表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/90

第18話 狙われたリリアの身体

「何を泣いているの? あなたは伯爵領の人だったのかしら?」


 オレの頬には気付かないうちに水滴が伝っていたようだ。我ながら、身勝手で気恥ずかしい。セリアが伯爵に殺されたと思い込んでフリッツおじさんを自らの手で殺そうとしたのに…


「うるさい! おまえにオレの気持ちのなにがわかるってんだよ!!」


 ついつい、怒りの余りに地が出てしまった。ああ、本当にオレは身勝手な奴だ。フリッツおじさんを殺したこいつに話しかけられただけで、怒りの余りに我を忘れてしまうなんて!!


「イヤねぇ、ヒステリックになっちゃってさ。あんな耄碌したジジイの死にあなたの涙はもったいないわ!!」


 なにがもったいないだ! ふざけるな!! 貴様に家族を殺された奴の気持ちがわかるのか!!


「でも、その泣き顔も良いわ。本当に素敵! よし、決めたわ!!」


 オレがあらん限りの力で奴を睨んでいたらルクレツィアはおもむろに頷いた後に微笑みかけてきた。ケッ、ヘドが出るような邪な笑みだぜ。舌なめずりしやがって…


「ちょうど、その屍になったバカの所為で、何体かのスペアの体を失ってしまったから、あなたの体をもらうわ!!」


 そう言うなり、ルクレツィアはオレとの間合いを詰めるために飛びかかってきた。


 速い! オレは咄嗟のことで反応が遅れてしまった。ルクレツィアの手刀が目前に迫る。万事休すだ! ちくしょう!!


「フリッツおじさんを殺したこんな奴にヤられる訳にはいかない! なんとかしないと!!」


 オレがそう決意を新たにしながら、なんとか後方に飛び間合いを取ろうとした瞬間、


「なに!? な、なんなの? 痛い、痛い!! も、燃えている。わ、私の顔が!!」


 とルクレツィアから悲鳴が聞こえてきた。なんだ、なんだと奴の顔を見ると凄まじい勢いの火炎が彼女の顔を焦がしていた。人間の肉が焼けたような不快な臭いが辺りに充満する。そんな中、どこからか笑い声がしてきた。う、嘘だろ? まさか、この声は…


「フォフォフォ、隙だらけじゃな。おっと、そんな目で見るとは思いの他うまくいったようじゃな」


 そう言って、死んだはずのフリッツおじさんが黒焦げとなった屍体をかき分けて現れたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ