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第九十六話




『此方甲賀一、三人が楠木少佐を包囲しています。三人ともおっぱい大きい……ちっぱいのはいないのか』

「ちっぱい集の同人誌でも楠木が作りそうだな」

「将裕曰く「お巡りさんこいつですッ!!」だそうですよ」


 監視部屋で東條達はそう言っていた。


『甲賀一、楠木少佐が正座させられています。あ、土下座をしました』

「……そうなったか。ま、ある程度は予測していたが」

『三人が泣いてます。あ、鼻水垂らした』


 甲賀一は冷静に東條達へ報告をしていた。




「……済まなかった」


 将裕達は温泉から出て将裕の部屋にいた。そして将裕は開口一番に三人にそう言って再び土下座をした。


「……理由を聞きたい。何故戦死までする必要があったのかをな」


 漸く泣き止んだ霞がそう言い、将裕は説明を始めた。




「……てことで、俺は裏方に回ろうとして戦死の通知書を送ったんだ」

『………』


 将裕が説明を終えると三人は暫く口を閉じていたが霞が立ち上がり、将裕の右頬をグーで殴った。もう一回言うがグーだ。


「ぷげらッ!?」

「……これにしといてやる。それに私達も将宏に謝らなければならない」


 そして三人は正座をして将裕に土下座をした。


『ごめんなさい』


 それは見事な土下座だった。


「……三人が謝る事じゃない。俺が悪かったんだからな」

「いや違う。私達が将宏の話を真剣に受け止めなかったんだ」

「いや俺が……」

「いや私達が……」


 将裕は折れる事にした。続けばずっとこの状態になる。(てか先に進めねぇ……)


「それでな将宏……戻ってきてはくれないか?」

「けど……」


 霞の言葉に将裕は躊躇した。将裕自身は後顧の憂いを断つつもりで戦死したのだ。今更戦死を無しにして戻るとは……。


「戻って……きてほしい……」

「……判った」


 三人の上目使いと涙目に耐えられなかった将裕だった。


「いやいやおめでとう楠木君」

「これで楠木将裕から河内将宏に戻るな」

「東條閣下、それに宮様と前田少佐……自分は嵌められたのですか?」


 そこへ三人が部屋に拍手をしながら入ってきた。将裕は三人を見て芝居をさせられたのだと思った。


「いや、霞達は知らないよ。むしろ企画したのは俺達なんだ」

「前田少佐から三人の事を聞いていたのでな。我々も罪滅ぼしの意味で加わったのだよ」


 宮様はそう言ってニヤリと笑った。


「軍には根回しをして河内将宏の戦死は誤りだと公表しておこう」

「さて、そろそろ我々はおいとましようか。四人も話し合う事があるしな」


 宮様達はニヤニヤしながら部屋を後にした。部屋には顔を赤くした四人がいた。

 なお、補足しておくが四人は『普通』に寝てた。三人が将裕を中心の大の字で。

 それを聞いた宮様は「ヘタレ」と小さく呟いた。

 その後、将裕は正式に河内将宏に戻り全軍には海軍の書類ミスという事になった。そして将裕――将宏は水交社から前田家へ戻るのであった。




 四月一日、将宏は横須賀航空基地にいた。横須賀に出向いたのは陸海で生産した新型機の見学に来たからだ。


「これが……橘花か」


 将宏の前には新型噴式戦闘機「橘花」が鎮座していた。

 橘花はドイツ空軍のジェット戦闘機Me262Aを模しており、Me262Aと比べると少し小さめである。小さめなのは空母に搭載するためだ。


「本家のMe262Aには敵わないが、それでも帝国初のジェット戦闘機だ」


 種子島大佐が自慢気にそう言った。史実では伊二九がドイツからの帰路途中で撃沈されたため、開発は難航していたが遣独潜水艦は陸海の積極的な護衛もあり無事に帰還しておりユンカース ユモ 004を六基も日本に運んでいた。

 このユンカース ユモ 004は完全にコピーする事は出来なかったが、橘花に搭載されているネ20改は推力六一三kg、最大速度七九三キロを記録していた。

 武装は三十ミリ機関砲三門、噴進弾十六発を搭載出来る。なお、陸軍側の呼称は火龍だった。海軍機には主翼の折り畳み機能もある。


「既に生産は全飛行機工場で生産中だ。それに噴式震電の生産も始まったところだ」


 震電を設計した九州飛行機に海軍は予めジェット戦闘機にも改良出来るよう口出しをしていたため、震電改と名付けられた噴式震電が生産されていた。

 この噴式震電もネ20改を搭載して最大速度八一一キロを記録していた。


「第一機動艦隊もカタパルトを設置したりして忙しいからな。橘花も震電改も八月までには三個航空隊に配属される」


 第一機動艦隊の信濃と大鳳は橘花を使用出来るように改装中であった。予定では信濃に橘花八四機(予備機三機)、大鳳には六九機(予備機三機)である。

 他の空母では翔鶴型も対象に入っているが、それ以外の主力戦闘機は神風である。烈風は基地航空隊に回され、零戦は本土以外は殆んど見られなくなった。(最終改良型の六四型が多少ある)

 海軍はジェット戦闘機用の空母としてアングルド・デッキを備えた改大鳳型空母の整備を進めようとしていた。

 大鳳型は二番艦の天鳳が六月に就役するので打ち切って資材を改大鳳型に流用をしており、既に各地の造船所で四隻が起工して建造中であった。


「……こいつらが活躍するのは訓練だけで良いんだがな……」

「……そうだな」


 将宏の言葉に種子島大佐はそう答えた。




 それから季節は一気に過ぎて十二月一日。


「……ウォレスが敗れてトルーマンが大統領……か」


 何度目の会合かは分からないがいつもの料亭に将宏達は集まっていた。


「……歴史の針は修正しつつあるかな?」


 将宏はそう呟いた。ウォレスは十一月にあった大統領選挙でトルーマンに敗れたのだ。

 本来なら大統領の任期は四年であり、ウォレスはまだ大統領の職にあるのだがルーズベルトが死去した後の暫定大統領だったため選挙となったのだ。

 その結果、正義と強いアメリカの再建を主張したトルーマンに軍配が上がったのだ。ウォレスは敗れた後、トルーマンと入れ替わるように商務長官に就任した。


「それなりに警戒は必要です。何せトルーマンは……」


 将宏はそれ以上の言葉は言わなかった。トルーマンは白人至上主義者団体、クー・クラックス・クランの元構成員だった。(有名なKKK)

 そして当のトルーマンはホワイトハウスの大統領椅子にいた。


「諸君、我々は対日戦線を終わらせるつもりはない」


 キング作戦部長やスチムソン陸軍長官を集めてトルーマンはそう宣言した。


「それは無論ですプレジデント」

「イギリスもやるようです」


 対独戦線は負けがついたが対日戦線で負けがつくのはアメリカとしてイギリスとして許される事ではない。

 そのため、アメリカとイギリスは日本に対してその鬱憤を晴らそうとしていた。

 イギリスはインドを守りきったが(ビルマは辛うじて撤退した日本の後を継いで支配していたが、ビルマはガンディーやネルー等の独立運動が激しくインドを独立する動きがある)、アメリカは日本に負けるのは認めず、そこで二国の協力態勢だった。


「奴等にやられた傷を癒すのは奴等を倒す事だ」


 トルーマンはそう呟いた。







御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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