に魔術はいらぬ。ワッパには剣のみで相手をしてやろう。かかってくると良い」


 と伯爵は余裕だと言わんばかりに腰に刺さっていた剣を抜き微笑む。


「舐めるな! この一撃を受けてみよ!!」


 そう言ったゲオルグが馬を巧みに操り、伯爵の前まで駆ける。そして、ハノファード伯爵と間合いを詰め、持っていた槍を伯爵いる場所に目掛けて投げる。いきなりのことで伯爵が馬上で仰け反りながらも、槍を剣で叩き落としたと思ったら、ゲオルグが素早く腰にある剣を引き抜き鋭い斬撃を放つ。


「ッチ、止められたか!」


 悔しそうに顔を歪めるとゲオルグは伯爵を睨む。


「儂に剣で挑むなど100年は早いわい!」


「吐かせ! 老ぼれごときに遅れをとるわけないだろう!」


 そう言うとゲオルグは次々と馬上から剣による攻撃を放つ。しかし、伯爵はゲオルグが放つ攻撃をすべて軽くいなすと、


「では、こちらから行かせてもらおう!」


 と言った後に構えを変えた。彼は剣を高々と掲げて上段に構えると素早い動きでそれを振り下ろした。伯爵から放たれた斬撃は凄まじい威力だった。巨体である敵将ゲオルグがまるでゴミのように簡単に吹き飛ばされる形で落馬した。


 もちろん、敵将ゲオルグも常人の域を遥かに超えているので落ちた後、受け身をしてすぐに起き上がり体勢を立て直した。そして、彼は忌々しげに伯爵を睨む。


「なんじゃ? 馬から落ちたら儂に勝てないと言わんばかりに睨むでないわ。フッ、こっちも同じ条件で戦ってやるから安心せい!!」


 そう言って馬から飛び降りる伯爵。あまりのことに息を飲み呼吸を忘れたかのように唖然とする周りの兵士たちとオレ。いや、そんな自ら相手に勝てるチャンスを潰すって何がやりたいんだ!?


「後悔するぞ!」


 ゲオルグも驚愕の表情を見せるが勝算が見えてきたのだろう。彼はニヤニヤと笑っている。


「どうかな?」


 そう言ってゲオルグに歩み寄って行く伯爵。そして、彼は素早く剣を振るう。ゲオルグはそれを簡単に止め、笑みを強める。


「ほう、儂の剣技についてこれるようになったとはな!!」


「何年前のことを言っているのだ! 俺はもう剣技においてジジイ貴様を超えてるぞ!!」


 力強くそう言うゲオルグを伯爵がどこか力なく笑った。


「その程度で自惚れるから主は逆賊の部下になってしまったのじゃろうな。よかろう!」


 儂の本気を見せてやろうとそう言う伯爵はどこか悲しげな表情をしていた。

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