君と出会う
温かい目で見てください
「…この辺りもだいぶ変わったな……」
まだまだ暑い8月の終わりの昼頃、俺はこの町に戻ってきた。
俺がいた頃とずいぶん町の様子が変わってるので懐かしいという感情も無く、まるで初めて来た場所のような気がする。
ミーンミーンミーン
セミの鳴き声が響くなかキョロキョロしながら町を歩いていたら…
ドンッ……ドサッ…
人にぶつかってしまい、慌てて目の前を見ると、そこには1人の女の子がいた。
…きれいな女の子だった。
長めの黒髪と整った顔立ち、綺麗に澄んだ瞳とどこか儚げな雰囲気…
「あ、あの…大丈夫…ですか…?」
その声で俺は我にかえった。
「あ…ごめん!」 俺は地面に散らばった本に気付き、慌ててそれを拾って女の子に渡した。
すると女の子は「あ、その…ありがとうございます…」 と、小さな声で言い走っていってしまった。
小さくなる後ろ姿を見ながら、俺はしばらく立ち尽くしていた。
何となく不思議な感じのする女の子だった…
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まぁそんなアクシデントもあったが、俺は夕方頃に無事懐かしの我が家にたどり着いた。
ちなみに我が家は町外れの山奥にある神社であり、両親はだいぶ前から仕事の都合で外国に住んでいるので、長い間無人のはずである。
懐かしの我が家の雰囲気を味わいながら、玄関の戸を開けて家に入ると…
長い間放置されてホコリだらけなはずの家のなかがピカピカだった!
俺が驚いて立ちつくしていると、奥の方でガタッ!と大きな音がした。
(誰かいるのか?)
俺は慌てて靴を脱ぎ捨てて音のした方に急いだ。
(多分、記憶が正しければ音がしたのは書庫の辺りだ!)
うちには町の歴史が書かれた古い書物や、先代が集めた貴重な本を保管している書庫がある。
廊下を走り書庫の前につきドアを勢いよく開けると…
(…誰もいない?)
そこにはただ、大量の本が並んでいるだけだった。
(俺の勘違いか?)
そう思い戻ろうとしたその時、背中にドンッ!と衝撃を受けて俺は床に倒れた。
それに続いて俺の上に何かが倒れてきた。
「グフッ!!!」
「キャッ!!!」
どうやら相手がバランスを崩し、俺の上に倒れたらしい。
痛みをこらえながら相手の顔を見ると、偶然なのか相手もこっちを見てきて目があった。
「…え!?」
2つの声がぴったりそろって廊下に響いた。
(何で…ここに…?)
長めの黒髪と整った顔立ち、綺麗に澄んだ瞳とどこか儚げな雰囲気…
…そこにいたのは昼間ぶつかった、あの女の子だった…
読んでいただきありがとうございます。
これから続けていく予定ですのでよろしくお願いします。