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美少女転生-リリアーヌ・フロイデンベルクの華麗なる復讐劇  作者: 湯原伊織
第1章 転生者と復讐者による狂宴の幕開け
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第9話 暴露された正体

 会議室に高らかな笑い声が響く。大量の兵士らに取り囲まれながら、ジークが窓際の方向に歩いて行く。兵らはジークの奇妙な笑い声を警戒してか、奴が進むごとに後退をしている。


「貴様は誰じゃ!? いい加減に正体を現すが良い!」


 伯爵は可笑しそうに笑っているジークに対してそう言った後に火炎の魔術を奴に放つ。


「せっかちな人だ。これが僕の正体だ!」


 伯爵が放った火炎の魔術を奴は水の魔術で相殺する。互いに打ち消し合った炎と水の魔術が水蒸気となり、視界が白く霞む。


 徐々に視界が良好になるとそこには小柄な少年がいた。


「それがうぬの本来の姿か。わらべであったのか…」


 少年を見たハノファード伯爵は戸惑いを隠せなかったのか頬を指でかきながらそう言う。


「僕の名前は、クリストファー・エイセイマン。ヴァルデンブルク少年兵団の団長だ。ただのガキだと思うなよ」


 ジークに化けていた少年は伯爵を睨みつけながら、そう凄む。


「伯爵、あんたは和平の使者であるオレを殺すために魔術を放った」


 少年は部屋全体に響き渡るような大声で辺りにそう語りかける。


「先ほどのやり取りが和平交渉と言えるとでも思っておるのか!? 貴様らが一方的に儂を訳が分からない理由で脅迫しておっただけじゃろ!!」


 伯爵は少年の言葉を聞いて目を吊り上げると彼に対して反論をする。だが、少年はハノファード伯爵の話などまるで意に介さないと言わんばかりに大尉に向き直り、話しかける。


「大尉、先ほどの記録は取れているな? 奴が僕に向かって魔術を放つ所を…」


「もちろんだ。奴らは我々との最後の和平交渉を自ら壊したのだ。非はすべて伯爵にある。帝国に歯向かう悪逆な反逆者である伯爵に正義の鉄槌を下そうではないか」


 そう言って大尉は大げさに嘆くように言った後、おもむろに口元を歪めてニヤリと微笑む。


「では、そろそろ、我々は失礼します」


 フランツ大尉はそう言って慇懃に一礼をするとオレのいる方と反対の窓側を見る。そして…


「切り裂け烈風よ!」


 大尉から凄まじい威力の風が窓に放たれる。吹き荒れる風によって窓が切り裂かれて、辺りに飛び散る。


 突然の出来事で呆然と兵士達が割れる窓に見入っている。その隙にジークの部下二名が窓の外に出ようと駆け出す。


「あばよ。爺さん!」


 フランツ大尉が窓から出た後に少年も割れた窓のもとまで駆け寄ると伯爵の方を振り向いてそう言う。


「逃がすか! 轟けいかずちよ。我の敵を打ち砕け!!」


 窓から部屋を出ようとしていた少年に向かって凄まじい雷が伯爵から放たれる。


「魔術の展開が異常に早い。避けれるだろうか? いや、避けなければ死ぬ!!」


 そう言った少年はどうやら伯爵から放たれたいかずちの直撃を免れたようだ。彼が先ほどまでいた場所に大きな穴が開いている。


 しかし、何とか雷の魔術の直撃は逃れたようだが、少年は無傷ではないようであった。ほんの僅かに感電したのだろう。少年は顔を強張らせて、伯爵を睨みつけている。


「て、手が痺れる。よくも伯爵め!! く、魔導具が…」


 少年から魔導具がこぼれ落ちる。何とか魔導具を拾おうと少年は腰を下ろして、手を伸ばす。しかし、感電しているのか彼は魔導具をうまく掴むことが出来ずにいる。そんな少年に大尉が部屋の外から、


「そんなモノは放っておけ! ここから急いで離脱するぞ!」


 その言葉に従ったのか少年は魔導具を拾うことを諦めて、窓から部屋の外に飛び出す。


「者共、追うぞ! 儂について来い!!」


 ハノファード伯爵は窓から飛び出すと大声でそう言う。伯爵のその怒声を孕んだ命令を聞いた兵士達は、逃げた二人を追うために伯爵に続いて窓から続々と外に出て行く。


 広い会議室に静寂が訪れる。オレは本当に誰もいないか窓から覗き見る。どうやら、すでにこの部屋には誰もいないようだ。オレはおもむろに窓を割って、部屋に入る。


 部屋の中に入ると会議用の長机と椅子。そして、散乱したガラス片が辺りに散らばっているだけだった。やはり、部屋はすでに誰もいない。


 この魔導具は何だろうか。クリストファー・エイセイマンと名乗った少年兵が一生懸命に拾って帰ろうとした魔導具だ。詠唱の呪文がわかればどのような魔導具かわかるのに…


 オレはそう思いながら、魔導具を拾い上げる。


「あれ!? 景色が変わった? 視線が高くなってないか」


 オレは慌てて先ほど拾った魔導具を見る。すると魔導具を掴んでいた手が大きくなっているように見える。


 いったい、これはどういうことなのだろうか。オレは動揺を押さえる為に窓から外を見ようとした。


「嘘だろ!? オレがいる!!」


 外を見たオレの視界には窓ガラスに映った自らの姿が確認できた。そこには、死んだはずのオレことヴァハドゥール・ド・ヴァルデンブルクの姿が映し出されていた。

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