第20話 魔女と伯爵の攻防
伯爵の鋭い斬撃は空を切り、剣の衝撃で砕けた床の音が虚しく響き渡った。
「そんな攻撃が私に当たるわけがないでしょう!」
ルクレツィアの奴はいつの間に伯爵の懐に入り込み、拳を叩きつける。
伯爵は突然のルクレツィアの襲撃に肘を使って打撃から咄嗟に防御をするが間に合わない。
「今のは少しだけ、痛かったかもしれぬのう…」
伯爵は彼女の攻撃をなんともないと言わんばかりにそんな惚けた口調で語る。そう言う終えるや否や伯爵は、お返しとばかりに再度、ルクレツィアに斬りつける。
「いつまで、そんな減らず口がこの私に叩けるか見ものだわ!!」
そう言った彼女は微笑みを浮かべた後、再び懐に飛び込み襟首を掴み投げる。
「ぐぁ!?」
投げ飛ばされた伯爵はすぐさま起き上がると、
「やれやれ、儂のお気に入りの晴れ着が破れてしまったわい」
と言って頭を掻く。そんな彼を見ると軍服が詰襟から破れている。露わになっている逞しい肉体はオレが見ても惚れ惚れするくらいに筋骨が逞しい。特にあの腕から胸元を見ろよ。筋肉の塊じゃないか。
「って、あれはなんだ!?」
伯爵の胸元を見ていたオレは驚きの余りに声が漏れる。
「あら、あら、そういうことだったの。ようやく、わかったわ」
オレと同じく一瞬だけ驚愕の表情で染めた後にイヤラシイ笑みをニンマリと浮かべるルクレツィア。
その視線の先にいた伯爵の胸元には決して人間にあるはずのないエメラルド色の宝石が光輝いているのだった。




