第八十七話
――ウラル山脈要塞――
「ヴァァァカ者がァァァッ!!」
ウラル山脈要塞の書記長室にスターリンの怒号が響いていた。
「誰が日本に喧嘩を売れと言ったッ!!」
「は、報告では大使が情報を入手した海軍の尉官を粛清として射殺未遂を起こしたため……」
「その報告は聞いておる。駐日大使は解任せよッ!! そのままシベリアに送るのだッ!!」
「ダーッ!!」
部下が慌ただしく書記長室を出るとスターリンは深い溜め息を吐いた。
「……今はヤポンスキーと争っている場合じゃない。何故それを分からんのだッ!!」
スターリンはそう言ってウォッカをコップに注いで飲み干した。
「……兎に角ヤポンスキーとは内密に処理しておこう」
スターリンはそう判断してモロトフを日本に派遣した。モロトフは日本側と交渉して今回の件は無かった事にしてもらいたいと交渉。
対する日本側も大使館へ侵入した軍人の二人のソ連側の裁判を無しにしてもらえば全て無かった事にすると言って交渉は直ぐに終了した。
ソ連側はソ連大使を交代、情報を入手した海軍軍人は日本側に引き渡す事になった。日本側は軍部に指示を徹底する事を約束して入手した情報は返還してもらえた。
後にこれを聞いたドイツのヒトラーはこれを材料にシベリア侵攻を働きかければよかったと悔しがり、「畜生めェッ!!」と怒ったらしい。
結局、この事件は闇に葬られて表に出てきたのはソ連が崩壊する90年代であった。
さて、謹慎となった将宏であるが……彼は命令通りに前田少佐と共に自宅にいた。
「河内少佐、今回のはどうするんですか?」
「今回のは鬼が登場する話だ」
将宏は二階の部屋で同人誌を描く画家や漫画家達を集めて更新を停止していた同人誌の続きを執筆する事にしていたのだ。
まぁ謹慎なので山本達もとやかく言うつもりは無かった。むしろ早く続きが読みたかった(下士官や一般兵の強い要望もあった)ので執筆は許可された。
「そう言えば最近、幻想郷の人物を描いた零戦や九七式中戦車改が増えているらしいですよ」
「……むっちゃ浸透してんなおい……」
そのうち、世界にも進出しそうな勢いである。それは兎も角、謹慎した三ヶ月で更新が停止した永〇異変は終了して新連載として萃〇想――通称宴会異変に突入した。
この新連載に、陸海軍は発狂して半日程機能が停止した程である。
また、士気は向上してウラジオストクから爆撃に来た爆撃隊を追い返した程である。
「……萌えは日本を救いそうだな」
「ですよねー」
俺は宴会異変の次の悪霊異変(魅〇様達旧作の復讐異変)を構想しながらそう呟いた。
――ベルリン、総統官邸――
「……ウラル山脈要塞はまだ落ちぬと?」
「ヤー。ソ連軍はシベリア方面から戦力を補給しています」
「……日本にシベリア侵攻を働きかける事は出来ないかね?」
「難しいでしょう。彼等は太平洋で精一杯です。それに我々は北アフリカで日本に借りを作っています」
ヒトラーの問いにカイテル元帥はそう説明する。
「……予定を早めて中東に攻めこむのも手だが……」
「それは無茶です総統。東部戦線から兵力を引き抜けばソ連は盛り返します」
「判っている。それと、部隊に冬期装備の用意をさせろ。流石に前回のような事はするな」
東部戦線が勃発後、ヒトラーは冬期装備を用意させていたがソ連の線路の幅は公軌であり、パニックになった事がある。(ドイツは標準軌)
ヒトラーは前回の反省を繰り返さないよう早めに冬期装備品を部隊に届ける事にしたのだ。
なお、今回は成功したみたいである。
「……それと、ウラル山脈とシベリアに繋がる鉄道を爆撃して補給を途絶させる必要があるな。ゲーリングッ!!」
「ヤーッ!!」
「貴官の航空艦隊は派遣出来るかね?」
「は、只今ドイツ国内には第八、第九、第十の三個航空艦隊が編成途中であります。編成が完了するのはまだ時間が掛かります」
「……難しいな……」
「総統、ルーマニアやハンガリー等の同盟国に武器を提供して戦力にするのはどうでしょうか? 彼等の武器はソ連軍には歯が立ちませんので我々がてこ入れをする必要があると思います」
「うむ……そうした方が無難かもしれないな」
ヒトラーはそう判断してルーマニアやハンガリー等の同盟国に四号戦車や三突などが一個装甲師団分も提供する事が決定した。
この提供には同盟国は驚き、そして喜んだ。今までドイツからは中古品等を押し付けられていたが、最新の武器が来たのだ。
勿論、訓練期間は必要なため投入するのはまだであるが無いよりマシである。
また、空軍を総動員してシベリア鉄道を双発爆撃機が長距離爆撃を敢行してシベリア方面からの兵力の移送をストップさせた。
「くそッ!! 何て事だ。兵力の移送をしなければならないというのに……」
鉄道が爆撃された聞いたスターリンは頭を抱えていた。シベリア方面からの兵力を移送出来ればウラル山脈の攻防戦は勝てると踏んでいたが、移送出来ないとなれば死守するのが難しくなってくる。
「……最悪の場合は……」
スターリンはそう言って地図のノヴォシビルスクを見た。
スターリンが頼みとしていた兵力はノヴォシビルスクで足止めを食らっていた。ウラル山脈要塞の兵力をノヴォシビルスクまで後退させて合流するのも一つの手ではあるが、あまり望ましくない。
そんな事をすればジューコフやベリヤ達が反論し出す。
「どうすればいい……何か策は無いのか策ァッ!!」
スターリンの怒号が部屋の外まで聞こえ、それを扉の前で聞いた者達がいた。
「………もはや同志スターリンは駄目なようだな」
男はフルシチョフ軍事会議委員である。
「問題は何時するかだ」
フルシチョフに同調するようにラヴレンチー・ベリヤが呟く。
「私としては今直ぐにでも投獄をしたい。これ以上、ソ連人民を無駄に死なせたくはない」
フルシチョフはベリヤにそう言う。
「大粛清を決行した私が言うのもなんだが、確かにな」
「ならば………」
「なるべく急がなければならないが、事は慎重にしなければならない」
「だが、早くしないとドイツ軍が……」
「判っている。だが、スターリンに感づかれたら此方は終わりだ」
ベリヤの言葉にフルシチョフは黙った。スターリンに逆らえば、待っているのは死のみである。
「……判った、決行は君に任せる。ドイツとの交渉は此方がやる」
「ダー」
そしてスターリンの知らぬところでクーデターが計画されたのである。
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