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第九十八話





 二月一日、舞鶴鎮守府にて新たな艦隊が編成された。その艦隊は第四機動艦隊であった。

 司令長官には塚原中将で参謀長には大林少将が就任した。

 旗艦は雲龍型空母の八番艦赤石となり、空母は赤石に九番艦妙見、龍驤、神鷹の四隻である。

 護衛の艦艇は警備艦から戦艦に格上げした富士、摂津、重巡三、軽巡二、駆逐艦十二隻で編成されている。

 本当ならGF旗艦敷島も編成されるのだが、まだGF司令部の移転先を決めていないのでまだGF旗艦のままだ。

 この第四機動艦隊の創設は対ソを意識しての事だ。ソ連海軍は旧式艦艇が主力なので第四機動艦隊でも十分に対処出来る。


「ソ連は攻めると思うかね?」

「五分五分です。ウラジオにはまだアメリカの基地がありますから。いくら爆撃機が帰ったからと言って来ないとは限りません」

「関東軍も警戒は行うとは言っているがな……」

「……難しいな。それで防火態勢の方は?」

「消防車の生産を急がせてはいますが、それを運転する者が少ないのが現状です。今は運転技術取得のために訓練をさせています」


 日本は防火態勢として消防車の生産を急がせ、数を増やしていたが数はまだ少なかった。

 そのため、陸海が使用している九四式六輪自動貨車を消防車に改造して数を揃えようとしていた。

 また、空襲の人的被害を押さえるため都心部にいる市民の郊外への引っ越しを促した。

 国民も新潟や佐渡島の空襲を知っており、挙ってではないが自主的に郊外へ引っ越しをしていた。

 更に帝都には防空壕として地下鉄の建設も行われていた。表向きは地下鉄だが裏は防空壕であるため議員達も納得して予算を取得出来た。


「対空砲として三式十二サンチ高射砲の生産を急がせている。それに新しく採用した四式十五サンチ高射砲もだ」


 四式十五サンチ高射砲とは史実の五式十五サンチ高射砲の事である。

 既に史実とは異なり十六門が生産され配備されていた。

 警戒部隊として対空電探を搭載した百式司偵三型が配備されて出来るだけ敵機発見に念を押すようになっている。


「……これくらいで満足してはならん。日本の周りは敵だらけなのだ」


 宮様の言葉で会合は終了となった。日本は次の戦争に備えつつ次の戦争を回避しようと躍起になっていった。

 日本はオランダと接触したが、オランダは無視した。オランダは大戦初期に植民地のインドネシアを占領され国民の対日感情は反日寄りだった。オランダ政府も日本の接触を一蹴した。

 日本政府としては面目が潰された感じではあるが、将宏は「まぁ……あの国だしな」の一言だった。

 日本はドイツも頼りたいが、国防軍と親衛隊の争いがあるのでどうも無理だった。なお、イタリアは入っていない。


「イタリアは女とかの場合は強いけどな。今の時点では戦力には入らんな」


 陸軍の主力中戦車が九七式のライセンス生産な事もあり、見下してはいないが途中で連合国側に付くと予想していた。

 八方塞がりの日本であったが、スイスに窓口を何とか作った。

 しかし日本の努力も此処までだった。二月二四日、ウェーク島に物資を搭載して航行していた一隻のリバティ船が消息を絶った。

 リバティ船は消息を絶つ前に魚雷攻撃を受けたと報告をしていた。

 アメリカは直ぐに調査を始めたが、初めからアメリカは日本を疑った……というのは表向きである。


「さて……ジャップはどう出るかな?」


 ホワイトハウスの大統領室でトルーマンはニヤリと笑った。実はこの事件、アメリカのでっち上げだったのだ。

 リバティ船など沈没はしていない。全ては日本と戦うための工作だった。


「軍の方はどうかね?」

「陸軍はレイテ島に海軍の潜水艦を使用して兵員を増やしています。戦車も最新のパーシングやM36中戦車を揃えております」

「海軍は陸軍の支援のため、ハルゼーの第三艦隊とスプルーアンスの第五艦隊を編成してスプルーアンスの第五艦隊はフィリピン方面へ、ハルゼーの第三艦隊は陽動としてジャップのトーキョーを攻撃します」

「うむ……後は開戦の火蓋を切るのみだ」


 トルーマンは満足そうに頷いた。




 それは突然の事だった。


「空襲ゥッ!!」


 三月一日、シンガポール(昭南市)に空襲警報が鳴り響いた。上空には数十機の四発爆撃機が飛行していた。


「高射砲隊は何をしているんだッ!!」


 市民の避難活動をしていた一等兵はそう叫んだ。四発爆撃機から次々と爆弾が降り注ぎ、シンガポールの町を破壊していく。

 また、ジョホール水道に停泊していた艦艇にも被害は出ていた。


「あぁ……海鷹が……」


 海防艦の乗組員が炎上して左舷に傾斜している小型空母海鷹を見ていた。

 シンガポールには前日に空母大鷹と海鷹を伴った輸送船団が入港していた。

 海鷹の脇にはこれも炎上している大鷹がいたが、大鷹は艦尾を引き剥がされておりどちらも沈没寸前だった。


「敵機はイギリス軍だと?」

「そのようです。撃墜した爆撃機を確認した者からの報告です」


 ベトナムのカムラン湾に停泊していた角田中将の第三機動艦隊は現在、コンダオ島付近を航行していた。


「何機落とした?」

「詳しい事はまだですが……約二十機程度と受けています」


 シンガポールには海軍航空隊が駐屯しており、爆撃の報を聞いて雷電十四機、零戦十一機が離陸して敵爆撃機を十二機を撃墜。

 シンガポールの対空砲も七機を落としていた。そしてこの爆撃機は……。


「……ランカスターか。奴等は何処から来たと思うかね?」

「……恐らくはニコバル諸島のナンカウリ島でしょう。此処には我が海軍航空隊が駐留していましたからジョンブルは此処からランカスターを飛ばしたのでしょう」


 田中航空参謀はそう読んだ。実際にランカスターはニコバル諸島から離陸してレーダーに引っ掛からないよう低空でシンガポールに接近したのだ。


「……奴等は初めから我々と構える気だったな。それでセイロンとニコバル諸島の明け渡しを要求したのか……」


 停戦会議の時、イギリスは日本と内密に会談をしてセイロン島とニコバル諸島の明け渡しを要求した。

 ニコバル諸島はボース氏の自由インド政府が形式上ではあるが固有領土としており、独立予定のインドに返上するのが宗主国としての務めだとチャーチルが申した。セイロン島もイギリスから独立する予定であると申したので山本も戦略上、失うのは仕方ないと思い承諾したのだ。


「兎も角被害報告を急がせろ。グズグスしていては……」

「長官ッ!! 緊急電であります」


 そこへ通信兵が艦橋に入り、角田に紙を渡した。


「……ば、馬鹿な……」


 電文を一目した角田は唖然とした。電文にはイギリス軍が約三個師団と戦車部隊をマレー半島のクランに強襲上陸した事、ソ連とアメリカが日本に宣戦布告をしてソ連が満州へ侵攻した事、アメリカの機動部隊がフィリピンと本土を攻撃している事が書かれていたからだ。






御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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