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美少女転生-リリアーヌ・フロイデンベルクの華麗なる復讐劇  作者: 湯原伊織
第1章 転生者と復讐者による狂宴の幕開け
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第16話 城門の外

 燃え盛る城の門の前でオレは、年配の兵士と睨み合っていた。しかし、こんなことは計算外だった。消火活動で大慌ての兵士どもに紛れて、脱出しようと思っていたのに…


 このまま、振り切って、無理矢理に逃げようか。いや、そんなことをしては余計に怪しまれる。どうすればいい…


「どうするんだよ。いきなり、怪しまれてるじゃん」


 オレはクリストファーと小声に反論しようと口を動かす。


「うるさい。あなたはケガ人らしくじっとしていて! …ケガ人?」


「おい、なにをこそこそと話してやがる? 怪しいな。まさか、お前らは敵のスパイではないだろうな!?」


 ちくしょう。この兵士はなんだんだ。いちいち、偉そうにしやがって…


 いや、しかし、こいつの口ぶりからするとオレをここの兵士だと思っているのだろうか…


 これは利用できる。


「ご冗談を! オレはこの子供が怪我して倒れていたので、手当をしに城門に戻ろうとしていたのですよ。緊急事態のこんな時ですが、子供を見捨ててはおけませんよ」


 オレは口元に苦笑いを作りながらそう言う。


「なるほど、用件はわかった。それは可哀想だ」


 そう言って、オレが背負っている少年を年配の兵士が見る。クリストファーは演技はなのだろう。焦点の定まっていない半眼。苦しそうな呼吸。それらを見た年配の兵士は、


「見た所、まだ少年だな。城の使用人の子供だろうか? 先ほどは強く掴んですまなかったな。よし、ひとまず、城門を抜けた先に警備室がある。そこで寝かせておけ! そして、すぐに戻って来いよ!」


「はっ!」


 オレの返事を聞いた年配の兵士はそう言うと火災現場に走って戻っていた。


「演技が堂にに入っているのね?」


 そう言ってクリストファーを見ながら言うと、


「少年兵は潜入任務が多いのでね。演技はお手の物さ…」


 どこか、自嘲気にそう言う少年。


「つまり、今は元気だけど演技をしている訳ね? 投げ捨てて良いかしら?」


「魔力の枯渇をどうにかしてくれるんじゃなかよ!? ここで捨てていくのか!」


 オレが揶揄いがてらそんなことをいったら、奴は子犬みたいな目でこちらを見てきた。おい、おい、いじめたくなるだろ…


 オレたちがそんなくだらないやり取りをしていたら、どこからか、凄まじい魔力を感じる。


「待て、まだ、門の外に行くな。凄まじい魔力を感じる」


「わかっているわ。こちらから、門の外を伺いましょう」


 オレたちは城壁の外側を見るとそこには奇麗な少女達がいた。5人だろうか。オレがそんなことを考えて、背負っているクリストファーを見ると、彼は女性達を見て固まっていた。


「なに? 鼻の下でも伸ばしているの?」


 確かに門の外側にいる女性達はまるで彫像のように美しい容姿をしていた。だからといって、命の危険がある時に見とれるだろうか。不謹慎な奴だ。オレがそんなことを思っていると、


「そんなわけないわ! 失礼な」


 そう、クリストファー少年は小さな声で返してきた。

 

「だったら、なんで、そんなに固まっているの?」


 そう、オレが聞くとクリストファー少年は苦虫を噛み潰したような表情でこう言ってきた。


「何を勘違いしているかしらないが、奴らはジーク様が持つ部隊の中でも、最高級の魔導師を集めたスカーレット・フィーユ魔導独立小隊だ」


「オレを置いて、逃げた方がいいぞ。あいつらが魔力の枯渇しているオレを見たら、間違いなく消しにくるだろう。成り上がり者のオレはあいつらに目の敵にされているんだ」


 彼は諦めたように、弱々しい声でそう言う。

 

「なに? あなたは死にたいの?」


「そんな訳ないだろう。だが、ここまで、運んでもらって悪いがオレの命運もここまでのようだ」


 顔をふせて、弱々しくそう言う彼をオレは見ていられなかった。だから、


「生きたいのね? …なら、私に考えがあるわ」


 そう言ってオレは出来るだけ、不敵に見えるように微笑むのであった。

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