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第九話

一気に永田暗殺と二・二六事件に入ります。






「いやはや今日は危ないところでしたな」


「これも河内少尉からの情報で早めに永田少将を救えたのが幸いだな」


 東京のとある料亭で将宏は陸軍の東條中将、杉山中将、林大臣、前田少尉、そして永田少将がいた。


「始めは永田が斬殺されるなど信じられなかったが……部屋に相沢中佐が軍刀で乗り込んできた時は本当に驚いた……」


 杉山中将はそう思い返した。1935年の八月十二日に起きた永田鉄山軍務局長の暗殺事件は未遂で終わった。


 将宏は当初から東條中将や杉山中将に永田少将が暗殺されると警告していたが二人は一笑して取りつがなかった。それでも永田少将暗殺を阻止したい林大臣は当日、永田軍務局長の部屋に兵士五人を置いて警戒した。


 将宏も阻止したいと思い、永田少将にわざわざ面会していた。永田少将本人もまさか自分が殺されるとは思ってなかった。


 そして午前9時45分頃、軍刀を抜いた相沢中佐が部屋に入り込んできた。兵士五人は直ぐに三八式歩兵銃と十四年式拳銃を構えて相沢中佐と対峙した。


 流石の相沢中佐も永田少将を暗殺出来ないと判断したのか、軍刀を鞘に入れて降伏した。


 これにより永田少将の暗殺は一応ながら免れたのであった。そしてこれ以後は統制派が力を増すようになるのである。


「これで君が未来から来た日本人だと分かった。今まで無視に近い対応をしていて済まなかった」


 東條中将と杉山中将は将宏に頭を下げた。対する将宏は何も気にしてなかった。


「いえいえ、見知らぬ人間がいきなり未来から来たと言えば疑うのも当然です。それに永田少将暗殺を防げたのも良かったです」


「そうかね、それならいいんだが……」


「これからは協力しよう」


 杉山中将はそう言い、東條中将も頷いた。これにより将宏は東條中将、杉山中将、永田少将の三人の協力者を得た。


「おいハンス。ヤーパンの工場はかなり欧州よりかは低いな」


 とある工場でドイツから招致されたドイツ人技術者達が話していた。


「それは仕方ないだろうグルリ。ヤーパンは独立国家だからと言って百年くらい前までは腰にカタナを付けたブシがいたんだ。そう簡単に工業は発展しないさ」


「そりゃあそうだけどよ。いくらなんでも機械を磨り減るまで使ってるとは思わなくてな。スラブ人を破ったヤーパンがこんなのだとは知らなかったぜ」


「だからヤーパンは工業力を痛感しているから俺達を招致したんだろ? なにせヤーパンの戦車の装甲はかなり薄いからな」


「その分速度は速いな」


「ヤーパンは満州を占領しているだろ? 満州は地図で見ると広大だから装甲を薄くして速度を速めて機動作戦を重視したんだろう」


「成る程な。というより何でお前がそれを知っているんだ?」


「知り合いにヤーパン陸軍の士官と友人でな。情報源はそいつだ」


「……ヤーパンも大変なんだな」


「そのために俺達が此処に来たんだ。ヤーパンの戦車を最強にしてやろうぜ」


「それもそうだな」


 ドイツ人技術者達はそう言って再び仕事を始めるのであった。


「お、味噌汁美味しいですよ霞さん」


「ふふ、そうか。それと敬語じゃなくていい」


 将宏はたまたま前田少尉に用事があったので前田家を訪ねていた。そして霞から昼飯を御馳走になっていた。


「ところで河内さんはちゃんとご飯を食べているのですか?」


「将宏でええですよ。今のところは水交社で御世話になってますね」


 将宏はそう答えた。


「……それならうちで下宿でもするか(その方が連絡も取りやすいだろう)」


「(それもそうですね)」


「そうか……(なら作る楽しみも増えるな)」


 三者はそのように考えていた。そのように将宏の引っ越しはあっという間に決まった。


「ほぅ、前田少尉の家に下宿するのか」


「はい、陸軍との連絡もしやすくなりますし」


「……本当は前田少尉の妹を狙ってるのではないか?」


 伏見宮がニヤニヤと将宏に聞いてきた。将宏は慌てて弁解する。


「いやいや違いますよ。何でそうなるんですか。別に自分は……」


「ハッハッハ。そう聞いた事にしておく」


 伏見宮は笑うのであった。


 そしてそれから将宏が来てから一年の時が流れて1936年二月二十六日。


「今ッ!! この日本が苦しんでいるのは君側の奸がいるからであり、陛下の言葉を自分達の都合の良いように変えているからであるッ!!」


「今こそ我々が昭和維新を決行する時であるッ!! 攻撃目標は首相官邸、陸軍省、警視庁であるッ!!」


「全員進めェッ!!」


 その日の東京は雪であり、雪が降り積もる中、昭和維新を決行しようと皇道派の青年将校達が近衛歩兵第三連隊 、歩兵第一連隊 、歩兵第三連隊、野戦重砲兵第七連隊を率いて攻撃目標まで進軍した。


 しかし、攻撃目標では既に迎撃態勢が整えられていた。


「首相官邸に海軍陸戦隊と第二八連隊が待機していますッ!! 更に八九式中戦車隊もいますッ!!」


「同じく陸軍省、警視庁にも部隊を展開していますッ!!」


「く、くそ……待ち伏せされていたか……」


 首相官邸を包囲しようとしていた青年将校達はそれが出来ない事に悔しがっていた。その時、首相官邸から一人、馬に乗った人物が出てきた。


「へ、陛下……」


 それはまさしく今上天皇であった。


「武器を捨てよッ!! 貴様らがする行為は日本を破滅に導くものだッ!!」


 陛下の叫びが反乱部隊に響き渡る。陛下の言葉に動揺する兵士も続出した。


「朕に逆らえばどうなるか分かっているのかッ!! 親や子が泣くぞッ!!」


 陛下の言葉に兵士達は武器を地面に置いた。


「き、貴様ら何を……」


「反乱軍の首謀者を捕らえよッ!!」


 陛下の命令に兵士達は青年将校達を取り囲んで即座に捕縛した。


「へ、陛下ッ!! な、何故このような仕打ちを……」


「貴様らがする事が分からんのかァッ!! 朕が信頼する臣下を殺してどうするのだッ!!」


『………』


 陛下の激怒に青年将校達は何も言わなくなった。


「貴様達がした行為は国家の転覆だ。直ちに軍法会議に処するッ!!」


 陛下の言葉に青年将校達は項垂れた。これにより二・二六事件は未遂で終わるのであった。


「兵士達は無実だ。兵士達は首謀者に言われるまま動いたに過ぎない」


 陛下の言葉に兵士達は頭を下げるのであった。


 この二・二六事件で、皇道派の勢いは無くなり統制派が皇道派の将校を予備役にしたりして皇道派は消滅するのであった。なお、青年将校に大きな影響を与えた北一輝は史実通りに青年将校達と共に処刑されるのであった。












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