夢の中で
続きです。
…目の前に見えたのは夕暮れの景色だった。
俺は公園のベンチに、沈んでいく太陽に背を向けるようにして座った。
なんだかいつもそうしているように感じた。
(なんで俺はこんな所にいるんだ…?)
そんな疑問を感じたが、どこか懐かしさをおぼえるこの景色を眺めていたら、すぐにどうでもよくなってしまった。
(いつまでもここに居たいな…)
ここはとても暖かくて、心地よくて、心が安らいで…
でも何か物足りない。
パズルの1ピースがどこにも無いのと同じような、そんな物足りなさ。
…そうだ…何かじゃない…[誰か]が足りないんだ。
いつもそこにいたはずの[誰か]、とても大切な[誰か]、欠けてはいけない[誰か]…
でもそれが誰なのかは、いくら考えても分からなかった。
(…くそっ!)
そんな自分に腹が立った。
そんな風にイライラしていたそのときだった…
「変わらないな…」
クスクス笑っているようなその声を聞き、俺は慌てて辺りを見渡した。
「誰かいるのか?」
しかし返事はなく、自分の声が響いただけだった。
(聞き間違いか…?…いや…)
そうでないことは分かっていた。
だって、あれは間違いなく、ここにいない[誰か]の声だったから…。
「どこにいるんだよ!?出てきてくれよ!」
少し不安になりながら叫んだ。
すると、
「こっちだよ」
と、はしゃいだような声がした。
急いで声のした方向を向くと、そこは公園の出入口だった。
俺は全力で走った。
しかし、そこには誰もいない…
「おい、どこだよ!」
息を切らしながら必死に人影を探す。
すると後ろから、
「ゴメンね、そろそろ帰ってもらわないと。」
という少し寂しそうな声がして、背中を押された。
俺はバランスを崩して公園の外に出てしまった。
そこで意識は途絶えた…
サブタイトル通り夢の話でした。
次回は6月10日の17時にのせる予定です。
よろしくお願いします。