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美少女転生-リリアーヌ・フロイデンベルクの華麗なる復讐劇  作者: 湯原伊織
第1章 転生者と復讐者による狂宴の幕開け
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第1話 セリアからの招待状

 カーテン越しに窓から明かりが入ってくる。光の眩しさに目をしかめて、オレは椅子から降りる。オレは顔を手でこすり、眠気でぼんやりしている頭を起こそうと努力した。その後に寝る前に何をやっていたかを思い出すため、辺りを見回す。


 机の上には開いたままの本が散乱している。どうやら、魔導技術関連の書籍を読んでいる途中で寝てしまったようだ。


 まだ、完全に覚醒していない寝ぼけた頭で現状を確認しているとオレの耳に扉をノックする音が聞こえてきた。


「はい、リリアです。どのようなご用件でしょうか?」


「リリア様、マリーです。お手紙が届いております」


 どうやら、オレ宛に誰かが手紙を送ってきたようだ。オレは手紙を受け取るためにマリーに部屋へ入るように言う。


「リリア様、お手紙がヴァルデンブルク公爵婦人から来ております」


「マリー、ありがとう」


 マリーから受け取った白い封筒に可愛らしい字で書かれた宛名や住所が書いてある。それらを見るとまるで実の娘の人柄をどこか表しているように感じてしまう。そして、オレのためにセリアが一生懸命にこの手紙を書いたことを思うとなぜか心躍るものがあった。オレは、彼女に対する愛おしさでなんとも言えない気分になる。


「リリア様がそんな風に微笑むのを久しぶりに見ます」


 どうやら、オレのこの思いは表情に出ていたようだ。マリーが幾分か微笑ましいものを見るような視線でこちら側を見ているが気のせいだと思いたい。オレは照れ隠しの意味合いも兼ねて、マリーの話に相づちを打たずに手紙の封を切って読み始める。


 ━━━━━━暑さが日ごとに増してまいりましたが、いかがお過ごしですか。さて、この度、私ことあなたのお姉ちゃんであるセリア・ド・ヴァルデンブルクは大変急ではありますが明日にお茶会を開くことにしましたので、日頃から仲良くさせていただいているリリアーヌ・フロイデンベルク様にもご参加をしていただけないかと思いましてご案内を差し上げました。


                ・

                ・

                ・

 

 オレが手紙を読み進めると最後にあなたの姉ちゃんより、愛を込めてと書いてある。なんという恥ずかしめだろう。思い出すだけで赤面ものだ。実の娘をお姉ちゃんと呼ぶことになろうとはな。


 ひとまず、セリアを呼ぶときの呼称の問題は置いておくとして、彼女はオレをわざわざお茶会に誘ってくれたのか。オレと親交を深めたいのだろう。オレが今のセリアの現状をもっと知れる機会ができたことに喜びを密かに噛み締めていると。


「リリア様がそんなに嬉しそうな顔をなさるなんて。そんなに良いことが書いてあったのでしょうか?」


 マリーが覗き込むようにオレの手紙を見ている。そんなに読みたいなら言えば良いのに…


「マリー? そんな手紙を読みたそうにしているのでしたら、読んでも良いですよ?」


 ついつい、マリーに対してそう言ってしまった。彼女が本当にこの手紙の内容を知りたそうにしていたから…


「いえ、その、主人であるリリア様が頂いた手紙を勝手に見るような真似はできません。そんな、はしたないことは…」


 なにを今更言うのだか。さっきから、オレの手元にある手紙をチラチラと覗き見ていた癖に。


「私が許可を出しているのだけど? それとも私の許可では心ともないと?」


 こんな子供が許可を出したとしても意味がないと言えば、確かにそうかも知れない。子供の意見などすぐに変わって後からでも、そんなことは言っていないと言いそうだもんな。


「そのようなことは…。では、お言葉に甘えて読まさせてもらいます」


 こちらをチラリと一瞥いちべつした後にマリーはオレから手紙を受け取って、読み始める。


「どうしたのかしら? マリー?」


 マリーが手紙を読み終わったあと急に俯いて震えている。いったいどうしたと言うのだろうか?


「つかぬ事をお伺い致しますが、リリア様はセリア様に対してお姉ちゃんとお呼びしているのでしょうか?」


「戯れです。セリア様がそう呼ぶようにとおっしゃったので、そうしたまでです」


 だれが、実の娘に強要されて、屈したなどと情けないことを言えるだろうか。


「羨ましいです。私もリリア様にお姉ちゃんと呼ばれたいものです」


 小さい声だが、確かにそう聞こえた。いや、本当に彼女は何を言っているんだ? 君はメイドでオレは主人だろ。


「…マリー? 小声で聞こえなかったわ。なにか、言ったのかしら?」


「リリア様、私も1度でよいのでお姉ちゃんと呼んで欲しいです!!」


 意を決したかのように彼女はハッキリとオレにそう言ってきた。オレはその言葉の真意を計り兼ねて沈黙をする。


「どうせ、私ごときはリリア様に取っては取るに足らない一介のメイドですもんね」


 そんなことを言って、こっちをチラチラと覗いてくるなよ。オレは痛くなる頭を押さえるように額に手を添えた。


「リリア様」


 恥ずかしいから絶対にやだよ。オレはセリアをそう呼ぶのですら、嫌だったんだから…


「……」


 マリーからの無言の圧力が痛い。おかしいな。彼女は3年ほど前からオレに使えているはず。こんなことは常識的にありえないだろ。


「……」


 普通あり得ないだろ? なに、マリーのこの期待の眼差しは?


「……」


 オレが無視を続けていたら、今度は落ち込み出したぞ。どうせ、私なんて言わんばかりに顔を俯けて寂しそうにしている。


「……リリア様」


 急に顔を上げたと思ったら、捨てられた子犬見たいに潤んだ瞳で見てきた。その目はやめてくれ。なんか、オレが悪いことしているみたいではないか。…ええい、仕方がない。言えば良いんだろ。言えばよ。


「…………マリーお姉ちゃん」


 オレの言葉を聞いたマリーは満面の笑みを浮かべると嬉しそうに部屋から退出していった。なんだろうか。顔が熱いんだけど…。


 その後、セリアから送ってもらった手紙を読んでは、頬を緩めるオレ。今度はセリアとたくさん話して、彼女の現状が聞けたら良いなとオレは明日のお茶会を思い笑みを深めるのであった。

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