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宇宙の新星人たち【本編(3)】  作者: イプシロン
第2章 男と女――そして……
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第23話 ギガンテスの友情

 ニクスとカロンは再開を果たした。ムーンベースに着床した<スペランツア>号は、新鋭艦<パビエーダ>号と船首を並べてその威容を誇っていた。今や宇宙の総合病院とかしつつあった月基地の施設にダフニスもクロエも歓声をあげた。清潔感ある病室に運び込まれた傷病者は、日々明るさを取り戻して冗談を飛ばしあうようになった。

 月の裏側にあるセレーネ基地には海兵隊の第八艦隊が駐留していた。そしてまた、第二艦隊旗艦となっていた<ヨーロッパ>も護衛艦を引き連れてそのセレーネ基地に着床していた。

「よう、ギュゲス! 久しぶりじゃないか!」

「おう、ミマース! 今度はお前を抱擁してやれるぜ!」

 スー族の酋長ギュゲスとそのメンバーだったミマースは友情を取り戻していた。

「また酋長と一緒に戦える。そんな日が来るとは思ってもいなかったですよ……」

「俺だってそうさ。……あの引き金はな……出来れば引きたくなかった……。けど、あの時のお前の眼は死んでいたんだ……暗く悲しい目には激しい怒りしかなかった……」

「そのことじゃー随分と苦しみましたよ……。ですが、もう乗り越えましたよ。俺を信じてくれますか? 酋長?」

「さあな! それはこの先のお楽しみだ!」

 ギュゲスは白い歯を見せて顔をほころばせた。

「そういえば、月の表にDOXAの船がいることを、知っていますか?」

「は? DOXAの船だ? 俺には関係のない話だがなー」

 ミマースはギュゲスの背を叩きながらいった。

「<パビエーダ>号だ。知らないとは言わせないぜ!」

「ふん……まあそうだな……知らんとはいわんが……」

「酋長、娘に会ってきたらどうです? ムーンベースはすぐそこですよ。それに出撃にはまだ間があります」

「何をいってるんだ、ミマース。俺がそんな男じゃないことは、お前が一番知っているじゃないか……」

「そのつもりです……ですが、向こうの気持ちがどうかは、わかりませんよ……」

「リアレス……あいつの育て方を俺は間違えたのさ……。けどな、軍を去ってくれたことには感謝している……。しかしお前、変わったな……」

「ああ、変わったさ。俺を変えたのは女房さ……」

「まずそこが変わった!」

 そういってギュゲスはミマースの胸に指を突きつけた。

「家族はいいもんだ。俺は酋長にもそれを知って欲しい。まあ、そういうお節介ですわ……」

「そうだなー、この戦いが終わったら、会いにいってみるさ。あいつにとっては俺のような禄でもない男でも、親父であることは認めてくれているようだからな……」

「そうか、ではその日のためにも、勝とうじゃないか!」

「もちろんさ! 俺の人生に負けなどないからな」

 ギガンテスの男たちは固い絆を確認すると、それぞれの船に帰っていった。

 第二、第三艦隊の本隊がセレーネ上空の周回軌道に到着すると、第八艦隊の戦闘艦は、錨をあげて次々に基地を離床していった。隊形を整え終えた第二、第三、第八艦隊の約三百隻は、月軌道を離れてしばらくすると、超光速航行に突入して、木星宙域に姿を見せたのだった。

「情報通りであれば、敵はケレスを襲うはずです。接触は近いと思われます」

 ミマースの副官ウルカヌスが足を引き摺りながら、艦長席に近づいてきた。

「情報に間違いはないよ、ウル。そいつは信用できる」

「提督、なぜそうも自信があるのですか?」

「勘だよ……長年の勘というやつだ……」

「はあ……勘ですか……なんだか先が思いやられますね……」

 二人はリラックスした笑いを艦橋に響かせたのだった。

 その頃、聖戦団は高速艦で編成された偵察団をケレス宙域に進出させていた。ステルス機能を使って、見えざる者となっていた戦団は、必要最小限の機械動力だけを駆動し、慣性にまかせて宙域に潜んでいた。

 その後方には密集した球形陣を組んだ、ヒドラの「アズライール」団と、エロスの「マフムード」団が並んで待機していた。さらにその後方にはステルス機能の高い高速艦ばかりを集めた戦団が待機していた。

「エロス、いささか弱気な陣形といえまいか?」

「いいえ、大司教、まずはやつらを蹴散らすのが先かと思われます。タルタロスの奪取はそれからでも遅くありません」

 ヒドラ座上の旗艦<ケイローン>号のメインスクリーンには、白い衣装で跪いているエロスの姿があった。

 エロスは眼のフチを青黒いシャドーで彩り、そこから頬へと細いラインを描き入れ、魔女のような妖気を漂わせていた。

「だが、奴らがこちらの思う壺にはまるとはいえまいぞ……」

「ここはわたくしをご信用なさってください。必ずや敵を卿の前に引き摺り出して見せます……」

「ふむ……ならば、その手際、見定めさせてもらうぞ。この戦いはマフデトの弔いでもあるのだ。負けるわけにはいかんのだからな……」

「はは! 心得ました……」

 頭を深々と下げたエロスの薄紫色に染められた髪が、床に流れていた。

 スクーリンから女の姿が消えると、ヒドラはマフデトがいた場所に視線を落とし、長い嘆息を漏らしていた。

 各艦隊が大きめの球形陣を組んだ地球軍は第八艦隊を中央後方におき、第二、第三艦隊を前衛両翼とする配置をとっていた。

 ――今回は潜宙艦の戦力は期待できない……そして双方の戦力は互角と見た。ひとつの判断が死をもたらす。そういえそうだな……――。

 ギュゲスはいつになく慎重な面持ちで、宇宙を映しているスクリーンを睨んでいた。

「偵察隊、発進します!」

 副官の声がギュゲスのもの思いを破った。

 ――いよいよだな……ミマース、頼むぜ!――

 かくして、「ケレス星域会戦」は勃発したのだった。

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